追放と伝説
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X:@NarouGlossary
アレンは、追放された。
その日、王都を覆う灰色の空の下、彼は名門の家門からたった一人、汚れた馬車に乗せられて追い出された。背後からは、父の冷たい声が響く。「お前のような落ちこぼれに、我が家の血は流れていない。二度とその姿を見せるな。」
代々続く錬金術師の家系、その中でも特に優秀な血筋に生まれたアレンは、幼い頃から周囲の期待を一心に背負っていた。しかし、彼が創り出すのは、いつも失敗作ばかりだった。魔力は暴走し、薬液は濁り、完成したポーションは決まって悪臭を放つ。やがて、彼は「失敗の申し子」と呼ばれ、家族から疎まれる存在となっていた。
そして、ついにその日は来た。王国の第一王女、リリアが彼の創り出した秘薬の失敗作に激怒し、彼の追放を決定したのだ。リリアは、かつてはアレンの才能を信じていた数少ない人物だった。その彼女にまで見放されたアレンは、絶望の淵に立たされていた。
馬車に揺られ、たどり着いたのは王都から遠く離れた田舎町。誰も彼を知らないこの場所で、アレンはただただ日々をやり過ごすつもりだった。しかし、ある日、彼は町の図書館の片隅で、古びた一冊の文献を見つける。それは、何百年も前に失われたとされた、伝説の錬金術師が残した記録だった。
埃をかぶった表紙を開くと、そこには常識を覆すような錬金術の理論が記されていた。そして、最終ページには、不老不死のポーションを創り出すための、完璧な配合が図とともに描かれていた。その文献に記された理論は、これまで彼が学んできたものとは全く異なる、斬新なものだった。
「これなら……これなら、俺にもできるかもしれない」
アレンは、再び希望の光を見出した。彼はその文献を唯一の財産として、追放されたこの地で、静かに研究を再開した。
