脳休み
グラニテでもどうぞ
——目をあけると、そこは別世界だった。
目の前には、まるで物語やおとぎ話の世界そのものの光景。
巨大なシャンデリア、豪華な装飾、磨き抜かれた大理石の床。
そして、正面には——。
「だ……誰なの……」
ミオは困惑するように呟いた。
見るからに威厳たっぷりの老王が玉座に鎮座し、その隣には美しい王女。周囲には屈強な騎士たちが並ぶ。
そして、隣には——。
「え、やばくない? これマジの異世界召喚じゃん!」
「ってか、お前ら、普通に転生とか信じてんの?」
「現実逃避しないとやってらんねーよ、浅野はもうちょい状況飲み込めよ」
会話を交わしているのは、同じ制服を着た三人。
浅野真司。
理屈っぽくて、こういう非現実的なことをなかなか受け入れないタイプ。
宮田莉奈。
ノリが良くて、なんか楽しんでる。
藤崎美月。
冷静だけど、静かにテンション上がってるっぽい。
そんな三人を見て、ミオは心の中で溜息をついた。
(え、ちょっと待って、これ夢? これが夢?!)
周囲を見渡しても、自分だけ雰囲気が違う。制服でもないし、見た目も明らかに彼らと異なる。
「……おい、なんか混じってね?」
真司が怪訝そうにミオを見た。
「え、なにこの子。服装、やたら古臭くない?」
「ていうか、このパターン……俗に言う『巻き込まれたやつ』じゃね?」
「異世界召喚ガチャSSR……?」
「なんか、わけわかんないけど失礼じゃん!?」
ミオは思わずツッコミを入れたが、事態はどんどん進んでいく。
「異世界からの勇者よ!」
王様の威厳ある声が広間に響く。
「我が国は今、魔王の脅威にさらされている。どうか、この国を救ってはいただけぬか!」
「え、待って、それって俺たち戦えってこと?」
「おいおい、やばくね?」
「異世界転生して速攻で命の危機ってどういうこと」
騒ぐ三人を余所に、騎士団長が進み出た。
「では、勇者殿の力を試してみましょう」
輝く剣が差し出される。
「この剣に触れれば、勇者の力が目覚めるはず!」
「え、マジ? じゃあ試してみるか……」
真司が恐る恐る剣を握る。
パァァァァァ……ッ!!
剣が青白い光を放ち、彼の手に炎が灯る。
「え、燃えてる!? けど熱くねぇ!」
「すご! じゃ、私も!」
莉奈が剣を握ると、風が巻き起こる。
「わ、魔法じゃん! 私、めっちゃ風系得意そう!」
美月もそっと剣に触れると、水の波紋が広がった。
「……すごい」
三人は見事に勇者としての力を得た。
しかし——。
(え、私もやるの?)
ミオは不安を抱えながら剣に手を伸ばした。
……何も起こらない。
「……あれ?」
騎士団長が困惑した顔をする。
「まさか、そなたには神の加護がない……?」
「あー、えっと……」
(そりゃそうでしょ! なんか私だけ異質だし!!)
つまり——。
ミオは「勇者」ではなく、ただの巻き込まれ枠だった。
「そなたは……何者なのだ?」
王様が鋭い視線を向ける。
「いや、私もびっくりしてるんですけど……」
「えっ、じゃあお前だけ魔法なし? それってヤバくない?」
「ハズレ枠じゃん……」
「おい、言い方」
ミオが文句を言う間もなく、王女が口を開く。
「……もしかして、彼女は『鍵』なのでは?」
「鍵?」
場が静まりかえる。
「異世界の勇者たちの中には、戦う者と導く者がいると聞いたことがあります。彼女が力を持たないのなら、何か別の役割があるのでは……?」
「えー、嫌な予感しかしない」
ミオは小さく呟いた。
「では、彼女の役割を確かめるため、一度試験を行うべきかと」
騎士団長が提案し、王様は頷く。
「それは良い考えだ。魔王軍の偵察に同行してもらおう」
「いや、普通に危険なやつ!!?」
こうして、ミオは異世界転生勇者ものに巻き込まれたまま、色んな試験に放り込まれ、魔王を討伐することになったのだった——。
end




