第6話
―― Lazarus side
エルスティンは無人探査機を周回軌道に乗せた。
イムルイルと命名したダイソン球殻天体は、今までのものと様子が違っている。
地殻の外側に、小惑星帯があるということだ。
軌道半径は、火星のそれとほぼ同じだが、まんべんなく散らばっているため、イムルイルを球状に覆っているようにも見える。
『現状でわかったのは、ここまで』
「ふむん。大ざっぱな地図まで作ってくれたのか」
『外側だけよ。内側はこれから』
「んっ? こいつは赤道の近くにも穴があったのか」
『これだけの小惑星があるんだから、いくつか落ちてきても不思議は無いでしょう?』
「それもそうだ… ありえない話じゃないな」
小惑星とはいえ、大きなものは数百メートルはある。
地殻の厚さを考えれば、貫通しても不思議ではないな。
あとは、内側にコンテナや破片が漂流していたというが……
そっちは後からゆっくり調べるとするか。
『他のダイソン球殻天体はこうやって建造した…… というところかしら』
「多分そうだろう。厳密に軌道を計算して落とせば、砕く手間も省ける」
球殻の内側の工事も、似たような方法だと思うし。
「あの小惑星が全部、地殻の材料だとして…… 地殻の厚さは50メートルくらいになるか?」
『正確に計算してみる?』
「いや、いい。どうせ残りの材料は輸送中だろうし」
実際のところ、かなりの凸凹があるので、正確なことは言えないそうだが、この星の地殻は平均60メートルくらいだそうだ。
これなら特殊合金で作られた骨組みを覆い隠す程度だ。
それに、今までに調査した7個の完成品は、厚さ100メートルのあたりで、ニュートロニウム製の板で隙間なく包み込んであり、それを岩石で覆っていたもの。
『地層としては、まだ第3層を作っている最中よね?』
「このあとで骨組みを1層、そしてニュートロニウムだからな……」
『厚みが足りないわね、材料はどこから運んでくるのかしら』
周辺の空域を調べれば、近づいてくる小惑星が見つかるに違いない。
それを追いかけてみるのも面白いかな。
「内側を調べ終わったら…… 材料がどこから来たのか調べてみようか」
『そうと決まれば、ちゃっちゃと済ませちゃいましょうか』
「……と、いうわけで、今日の夕食はハン『カレーにしましょう』」
「なんでカレー?」
『しばらく作ってなかったし。それに、好きでしょ? ポークカレー』
久しぶりの洋食なら、ハンバーグが食べたかったんだが……
……本当にこれでいいのでしょうか。
なんか自信がなくなってきました……