第3話
―― Astesia side
私はミームアリフ星系で建造される最後の航宙艦……
そう感じ始めたのは、船殻の組み立てが半分くらい終わった頃からだ。
その頃から、私を取り巻く環境は急に変わったように思う。
急な設計変更や、工程削除などだ。
建造途中の航宙艦から取り外された砲塔や弾薬が取り付けられる。
別の造船所からは、装甲版や核燃料が運び込まれてきた。
全て、計画表にはない工程だ。
それは私の姉妹達を建造するために、別の造船所にあった資材だった。
その目的は、ただ1隻の航宙艦… 私が宇宙に飛び立つための突貫工事だと気が付いたのは、しばらく経ってからの事だった。
自動修復装置が動き始める頃には、エネルギー・ステーションの組み立ても終わり、人間の居住区は、広大な倉庫区画へと変貌を遂げていた。
それから、2ヵ月後。
昼夜兼行の突貫工事の結果、直径5キロメートルの船殻に取り付けられたエネルギー・ステーションとエンジンが運転を始めた。
予備の制御システムを含め、人間が必要としている必要最低限の設備も。
倉庫区画は、膨大な量の資材と工作機械で一杯になった。
そして……
私は、私の意志だけで宇宙を飛び回ることが出来るようになっていた。
「アステーシア」
『はい、工廠司令』
「出航を命じる。座標は……」
それは、待ちに待った出撃命令だった。
私は兵器として建造された。
コンディションは完全とはいえないが、役割を果たすことが出来るのだ。
その結果、破壊されるかもしれない。
私はそれでもよかった。
だが、司令の命令は私の予想を超えていた。
「これは最優先命令だ。決して死ぬな。……何があっても生き延びてくれ」
『何故…… 戦闘に参加してはいけないのですか?』
「お前は俺達全員にとって子供みたいなもんだ。だからな…… 俺達よりも先に死んで欲しくないんだよ」
「それに、お前は表向きはエスポーサ級だが、中身は全くの別物だ…… お前は俺達が作り上げた最高の宇宙船なんだ」と、副司令が後を引き継いだ。
それは矛盾だと思います。
設計図どおりに完成した私は…… 人類史上最強の戦闘ユニットになる筈です。
戦争のために生み出された私が、戦争を避けよ、とは。