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第2話

―― Erstein side


「この目で見るまでは、信じらなかったが……」

 司令室の中心に投影された天体は、あきらかに人工的なものだった。

 その両極は巨大な穴が開いている。

 それを前に、唖然とした顔をしているのがラザルス。

 このイーグル11という名の宇宙船にいる… ただひとりの人間だ。


『9番目ですね。登録名はイムルイルでよろしいですか?』

「ま、いいだろう。で?」

『今のところ、こんな感じかな』


 私は先行したロボット探査機が集めてきたデータの分析結果を表示した。

 直径16光分あまり――地球の公転軌道とほぼ同じ大きさ――の球体だ。

 中心にあるのは母なる太陽と似通ったG型の恒星だった。


「エルスティン…… 今日の日付は?」

『3月8日です… 多分』

「……だよな?」

『何を期待してたんですか?』

「もう4月に入ったかと思ってね」

『その若さで健忘症ですか? 健忘症なんですね? じゃあ、脳トレを始めましょう』


 せっかく真面目に相手をしてあげていると言うのに、何をボケてるのよ!

 まあ、ラザルスは人間だから仕方が無いかも。

 薄々感付いている人もいると思うけど、その通り。

 私は人間じゃない。

 イーグル11に搭載された人工知能だ。

 私に与えられた基本命令は、一言で言えば人間の安全、だ。


 だから。


 何も無かったから次に行きましょ、って言いたかった。

 あまりにも危険な予感がするから。


「ちょっと待て、エルスティン! とりあえずは目の前にあるアレだ!」


 画像解析を進めてみる。

 両極に開いた穴のふちがぎざぎざになっているのは、未完成ということ。

 完成していれば、直径10キロメートルの円形で、両極周辺は宇宙港などの設備が集中する工業区画となっているはずだから。

 覗き込んだ限りでは、整地さえも終わっていないみたい。


「ダイソン球殻天体を量産できる種族、か……」

『人類にとっては、まさに見果てぬ夢ですね』


 ダイソン球殻天体とは、元化35年にヨーロッパ連合王国の天文学者フリードリヒ・ダイソン教授が提唱したメガ・ストラクチャーだ。


 太陽系内に浮かぶ全てのものを材料として、太陽をすっぽりと覆う巨大な球殻を造り、その内側の全てを生存環境に利用しようというものだ。

 これならば太陽系は500億もの人口を支える事が出来ると言われていたが、実現可能なプランとは思えない。


 オールド・タイマーは、それをいくつも作っている。

 まだ見つかっていないものも含めて、いくつ作ったのか想像もできない。

 地球では、夢物語と言われていたのにね。




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