第21話
―― Astesia side
反応剤の残りは、あと10時間分になった。
修理は遅々として進まない。
残念ながら、構造が複雑なメインの反応炉の修理には時間がかかりそうだ。
反応炉とはいうけれど、実際には高次空間からエネルギーを取り出すための装置だ。
同時進行で修理中の、反物質反応炉の方は…… もうすぐ修理が終わる。
投棄しなかったコンテナは…… 全部投棄してしまった。
燃料がない……
随伴していた巡洋戦艦が一隻でも残っていれば、反応炉を移植するなり、エネルギー回路を共有するなどの方法もあったけど……
ここに来るまでの間に全滅している。
その時、私はあることに気が付いた。
反物質反応炉というのは、対消滅反応からエネルギーを取り出す装置なのだ。
貯蔵庫は投棄せざるを得なかったが、同じ反物質なら……
艦内のどこかに隠されている自爆装置には「反」鉄が組み込まれている。
そうだ、まだ探していない区画が残っていたのかも。
設計情報も全て見直してみたが、それらしいものは見つからない。
艦内で白兵戦が展開されたときの用心か、集中攻撃されないようにするためだと思う。
とにかく、反物質保管庫のあった区画には…… なにもない。
搭載艦ドックは…
推進システムの中、重力制御装置、集中防御区画……
だめ、見つからない!
一体、どこにあるというの!?
人間が乗り組んでいれば、このあたりは何の問題もなかったのだろうけれど、私のような無人宇宙船の場合は、事情が変わってくる。
こんな状況は誰も考えていなかったに違いない。
何があっても、自爆装置を無力化しなくては。
それは出航するときに受けた『決して死ぬな』という命令のためではない。
私は悔しいのだ。
ここで自爆すれば何のために工廠惑星を出航したのだろう。
人間から名前をもらった人工知性体は、私しかいなかった。
彼らは、どんな想いで、そして、何を望んでいたのだろう。
ひたすら待機していた120年は一体、何だったんだろう。
一度も人間に使われることもなく、自爆して果てるのは嫌だ。
そんなのは・イ・ヤ・ダ。
ワ・タ・シ・ハ・シ・ニ・タ・ク・ナ・イ・!