第16話
―― Astesia side
今までの情報を分析した結果、球形宇宙船は連邦軍のものではないようだ。
だからと言って、神聖人類帝国のものでもない。
地球人を祖先に持つ、第3の勢力と考えるべきだろう。
私は、しばらく様子を見ることにした。
彼らも、ある程度は私の正体に気が付いたかもしれない。
100時間近い時間があれば、回収したポッドの分析も終わっている頃だろう。
自爆装置が作動する最後の瞬間まで、生き残る努力をしよう。
そうでなければ、フォーザンメ造船所で私を組み立ててくれた人たちに申し訳が立たない。
私に残された時間は、あと200時間あまり。
反物質反応炉は、あと150時間もあれば修理が終わる見込みだ。
何とか間に合いそうだ。
そういえば、第3勢力はどのような立場にあるのだろう。
太陽系を巣立った人類は、ゆっくりと銀河系に広がっていった。
人類が月に足跡を印してから800年が過ぎ……
その版図は、太陽系を中心に、半径3000光年にまで広がった。
無数の殖民惑星は、神聖人類帝国とシリウス連邦というふたつの陣営に組み込まれていった。
ふたつの陣営の目的は…… 中空の惑星。
厚さ80メートルの地殻の中には、マントルもコアも何もない。
直径1万5千キロメートルのピンポン玉のような――球殻天体だ。
そしてその内側には、1Gの重力がある。
建造されたのは、放射性炭素の分析から、5万年前と推定されている。
古代文明の遺産を巡る外交交渉は、宗教的な思想や政治体制の違いなどの絡みから、いつしか全面戦争へと発展した。
開戦から数年で、殖民惑星の大半は無人の荒野と化し、宇宙基地の大半も破壊された。
そして、ミームアリフ星系も戦場になって…… 私は、ここに疎開した。
いつも陽気に笑っていたフェルナンド主任。ちょっと陰気なアントニオ技師長。
休憩時間になると、いつも話しかけてくれたエーミィやユーミィとマルシア。
名前も知らない大勢の工廠職員達。
そして、工廠司令。
彼らは、あの戦闘を生き延びたでしょうか。
天寿を全うする事が出来たでしょうか。
彼らの魂に安らぎがありますように……
定時アップ出来ずにすみません。
アップ前に、いきなり全面改稿に近い作業をする羽目になりました。
ちょっとした手違いで、元データが消滅したのが原因です。
多分、今日中にはデータ復元できると思います。