第10話
設定資料だけでは、ちょっとアレですので… ちょっとがんばってみました。
―― Astesia side
『……ポッド3よりマザーへ。星系外縁から3光時の空間に艦籍不明の航宙艦が出現。時空震の規模はマグニチュード3.3……』
フォーザンメ造船所を出航してから120年。
ラーアリフに接近する初めての航宙艦だが、艦籍不明というのが気になる。
もしもミームアリフ星系からのものであれば、取り決めたコードを送信してくるはず。
『ポッド12よりマザーへ。航宙艦の進行方向に重力異常が発生…… 進路変更を確認』
ポッドからは、次々に情報が入ってくる。
位置情報をプロットしてみると、方向転換や減速が実に滑らかだ。
乗組員も高度な訓練を受けているのだろう。
あとはやはり、新型…… というところかな。
と、いう事は、私も時代遅れの旧式という事になるわけだ。
戦闘を一回も体験したことが無いのに、艦体の半分が吹き飛んだままだし。
という事は、私は廃艦処分になるかも……
ばらばらに解体されるのかな。
それだけは嫌だ。
『ポッド6よりマザーへ……』
マイナス思考は、とりあえず置いておくとして、次々と入ってくる報告をまとめながら状況を整理する事にした。
未知の航宙艦は私の知らない形式のものだった。
外見を見る限りでは帝国のどころか、連邦軍のものでもない。
現れた航宙艦は、直径200メートルの球形だ。
それは、推進方法が重力制御のみならば極めて合理的な設計だと思う。
ポッドとの通信を終えると、修理の進行状態をチェックしてみた。
このままでは非常用の化学発電システムの反応剤は、あと300時間ほどで使い切ってしまう。
安全機構が、右舷側の反物質貯蔵庫も投棄していたのだ。
私に衝突するはずだった小惑星を道連れにしたのが救いと言えば、救いだけど、反物質燃料のストックは1グラムも残っていない。
『ポッド128よりマザーへ……』
ポッドからの続報だ。
球形艦は、惑星に近づくと、地殻の外側を周回する軌道に乗ったようだ。
スピードは光速の5パーセントだが、実に滑らかに動いている。。
南極点から北極点を結ぶ軌道だから、一周するのに2時間くらいだろう。
ようやく味方がこの空域の支配権を獲得したのだ。
そうでなければ、護衛も無しに足の遅い補給船を派遣してくる筈がない。
すぐに補給を受けることが出来るはず……
とりあえずは、そう思っておこう。