第9話
―― Astesia side
こんな状況なんだから、もっとやる気を出しなさいよ!
荷物を持ってきたロボットをラザルスにぶつけたのはご愛嬌ってものだからねっ。
「って、これか。どれどれ…… 蛇口っぽいな、これ」
『基本的な分析は済ませてあるからね』
ロボット探査機が回収してきたコンテナの中身は水道用の蛇口だった。
コンテナ自体も、アルミニウムかジュラルミンで出来ている。
「製造されたのは…最近と言ってもいいな。成分は…… 蛇口は青銅か。コンテナの方はアルミニウム… いや、これならジュラルミンかな?」
謎はそれだけではなかった。
それは… 規格だ。
コンテナの寸法やちょうつがいなどの部品の取り付け位置、ネジの切り方までもが、地球のものに酷似しているのだ。
『明らかに… 人間サイズの何かが使うためのものですね』
「地球製だと言っても良いくらいだな。オールド・タイマーのものは例外なくメタルプラスチック製だった。こいつらは… 明らかに違う」
生活に密着するモノについては、あまり技術革新の影響を受けないものだけど。
シンプルすぎて、規格の変更なんか必要ない。
それ以前に、普及しすぎているから、変更しても、数が多すぎて取り換えが間に合わない、というか、無理、と。
「この手のものはな、世界中どこでも同じ規格で作られていたんだよ。ロシア製の水道管をアメリカ製の部品でつなぎ、日本製の蛇口を取り付ける事だってできる」
『うそでしょう!?』
「倉庫の中にも転がっているが?」
『う、製造履歴までは見てなかった……』
「はっはっは、エルスティンはうっかりさんだなぁ」
『ほほほほほ ……地球に帰るまでの献立は、納豆定食だけで良いと?』
「ごめんなさい。もっと色々食べたいです」
『……で?』
水道管の規格についてはわかったけど、だから何なのよ。
「さっき宇宙船らしきもの、って言ってたよな?」
『たしかに言ったけど……』
何をニヤニヤしてるのよ!
コーヒーが欲しいって? はい、ネスカでいいでしょ。
面倒だから、あとは自分でやってね。
それより、早く教えなさいよ!
「それな、地球人もしくは、その末裔が… 建造したものかも知れない」
『そう考える根拠はなぁに?』
「コンテナに使われてるボルトやナットの材質と寸法かな」
『それも国際規格?』
「そう。ミリメートルサイズで、材質はクロームモリブデン鋼だ」
他の物についても、結果は同じだった。
それは私が地球から積んできたモノと…… 同じもの。