20-アオイちゃんの物語 3 <ケヤキフォン>
今朝もあおいちゃんは自宅の庭のケヤキに声をかけていた。ケヤキさんが答える。
『伝言が一件あります。』
なんか、留守番電話みたいだなぁ?
「誰から?」
『おばあちゃんからです。「明日の朝6時にあなたがケヤキさんと呼んでいるこの木のところでお話をしましょう」って。』
「おはなし?」
『そう。あおいちゃんが私の幹に触れて、同時におばあちゃんが狭間の世界の私の分身に触れていると、あおいちゃんとおばあちゃんの間でお話しできるの。』
「うっそ〜ぉ? ほんと〜ぉ?」
『ほんと、ほんとうょ。明日試してみてね。』
♫ ♫ ♫ ♫ ♫
翌朝、あおいちゃんはケヤキさんの幹に手を触れて話してみた。
「もしもし? おばあちゃん?」
『あ〜あおい?聞こえるよ。元気かい?』
「あ! 本当におばあちゃんだ! おばあちゃん。私は元気!」
『そう。 それは良かった。ケヤキフォンの回線はちゃんとつながったようだね。これからこうやってあおいとお話しできるわ。』
「ねえ、おばあちゃん。このケヤキフォン?って私以外の人にも使えるの?」
『それがねぇ。狭間の世界に来たことのある人しか使えないみたいなの。』
「それは残念ね。おかあさんとか…おばあちゃんや、亡くなった家族とお話ししたい人はたくさんいると思うけど…」
『かといって、死んだ人とお話しするために死にかけるのは本末転倒だわ。』
「そうよね。」
『まあ、ケヤキフォンのことは秘密にしておいた方が良いようね。 それにね、亡くなった人がみんな、この狭間の世界にいる訳ではないのよ。』
「それどういうこと?」
『狭間の世界にいた人もやがて「上がって」また現世で生まれるの。でもね、ほとんどの人はその時に記憶を失って、『新しい人』として生まれるの。』
「じゃあ…じゃあ、おばあちゃんもいつかは上がって生まれ変わるの?」
『そうね。いつかはね。』
「私は嫌! おばあちゃんとお話しできなくなるのは嫌よ!」
『現世に心残りがあるうちは、上がれないって、クーボさんが言っていたわ。だから子供がまだ小さいとか、奥さんを待っている人は、なかなか上がらないみたいよ?』
「クーボさんって? あの時の白ヒゲのおじいちゃん? いったい誰? あの人は何なの? 神様?」
『え〜とね。私も良くわからないけど、昔からいる人ょ。科学者だって。もう150年以上もこっちの世界、つまり狭間の世界に留まっているそうょ?』
「何でクーボ先生は上がらないの?」
『クーボ先生はね、科学者でね、自分の理論が正しいかどうか、それを知るまでは死んでも死に切れないから、ここから現世を観察しているんだって。』
「理論? 何の理論?」
『気象関係だそうよ。地球温暖化の原因だそうよ。』
あおいちゃんは、顔に『あれっ?』という表情と疑問符を浮かべた。
「地球温暖化? それって二酸化炭素の問題じゃぁないの? 教科書にも二酸化炭素が原因だって書いてあるわ。」
『それがね。クーボ先生が言うには、二酸化炭素が増えたから地球が温暖化したのか、それとも地球が温暖化したから二酸化炭素が増えたのか、どっちかよくわからないんだって。』
「教科書が正しくないの? みんな、二酸化炭素が地球温暖化の原因だと言ってるのにね。」
『クーボ先生が言うには「真実は多数決で決まるものではない」そうよ。皆がそう言うからそれが正しい、というワケではないそうよ。』
「ふ〜ん?」
おばあちゃんとお話ししていたら、お母さんが「朝ご飯よ〜」って呼びに来た。
「おばあちゃん。もう朝ご飯みたい。明日の朝もおしゃべりできるかな?」
『そうね。明日の朝もお話しましょ。明日はクーボ先生とお話ししてみるかぃ? 面白い人だし、あおいの勉強になるかもね。』
「うん、わかった。またね。」
『また明日の朝ね。』




