20-アオイちゃんの物語 2 <落雷>
雨が降り出した直後、あおいちゃんには、校庭の立ち木やフェンス際の雑草の喜びの声が聞こえた。
『助かった、雨だ、久々の雨だ。』
『もう枯れてしまうかと思った。』
あおいちゃんはその声を聞き、微笑んだ。
しかし、しばらくして、グランドの脇のクスノキから、
『ムズムズする。梢の電位が高まっている。 雷が来る! 私に落雷する! 危ない! 私の下から逃げて!』
という悲鳴が聞こえた。
そのクスノキの下にはまだ3人の低学年の生徒が雨宿りをしている。
「先生、雷が来ます! グランド脇のクスノキに雷が落ちます! クスノキの下にまだ残っている子がいます。避難させなくちゃ!」
突然、立ち上がったあおいちゃんの叫びに、国語の先生はちょっとビックリしてから、窓に近づきクスノキの方を眺めた。
「本当だねえ。まあ、もっと雨がひどくなったら、こっちへ来るだろう。」
と、先生はまだのんびりとしている。あおいちゃんは焦ってさらに大きな声で叫んだ。
「先生! そんなにのんびりしている場合じゃないです! 雷が落ちます!」
「そうかなあ?」
先生は窓から外に向かって大きな声で怒鳴った。
「お〜い! 木の下は雷が落ちたら危ない。 校舎へ避難しなさ〜い。」
その声を聞いて、クスノキの下で雨宿りしていた3人が校舎へ駆け出した。
その瞬間クスノキさんの悲鳴が聞こえた。
「しゃがんで!」
窓から校庭へあおいちゃんが大声で叫ぶ。
その直後、特大の稲光と大きな爆発音?破裂音?がグランドに響いた。あちこちの教室から悲鳴が聞こえる。クスノキさんに雷が落ちた。メリメリという音とともに大きな枝が折れ落ちた。
♫ ♫ ♫ ♫ ♫
幸いにけが人は出なかった。3人は落雷に驚いて腰を抜かして座り込んでいた。でもやけどはなかった。驚いて、泣き出していた。
木の幹の近くにいれば、そこからの誘導雷で、命を落とすこともある。木から少し離れた所でしゃがめば、木が避雷針になる。そして、木の幹を伝わる雷=誘導雷を避けられる。おおよそ木の梢から45°の角度で地面に接する辺りに、木の幹を中心とする狭いドーナッツ状の雷のセーフティ・ゾーンが存在する。彼らは、運良くそこでしゃがみ込み、雷の直撃を避け、誘導雷も避けられた。ただし、雷の轟音によるショック、雷の歩幅電位によるわずかな感電の影響を受けた。もちろん致命傷ではなく、後遺症も残らないだろう。本当に運がよかった。しゃがみ込むタイミングも良かった。
しばらくして、救急車と消防車がグランドにやってきた。消防士さんが、落雷したクスノキの焦げた枝を確認し、3人のうちの腰を抜かした子をストレッチャーに乗せ、念のため救急車で近くの病院へ運んだ。
この騒ぎで午後の授業は中止になった。夕立の激しい雨が小振りになったところで、生徒は全員帰宅していった。
この一件で『あおいちゃんの天気予報』への信頼はさらに高まった。それと同時に,エルフの女王様説も広まった。
♫ ♫ ♫ ♫ ♫
翌日の朝、1時間目のはじまる前、あおいちゃんはクスノキさんの前に立ち、樹に語りかけていた。
「ありがとう。みんなを雷から守ってくれて。折れた枝は大丈夫?」
『ダイジョバナイけど,,,なんとか大丈夫よ。あおいちゃんこそ大声で怒鳴ってくれてありがとう。子供が怪我をしなくて本当に良かったわ。』
「クスノキさんは、この小学校の守り神みたいなものだから…長生きしてね。」
『うん。でも、落雷で幹の芯と皮が少し焦げちゃったわ。将来、ウロになるかもね。幹が内側から腐らないと良いけど…。それに大枝が折れちゃって、バランスが悪くなっちゃったわ。逆側の大枝を切り落としてもらわないと、樹のバランスが崩れて倒れちゃうかもしれないわ。』
「わかったわ。先生に伝えておく。」
『よろしくね♡』
朝の朝礼のあと、あおいちゃんは自分の意見として、クスノキさんの伝言を先生に伝えた。




