19-ケヤキさんの物語(第3部プロローグに代えて) 2 <『マリアの予言2』>
「おはよ〜♪ アオイちゃん!」
「おはよ〜♪ ユカリちゃん!今日も元気ねぇ。」
「それより、聞いた? ネットで『マリアの予言2』が出たんだって。」
「『マリアの予言2』? え〜なにそれ? マンガの新刊?」
「ちがうちがう! ネットで評判の大地震の予言だって、お兄ちゃんが言ってた。」
「予言って… ユカリちゃん、あなた、そんなの信じてるの?」
「う〜ん、半信半疑かな? でもね、アオイちゃん。私らが産まれたころの『マリアの予言』は当たったそうよ。」
「当たったの? 本当かなあ?」
「うちのお兄ちゃんは信じているみたい。 あ〜学校 お休みにならないかなぁ。」
「そんなの、予言で休校になる訳無いでしょ? なんかおバカなこと言っているわねぇ。」
「でも、昨日の夕方のニュースでは『防災特集』をやってたわよ。タイミング良すぎない? ほら、あの『ちらほら山田さん』がキャスターをしてたわ。」
「あのお笑いキャスター? 『ちらほら』じゃ無くて『ちゃらんぽらん』でしょ? …噛んでた?」
「噛んでた!噛んでた! もう噛みまくり!」
「あの人がキャスターだと、危機感がなくて、なおさら地震の噂も信じられないわね。」
「まあ…そうね。 でも、番組の中で市役所も消防も備えているって言ってた。」
「ニュースで『マリアの予言』の話しが出てたの?」
「ん〜、出てなかった。」
「なら偶然よ…きっと。たまたまその『防災特集』と予言が重なったのよ。」
「そうかなあ?」
「きっとそうょ。ユカリちゃんは気にし過ぎ。」
「でも、最近、小さな地震も多いし、少し心配ね。」
「まあ、そうね。」
♫ ♫ ♫ ♫ ♫
「ただいま〜」
「おかえり。今日は早かったわね。」
「うん。部活動が中止になっちゃった。」
「あら? 何かあったの?」
「何も無いけど、校庭にブルドーザーやらシャベルカーなんかが駐車してあって、グランドが使えなかったの。」
「ふ〜ん? 何かしらね?」
「わからないわ。 でも男の子達が興奮していた。」
「男の子はねえ…働く車が好きだからねえ。」
「ブルドーザーの周りには縄が張ってあって「近づいちゃダメ!」って先生に言われているのに、…乗ろうとして何人も叱られてた…」
「あら、まあ。」
「あとねぇ、道徳の授業が潰れて『防災の時間』になってた。 ハザードマップ?の話しとか避難先の確認をしなさいって。」
「や〜ねぇ え〜と?うちの避難先は坂の下の小学校ね。地震や洪水の時は小学校へ逃げ込むのよ。ハザードマップはあとでお父さんに確認してもらいましょ。」
「は〜い。 ねえ、非常食のハンバーグは買って来てくれた?」
「うん。ハンバーグは買えたけど。パックご飯と缶詰は売り切れてたわ。」
「へ〜っ?」
「昨日の夕方のニュースの防災特集を見た人が買ってったみたい。明日土曜日にお父さんとホームセンターで水を買っておかなきゃね。」
「お母さん、私、外で遊んでくる。」
「気をつけてね。夕飯までに帰ってくるのよ。」
「は〜い!」
♫ ♫ ♫ ♫ ♫
土曜日にホームセンターに水を買いにいった。水の販売は『1家族1箱まで』に制限されていた。トイレットペーパーやティッシュ、キッチンタオルもほとんど残っていなかった。お父さんは紙コップと紙のお皿と、金属製のスコップを買った。何かの役に立つかもしれないって。「余ったらキャンプかピクニックへ行こう」って。
スーパーにも行ってみた。やはり2Lのミネラルウォーターは売り切れていた。2 Lのスポーツドリンクを6本買った。オレンジジュースは…売れ残っていたけど買ってもらえなかった。ク〜残念。あと、500mLのペットボトルのミネラルウォーターを8本買った。割高だけど仕方が無いよね。缶詰コーナーの棚はガラガラだった。その他にお母さんの書いたメモの夕飯の食材を購入した。レジはすごく混んでいた。




