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狭間の世界にて  作者: リオン/片桐リシン
18-ブドリ君の物語 再び (第2部エピローグに代えて). 全4話
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18-ブドリ君の物語 再び (第2部エピローグに代えて) 3

 「…トいうわけで、西のカラス達は確かに異変を感じているそうです。でもその正体がわからないそうです。さらに被災範囲が広いのか、カラス達も右往左往しています。」

真知子の西日本の現地調査報告は要領を得ないものであった。

 「今までの地震の前触れとは違うけど、確かに地面から嫌な感じがしました。経験したことのない嫌な感じです。」

ハルキ君も要領を得ない。はて、どうしたもんか?

 「カー太ンはどう思う?」

 『ケケケクウ〜ゥ カ〜ァ? (専門家に相談したら?)』

 「なるほど。それも見識だな。 そうしたら、ハルキ君、例の賢人会議に相談できそうな人がいないかな?」

 「クーボ先生でしょうね。たしかあの人は昔、イーハトーブ火山局の名誉リサーチフェローをしていたそうですから。」

 「それじゃ、面倒だけど、今夜にでも狭間の世界に行って来てくれないか?」

 「はい! パパ!」

 「それ、やめ〜や!」


 ♫ ♫ ♫ ♫ ♫ 


 同じ水田本家の増築された離れの寝室のベッドで、ハルキ君と真知子さんはいちゃついていた。

 「また、私を置いてきぼり? さみしいなぁ」

 「まあ、真知子ちゃん、これもお仕事のうちだから。我慢してね。 チュッ」

 「キスくらいではごまかされないわよ?」

 「おやすみ。 グ〜」

 「あ〜ぁ! すぐに寝ちゃった。 もう置いてきぼりにして。 イタズラしちゃうぞ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 「トいうことで、クーボ先生。相談に来ました。」

 「何が『トいうこと』か、要領を得ないが…。西日本の地殻異常じゃな? わしもそれほどの専門家じゃないが、賢人会議のメンバーのペンネン氏なら地殻変動、特に火山の専門家じゃ。」

 「初めまして、ペンネンです。ところでブドリさんのご先祖はイーハトーブのご出身ではないですか?」

 「はい、私は婿養子なのですが、武鳥は私の妻の名字です。たしかクーボ先生にもご縁があるとか、義父が申しておりました。」

 「そうか、ブドリ技師の親戚筋か何かの方だったかのぅ? 」

 「良くわかりません。」

このままでは昔話に花が咲くどころか、延々時間を取られそうだ。議題変更動議だ。

 「ところで、ペンネンさんは今回の西日本の地殻変動?をどのようにお思いですか?」

 「火山の噴火ではないかと見ています。」

 「火山の噴火? 桜島とか浅間山とかがポッと吹き出すやつですか?」

 「そのような小規模噴火なら良いのだけど。もしかしたら『山体崩壊』を起こすレベルの巨大噴火? もしかしたら『破局噴火』かもしれません。」

 「巨大噴火ですか?」

 「そうかもしれません。私が昔経験したサンムトリ火山の巨大噴火の兆候に似ているように思います。」

 「そんな火山の巨大噴火は初耳です。」

 「あの時は、巨大噴火の起こる前に小噴火を誘発させて、破局的な巨大噴火を回避したんですよ。」


 「なるほど。では今日はこの辺で失礼しますね。」

 「あ〜、そのハルキ君。」

 「何ですか?」

 「いや。その君の顔じゃが…。」

 「ジャガって、ジャガイモ顔は自覚しています。」

 「そうじゃなくって、そのぅ…」

 「急ぎでなければ、これで失礼します。」


 「あ〜、帰ってしもうた。」

 「帰ってしまいましたねえ。」

 「ペンネンさん。あれは…ビジュアル系とかいうものかのぅ?」

 「さあ。でも、ここから見ていてもあんな派手なリボンをつけたりおかしな化粧をしている男性は見かけませんが?」

 「時代かのぅ?」

 「時代でしょうか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 「トいうことで、お義父さん。火山の巨大噴火が近づいているのではないかと、賢人会議のペンネン氏がおっしゃってました。」

僕は朝飛び起きると、顔も洗わずに直ぐにお義父さんに報告した。

 「う…うん。 なにが『トいうこと』かはよくわからないが、まあ、ハルキ君落ち着きたまえ。それからシリアスな報告にその化粧は似合わない。まず頭のその派手なピンクのリボンを外して、…顔を洗ってそのパンクロックなお化粧を落としておいで?」

 「リボン? パンクロック?」


 「だってさぁ、あなたすぐに寝ちゃうんだもん。面白くないから、寝ているあなたにお化粧して美しくしてあげたの。」

う〜ん。真知子ちゃんたら本当にお茶目さん。

 「真知子ちゃん。君のお茶目さんは好ましいと思っているけど、今は自重してね?」

 「は〜い♪」


 ♫ ♫ ♫ ♫ ♫ 


 それから10分後に仕切り直し、報告を行った。

 「と、言うことです。」

 「だいたいわかった。でも、あと10年以上の、時間はあるんだよね。」

 「直ぐに噴くなら、そんなに大規模にはならないだろうって。でも、100年後1000年後の場合は巨大噴火になる可能性が高いって、ペンネンさんは言ってました。」

 「被害規模は?」

 「大阪や名古屋が火山灰に埋もれてポンペイになるような破局噴火もありえるって…。」

 「それは十分に『マリアの予言』クラスだな….。まだ時間があるのが不幸中の幸いだな。


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