15-ハルキ君の物語 <告白> 2
「と、いうことで、真知子ちゃんのお父さん。ご相談があります。」
「なにが『と。いうことで』かは良くわからんけども、結婚はまだ許さないよ。真知子は嫁にやらん。 7歳児が何を言ってるの?」
「いえ、その件ではありあせん。それに結婚する時は僕が婿入りします。」
「アラ♡」
僕の横で真知子ちゃんが赤くなった頬に手を添え、伏せ目がちにうっとりとしている。その表情は君のお父さんのブドリ君の怒りを増すだけだし、はなしがぐだぐだになるから、後で二人だけの時にしてほしい。
この場には真知子ちゃんの他に、ブドリ君と、トレードマークの変な帽子をかぶったブドリ君の祖父のミヤサワ君が座っている(らしい)。そして、なぜかカー太ンも濡れ縁で陪席している。
「僕、山田ハルキはそこにいる(僕には見えていない)ミヤサワ君の父母、彼が『おやじ』と呼ぶお義父さんの曾祖父の生まれ変わりです。ちなみに真知子さんは『おふくろ』こと曾祖母の生まれ変わり、前世は私の伴侶でした。だから将来的に私たちが結ばれるのは、前世からの因縁、定めです。」
突然の僕の爆弾発言、告白に対して、ブドリ君は凍り付い(フリーズし)た。
しばらくして解凍したブドリ君はミヤサワ君に問うた。
「それ、本当?」
幽体のミヤサワ君は、コクコクと首肯した(らしい)。あ、ブドリ君がまたフリーズした。僕の横に座る真知子がニコニコしながら、その様子を僕に解説してくれる。
「真知子ちゃん? お義父さん(ブドリ君)には言ってなかったの?」
「うん。 結婚式の時にサプラ〜イズしようと思ってたの。」
「僕は君のそんなお茶目なところが大好きだよ♡」
いちゃいちゃしていたら、ブドリ君が再々起動した。
「お義父さんって呼ぶな〜! まだ早い。 え〜と。ところで今日は何の目的で我々を招集したのかな? 結婚を認めさせるためかな? 婚約したいとでも言うのかな? それはまだ早い。今はまだ許さんぞ〜。」
かなりトーンダウンしている。このまま押せば婚約なら認めさせることができそうだが、本日の主題は、それじゃない。
「もっとまじめな話しです。いや、結婚もまじめな話しですが… もう一つ告白します。僕はミヤサワ君と同じように『狭間の世界』との間を行き来できます。」
♫ ♫ ♫ ♫ ♫
「…そうか、クーボ先生とそんな話しをしていたのか。」
ブドリ君は現世の霊魂を見ることはできるが、『狭間の世界』にアーちゃんとして居たころの記憶は失っている。クーボ先生に関してはミヤサワ君から聞いていたらしい。
「それで、近々大災厄が襲ってきそうなのだね?」
「まだいつかはわかりません。でもその時はその被害を細小にするために、社会的信用の厚いお義父さんに『マリアの予言』を発していただきたいのです。そのために知恵をお貸しいただきたいのです。」
あ、『マリアの予言』というキーワードで僕の現世の母、『ちゃらんぽらん山田』が下宿している離れからシュタタタタと飛んできた。さすが端くれとは言えジャーナリストだな。地獄耳をお持ちのようだ。でも、この話し合いには邪魔だ。速やかにご退席頂きたい。
「なに? なに? 今、『マリアの予言』って聞こえたような気がしたけど。 あ、ブドリ君おはようございます。ハルキも真知子ちゃんもおはよう。」
『カ〜』
「あ、カー太ンもおはようございます。」
さて、どうやって退席していただこうか。まず、とぼけてみる。
「ねえおかあさん。『マリア』って何?」
「えっと、その話しをしていたんじゃないの?」
「今の話題は僕と真知子ちゃんの結婚、マリアージュの話しだよ。」
「な〜んだ。いつものやつね。 …な〜んだ、がっかり。 『まあ、リア充』の二人だしね。」
「おかあさん。その駄洒落は苦しいよ….。 ところで、おかあさんは再婚しないの?」
「結婚はもうこりごりよ。 え〜と、お話のお邪魔になっているようだから、失礼しますね。 オホホホホ」
母山田は矛先が自分にむいたと察知し、スススススッと退席した。さすがに『機を見て敏』だな。逃げ足が速いとも言う。
「え〜と『邪魔者は追っ払い』(Odd man out!)ました。」
「ハルキ君はおかあさんを扱う…あしらうのが上手だね。」
「ええ、長い付き合いですから。それに、こういうのは亀の甲より年の功ですから。」
「見た目が児童の君とこのようなお話をしていると、認識が混乱するなあ。」




