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狭間の世界にて  作者: リオン/片桐リシン
14-真知子ちゃんの物語 全6話
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14-真知子ちゃんの物語 <2人目不妊>

 真知子が産まれて2年経ち、もうひとり子供が欲しいと思うようになった。することはしているけど、なかなかできない。体力的にも精神的にも経済的にも満ち足りている。私たちはまだ20代の健康な若夫婦だ。だから環境的には全く問題ない。ハルキ君と一緒にいればいつもご機嫌な真知子は精神的な負担を掛けてこない。真子おばあちゃん夫妻からの援助もあり、経済的にも問題ない。


 昨年、いま住んでいる水田本家の隣の土地が売りに出されたので、真子おばあちゃん夫妻のお金でそれを購入し、コンクリート作りの要塞のような『新水田本家』が作られた。私たちも、そちらに居を移した。旧水田本家は離れとして残してある。真子おバーちゃん達はどんな金持ちなんだ?

 「会社員だった頃の持ち株会で購入した株がずいぶんあるのよ? あの頃は給料の使い道が無かったから、大分そちらに突っ込んだしね。それを一部分売って新しいお家を建てれちゃった。あなた達のスペースも大きくとったから、子供を何人産んでも大丈夫よ♡」

と真子ちゃんはいう。聞けば配当だけでブドリ君のE-EDOからの給料の数倍は収入があるらしい。

 「でも不労所得はねえ、税金が高くて。しかも年金がほとんどもらえなくて。だから今でもE-EDOの非常勤で働かしてもらってるの。」

なんとまあ、うらやましいことで。おばあちゃんには逆らわないようにしよう。


 それとなくプレッシャーをかけられたので、なんで二人目ができないのかな。とブドリ君と話していたら、

 「最近、仕事で強磁場装置を使った実験をしているからかなあ?」

との返事だった。 学生時代に教授先生が「芳香族化合物を使っていると、女の子が産まれやすくなる。」と、言っていたことを思い出した。でも、化学物質なら何となく納得できるけど、磁場でも同じことが起きるの?

 「前に参加した電子スピン共鳴(ESR)討論会の懇親会で、ある先生が酔っぱらってアンケートをとったんだ。そしたら偶然かどうか知らないけど子供の男女比が1:8だったよ。同じ結果が核磁気共鳴(NMR)討論会でもあったそうだよ。」

 「それはτ(タウ)検定で評価してみたいわね。」

 「母集団をとれないから、検定は無理だよ。」

 「でも、ほんとうかしら?」

 「さあ? でも睾丸キンタマに磁場をあてると、女の子が産まれやすくなるという話しはよく聞くね。」

 「真子ちゃん姉弟は下二人が男だったわよね。」

 「おじいちゃんが若くて現役で実験にNMRを使っていた頃は真子ちゃんで、その後大学で研究指導になってから、叔父さん達は産まれたみたいだよ。」

 「ふ〜ん。でもなんで磁場をあてると女の子かしら?」

 「う〜ん。きっと男の子は精子の頃から弱いんだよ。」

 「じゃあ、二人目不妊の原因はブドリ君の仕事の都合ということよね? お願いだから、その話しを真子ちゃんや宮澤の父に伝えてくれる? 最近、「二人目はまだか?」とプレッシャーがうざいのよねぇ。」

 「いやだよ。そんなこと。僕の口から言えないよ。」

 「私もそんな話しを言うのはいやよ。特にお父さんには言えないわ。」

 「どうしたもんかねえ?」

 「どうしたもんかしら。」


 ブドリ君はこの話しをミヤサワ君経由で狭間の世界の賢人会議に問いあわせたが、結論は出なかった。「がんばれ、励め、爆発しろ!」だそうだ。


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