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狭間の世界にて  作者: リオン/片桐リシン
13—美知子さんの物語 全5話
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13-美知子さんの物語 1 <ブドリ君との腐れ縁> 

 私、宮澤美知子はブドリ君の同級生で親戚だ。親戚と言っても又従姉弟で、比較的遠い親戚だ。私のおじいちゃんの弟が彼のおじいちゃんだ。彼のおじいちゃんは水田家に婿養子に行ったが、水田家では『ミヤサワ君』と実家の名字で呼ばれていたそうな。哀れな。『米糠三合持ったら婿養子に行くな』とは昔の人の言葉だ。でも、ミヤサワ君と水田の大叔母様が大恋愛で、二人は生涯仲が良かったとのことだ。でもって、ミヤサワ君の娘の真子おばさんが武鳥家に嫁いで、ブドリ君が生まれた。

 そんな血縁で、宮澤家と水田家と部鳥家の間には交流がある。しかも、ブドリ君のお家も私のお家も比較的ご近所だ。私とブドリ君は同学年で、小学校の登校班も同じだった。小学校の頃は私の方が身長も高く、私が姉ポジションだった。しかし、中学校で背丈を追い抜かされ、高校生になると、私が彼の付属物のように扱われるようになった。解せぬ。


 ブドリ君には大きな声で言えない秘密がある。彼は現世をさまよう『幽霊』?『霊魂』?『死者の魂』?が見え、その声を聞くことができるそうだ。それは、彼が彼の家の裏の坂にあるお地蔵様を小さな頃から熱心にお参りしていたご利益なのだろうか? ちょっと嬉しくないご利益だなあ、と思う。 その特殊能力で、昔の水害の行方不明者の遺体を見つけたこともある。その時は私も巻き込まれてしまい、小学生の頃は『ラン姉ちゃん』というあだ名を頂いた。嬉しくないぞ! そして、中学生にあってからもイロイロな事件に巻き込まれ、彼とまとめて『死神夫妻』とか『血まみれ夫婦』というありがたくないあだ名をもらっている。


 私の父の話しによると、彼のおじいちゃんの『ミヤサワ君』も異常に勘がよく、少し言動のおかしな人だったそうだ。高校生の頃『虫の知らせ』で放火のボヤを消し止めたそうだ。その放火被害を免れたのが水田さん家で、そのご縁でそこの娘さんと結婚し、水田家の婿養子になったとか…。そして、『ミヤサワ君』=『ブドリ君のおじいちゃん』もブドリ君と同様にジャガイモだったそうだ。

 裏を取るのは大事なことだ。私の父に聞いたその話しをブドリ君のお母さんの真子さんに確認したところ、

 「ああ。まあ…そうね...微妙に間違っているけど…そんなこともあった…ような…そうね。」

と微妙に歯切れが悪く、困ったような顔をして答えていた。でも、なんで懐かしそうな顔をしているの? ブドリ君のおじいちゃんが高校生の頃、どう考えてもおばさんはまだ生まれていなかったでしょ?


 ♫ ♫ ♫ ♫ ♫ 


 小学校4年生の頃、カラスの母親の幽霊の導きで、ブドリ君は子カラスを拾い、保護して育てていた。その子カラスは『カー太ン』と名付けられ、ブドリ君の相棒として、今日も彼の肩の上にいる。頭の良いよくしつけられたカラスであるが、私に対しては心安く…気安く…慣れ慣れしく、よく私のことを揶揄ってくる。 ブドリ君とカラス達は、しばしば行方不明者を発見したり、警察の遺体捜索に協力したりしていた。そして、なぜか私もよく巻き込まれた…。迷惑な! そのおかげでブドリ君は警察の方に知り合いが多く、『オカルト枠』で信用され頼りにされている。


 ブドリ君の高校生の頃の『マリアの予言』は大地震に関係したネットでも有名になった予言だ。そして、私たちが発信した予言だ。内緒だけどこれは大地震の震源地付近に住んでいたカラス達が、わが町に避難して来てカー太ン経由でブドリ君と私の知るところになった。ブドリ君家のカー太ンのところに仁義を切ってきた避難カラス達から、その大地震の予知情報はもたらされた。カラスの保護と同時に、まずは警察、消防などの行政組織を中心に、そしてSNSを通してこの『マリアの予言』は半信半疑ながら巷に広がった。

 残念ながら『マリアの予言』は大地震による建物倒壊や津波による直接的な人命被害を防げなかった。一方で、災害関連死などの二次被害を防いだ。この『マリアの予言』は、行政組織で知る人ぞ知る高校生の予言者の信憑性を高めた。そして8年後の直下型地震前には『マリアの予言2』が出され、発災後は大学院生になったブドリ君とカー太ンと彼らの率いるカラスの集団が、行方不明者や、遺体の捜索に協力した。


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