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狭間の世界にて  作者: リオン/片桐リシン
第2部 ブドリ君の物語 09-ブドリ君の物語(第2部プロローグに代えて) 全2話
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09-ブドリ君の物語(第2部プロローグに代えて) <ブドリ君は変なやつ>

第2部です。

主人公はミヤサワ君かあ、孫のブドリ君と相棒のカラスに移ります。


 ブドリ君は変なやつだ。おかしい。何がおかしいってはっきり言えないけど、ことばの端々がおかしい、行動が変だ、雰囲気が怪しい。 ⁂故に変なやつだ。何か世間からずれている。


 ブドリ君はカラスとよくつるんでいる。カラスを肩に乗せていることもある。小声でカラスと話しているように見える。何かをお願いしている? 頼んでいる? 命令している? ように見える。カラスはブドリ君と話すとき、コクコクと頷いたり、小首をかしげたりしている。ことばが通じているのか? ブドリ君はティマーなのか? カラスを使い魔にしているのか? あれは本当にカラスなのか? 疑問は尽きない。そして、何でカラスなんだ? カラスは頭が良いと聞くが不気味だ。やめてほしい。


 困ったことにブドリ君は私の親戚だ。私の祖父の弟が、ブドリ君の祖父だ。ブドリ君の祖父は宮澤家から水田家に婿入りした。その娘がブドリ君のお父さんと結婚してブドリ君が生まれた。だから、私とブドリ君は血のつながった又従姉弟になる。ブドリ君家の表札はにぎやかだ。水田、宮澤、武鳥と三つの名字が並んでいる。お家は水田家の本家だそうだ。ブドリ君のおじいちゃんは婿入り後も水田家で『ミヤサワ君』と呼ばれていたらしい。ブドリ君のお母さんの弟達は水田の名字だが、仕事の都合で遠くに住んでいるそうだ。だから、ブドリ君家に住んでいるのはみな武鳥さんだ。でも、お家は水田本家だそうだ。う〜ん、ややこしい。でも、ブドリ君の従兄弟の水田家のお兄ちゃん達は皆まともだ。うん。とってもまともな常識人だ。唯一ブドリ君だけ、その言動が怪しい。何かずれている。なんで唯一の同じ学年の親戚が変人のブドリ君なのだ? 


 私の家、宮澤家の近所にブドリ君家がある。小学校低学年の頃は同じ通学班だった。同じ学年だけど、私の方がお姉さん、ブドリ君が弟ポジションだった。

 ブドリ君家から中学校へ登る坂道にお地蔵様の祠がある。このお地蔵様はブドリ君家のおばさん姉弟達がブドリ君の祖父祖母を偲んだものだそうだ。石造りの可愛いお地蔵様だ。でも、洋装だ。向かって左のお地蔵様は緑のとんがり帽子をかぶり、右のお地蔵様はピンクのショールを肩にかけている。普通、お地蔵様は赤のよだれかけを付けているものだと思う。他人の家のお地蔵様にあれこれ言うベキではないかもしれないけど、なんだかな?と思う。やっぱりブドリ君の一族は何か不思議だ。

 そして、ブドリ君は毎朝このお地蔵様にお参りしている。いや、お参りしているというより語りかけて、毎日の報告をし、時々は相談をしているように見える。当たり前のように祠の掃除もしている。信心深いのか? 失礼だが、あんなふざけたお地蔵様なのに? でも、普通のお参りとは違う雰囲気で、 …やはり変だ、不気味だ。

 ブドリ君の独り言はお地蔵様だけでなく、カラスに対してであったり、時々は歩きながらぶつぶつと『何かに』語りかけている。まだ小学生のくせに中二病か? 本当に何か目に見えない者が居るんだろうか…フリだよね? フリだと言ってくれ!


 ブドリ君のあだ名は『死神君』だ。だから、カラスと仲良くするのはやめなさい! でも、この不名誉なあだ名はカラスと仲良しだからだけではない。

 ブドリ君は趣味で石を拾い集めている。奇石や貴石や化石だけではなく、ただの石ころにしか見えない石も拾い集めている。そのため、彼はいつも小さなスコップとビニール袋、ハンマーやたがね、それとピンセットを小さなリュックサックに入れて、山や河原や野原をうろついている。彼は以前、川の土手で人骨を拾った。それはかつてこの地方で起きた洪水の犠牲者、行方不明者の人のお骨であることがDNA鑑定で明らかになった。どうしてその小さな茶色い石が人の骨であるとブドリ君にはなぜわかったの? 

 その他にも、鳥や小動物の遺体を見つけると、彼はスコップで穴を掘り埋葬し、合掌する。『禁じられている遊び』ごっこかっ! おまえはミッシェルかっ? それは心やさしい行為である。でも、小学校の同級生にはその行為が不気味に見える。そのため、彼は陰で死神君と呼ばれてしまうようになった。



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