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狭間の世界にて  作者: リオン/片桐リシン
04-理恵子さんの物語 全8話
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04-理恵子さんの物語 <結婚>

 結婚は大きなイベントだ。イロイロ決めなければならない。

 僕は水田家に婿入りすることになった。おふくろは『息子を盗られた』とぶつぶつ言っている。水田母は『2人も息子がいるんだから、ひとりくらいくれたって良いじゃない』と流している。でも、僕が婿養子になることは、おふくろと水田母の間のじゃんけん1本勝負で決まったことを、僕は知っている。まあ、理恵子さんと結婚できれば、名字はなんだって良いんだけどね。それに水田の両親と同居する予定は、今のところないし。


 『若いうちは金がない。年を取ると暇がない。』とは、誰の言葉だったっけ? 愛だけでは結婚できない。結婚にはお金がかかる。その資金をためるために、結婚式は、プロポーズの1年後の3月に行うこととした。1年で結婚資金をためることができるのだろうか?…結局、二人で結婚資金を300万円貯めた。がんばった。でも、これで足りるだろうか?


 ♫ ♫ ♫ ♫ ♫ 


 結婚式場紹介所で近所の小さな神社で結婚式をあげた場合の見積もりを取った。バブルの余波か400万円と提示された。無理だ。結婚式だけではなく、友人へのお披露目会、新居の家具や生活雑貨類、それに新婚旅行にも行きたい。300万では全然足りない。困った。理恵子さんの花嫁ドリームを何としてもかなえたい。

 そう言えば、下宿のおばさんがあの近所の有名な神社の氏子だった。僕もその神社へ時々お参りに行った。そこで結婚式をあげているのを見かけたときに、

 「あの神社で結婚式をあげるのは、金銭的に大変でしょうねえ。」

と僕が何気なくおばさんにいうと、

 「そうでもないわよ? あそこは寄付とお賽銭と駐車場で十分稼いでいるから、結婚式ではがつがつもうけようとしないのよ」

とのことであった。参集殿で披露宴をすれば、結婚式そのものは安くあげられるとのことだった。初詣のお賽銭だけで運営できる有名どころの大きな神社の方が、むしろ結婚式を安く済ませられるそうだ。


 そこで、僕は地元の大きな神社、日本一のお山をご神体とする神社に直接見積もりをお願いした。神前式は本殿での巫女さんが赤白装束での舞い付きなら3万円、派手な絢爛豪華な装束での舞付きなら5万円だと言われた。聞いてみるもんだ。それに貸衣装、参集殿でケイタリングを利用して親族と大学の恩師だけの小さな披露宴的な会食を行っても100万円もしない。よし、何か目処が立った。見積もりで一番高くつくのは、理恵子さんの白無垢の貸衣装だ。僕の貸衣装代は彼女の二十分の一だった。アハハハ。最終的には親戚からのご祝儀・お祝いで費用の7割ぐらいを回収できた。


 友人へのお披露目会はビジネスホテルの会議室を借りて、やはりケイタリングの食事と飲み物、花も花屋で買って来て持ち込むことにした。大学の友人が面白がって準備や手配を手伝ってくれた。ビジネスホテル側も会議や講習会に使う部屋で結婚披露パーティを行うという提案を面白がり、持ち込み料金をただにするなど協力してくれた。でもこれって学会の懇親会みたいだな。いっそのこと会費制の立食パーティにした。やっぱりお金がかかるのは理恵子さんのドレスと、僕の礼服だ。理恵子さんはユザ○ヤでレースを買って来て、自分でドレスを作ってしまった。理恵子さんすご〜い。僕のセミオーダーの礼服と同じくらいのコストでウエディングドレスは出来上がった。

 お披露目会を学会の開催日の夕方にしたところ、飲みに行くつもりだった学会に参加していた友人達や後輩達や知り合いが、学会会場でこのお披露目会の話しを聞きつけ、連れ立って飛び込みで合流した。参加者が当初の予定、80名の2倍以上…3倍近くににふくれあがった。「ケイタリングの追加注文や酒屋への追加注文が忙しかった」と会を運営してくれた友人にはぼやかれたが、お披露目会は会費と友人達からのご祝儀でなんと黒字になった。びっくりした。

 結局、会社の借り上げアパートの家具や内装、生活道具、それに新婚旅行に250万円程度使えることになった。嬉しい誤算だ。


次章は二人が本当の夫婦になるまでの試練の物語になります。

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