表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狭間の世界にて  作者: リオン/片桐リシン
03-真理子さんの物語 全6話
15/92

03-真理子さんの物語 <見られるということ>

 「ヤッホー! また来たよ。」

 ご機嫌な声で狭間の世界の知り合いに声を掛ける。

 しかし、声を掛けられた真理子さんは、なぜか引いている。

 「真理子さん、どうしたの?」

 と手を伸ばすと、真理子さんは後ずさり、立ち上がって僕から距離を取る。

 「嫌っ! 近寄らないで。」

 彼女の方に手を伸ばすと、身をよじって拒否される。真理子さんの理不尽な振る舞いに僕は動揺する。

 「? ど…どうしたの?」

 「触らないで。妊娠しちゃう。」

 僕はそのキーワードで状況を察した。


 ♫ ♫ ♫ ♫ ♫ 


 「あ…ア...アレはね、男の生理現象なんだ。」

 ここのところ出していなかったから、昨夜、パンツの中をべたべたにして目をさましてしまった。


 「近寄らないで。…不潔だわ!」

 どうしろって言うんだ。自分で夢をコントロールできるわけじゃない。

 「そんなこと言ったって…。それよりも、見ぃたぁなぁ!」

 僕は真理子さんを修羅の顔でにらみ返していた。


 「仕方が無いでしょ! ここにいると、見えちゃうのよ。」

 真理子さんは逆切れて、怒鳴り返して来た。

 「僕のプライベートはどうなるの? もうお婿に行けない。 シクシク」

 「乙女にあんなもん見せつけて! 私ももうお嫁に行けないわ。」

 「死んでいるんだから、お嫁に行けないのは当たり前でしょ。まだ生きている僕の方が事態は深刻ょぉ!」

 なぜかおネエ言葉になる。


 ギャイのギャイの言い争っていたら、クーボのおっさんが乱入して来た。

 「わちゃわちゃとにぎやかじゃのぉ。仲が良いのぉ。痴話喧嘩かのぉ?」

 「「痴話喧嘩じゃない!!」」

 二人の声がそろった。


 僕は真っ赤な顔で泣きそうな顔で、真理子さんの非道を訴えた。

 真理子さんは真っ赤な顔でうつむきながら、ちらちらと見下すような横目で嫌そうに、不潔なものを見るように僕を見ている。


 「それは真理子さんの方がいかんなぁ。ことプライバシーに関してはここの住人の方が絶対強者じゃからなぁ。」

 「そんなこと言ったって、クーボ先生もミヤサワ君のことを観察しているじゃないですか。」

 「ふたりに見られているなんて…僕にはプライバシーが無いのですか。」

 「だって、見えちゃうんだもの。仕方ないでしょ。…それに暇だし、見ちゃうのよ。」

 あ! クーボのおっさんは目をそらした。

 「じゃあ、これまで黙って、トイレや風呂も覗いていたの? 酷い!」

 「覗いていたなんて、人聞きの悪い。トイレや風呂は必要なことだから何とも思わないし、言わなかったけど。たとえ生理現象だとしてもアレはドン引きよ。」

 「ひどい。ひどいゎぁ。もう風呂にも入れないし、トイレにも行けない。どうすれば良いのよぉ!」

 僕はまた、おネエ言葉になる


 クーボ先生は苦笑し、しばし考えてから、提案をしてきた。

 「ここは紳士協定が必要じゃのぉ。」

 「「紳士協定?」」

 また真理子さんと僕の声がそろった。

 「うむ。紳士協定じゃ。何か合図を決めて、それから1時間、真理子さんはミヤサワ君のことを覗かないという約束じゃ。」

 「だって、見ちゃうんだもん。」

 真理子さんがかわいく口を尖らせて抗弁する。

 「ホッホッホ。ミヤサワ君は愛されているのぉ。」

 「愛されていない!」「愛していない!」

 今度は声がそろわなかった。


 「真理子さんはその間、自分の家族を眺めていれば良かろう? お父さんやお母さんや妹さんだったかのぉ。もっと肉親のことも気にかけてあげなくちゃ、ご家族の人たちが、泣くぞぃ?」

 そうだそうだと僕は思ったが、それを口に出すとまた話しあいが紛糾する。気遣いのできる僕は黙っていた。

 僕たちはクーボ先生の仲介で紳士協定を結んだ。もちろんクーボ先生もこの紳士協定の対象者のひとりだ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ