03-真理子さんの物語 <彼女の心残り>
短めです。
僕は狭間の世界の花畑の上で正座をさせられていた。
「それはミヤサワ君が悪いのぅ。」
真理子さんはクーボ先生を味方につけて、両のこぶしを目に当てながらシクシク泣いたフリをしている。その頭の上に大きな猫…いや虎をかぶっている様が幻視される。
「..ヒック…あんなことするなんて…ヒック…あんまりよ。乙女の秘密を…ヒック。」
「ミヤサワ君。女の子を泣かしてはいかんのぅ。謝っておきなさい。…ミヤサワ君が何をしでかしたか詳細は知らんが…。さあ、後は二人で話し合って…わだかまりを残してはいかんぞ。とりあえず、まずはミヤサワ君は謝るんじゃぞ。」
そういってクーボ先生は、少し面倒くさそうに我々から距離を取った。この件に深入りするのは危険と察知したようだ。カンの良いじいさんは嫌いだよ。
丘の向こうにクーボ先生の姿が見えなくなったところで、自称乙女は豹変した。
「さあ、ミヤサワ君には、このおとしまえ、どう付けてもらおうかしら。」
「ごめんって。悪かった。」
「私の乙女心をボロボロにした代償は高くつくわょ〜。」
「ひえ〜」
僕の悲鳴が狭間の世界の草原に響きわたる。
なんとか話しをそらさなければ。
「ところで、真理子さんはなぜまだここに? なんでまだ狭間の世界にいるの? 現世の心残りは消えたでしょう?」
「消えとらんわ! 気がかりはオマエん家に移動しただけだし。最大の心残りは私の秘密を知ったオマエそのものよ。」
「えぇぇえ〜?!」
「君が死んでこっちに来るまでは、安心できない! ここから君のことを監視し続けるからね。とり殺されないだけ感謝しなさい。」
真理子さんとの関係が途切れないこと、彼女に見られ続けることは…それほど苦痛ではない。…そう思ったこともありました。




