20-アオイちゃんの物語 閑話 <世界樹?>
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「しかし、このケヤキは本当に大きくそだちましたねぇ。」
おばあちゃんがつぶやく。
それを受けてクーボ先生も樹を見上げる。
「うむ。このような巨木を現世では見たことがないのう。」
「現世の巨木というと…縄文杉とか?」
「屋久島の縄文杉は直径が5mくらいじゃったかのう。このケヤキは既に直径10mくらいに育っているのう。それに、ほら、樹高もどれだけ高いか…梢が見えん。」
「アメリカにもおおきな杉がありましたよねぇ。」
「ジャイアント・セコイヤじゃな。あれも直径は5mくらいじゃったかな? 高さは100mよりも高かったが…でも、このケヤキほどではないのう。」
「何でこのケヤキはこんなに大きくなっちゃったんでしょう?」
「わからんのう。でも、トゥオネラ湖まで根を伸ばしてその水を吸って育ったからかもしれんな。現世の方の樹はまだ高さ2mにもなっていない若木じゃが、それでも、普通のケヤキに比べると異常な成長速度じゃ。」
おばあちゃんとクーボ先生は狭間の世界のケヤキの巨木に触れながら、そのような話しをしていた。すると、不意に別の意識が流れ込んで来た。
『ボクが大きくなったのは、ご推察の通りだと思います。』
「これはケヤキさんの意識かのう?」
『そうです。ボクです。』
「こりゃ驚いた。樹木にも意識があるのじゃろうか?」
『はい。ボクには意識があります。割と最近、目覚めました。そして、ボクだけではなく、全ての植物には多かれ少なかれ意識があります。もっともその意識のあり方は、人や動物とは大きく異なるようです。でも、ボクはあおいちゃんと一緒にあることで、人と意思を通わせることができました。』
「ケヤキさん? あなたは現世のケヤキさんとつながっているのよねぇ?」
『そうですね。だから、おばあちゃんとあおいちゃんの間での意識の伝達を仲介できます。ついでに言うと、現世の『ケヤキさん』とボクは『同じ』存在です。そして、ボクは現世のその他の樹や植物とも意識を通わせる…会話できます。』
「それは、すごいのぉ。全ての植物の『神』のようじゃのう。」
『いえ、神ではありません。意思を通わせる事、その仲介はできますが、命令することや従わせることはできません。』
「それでも、現世の植物に作用をすること、影響すること、お願いすることは可能じゃないかの?」
『そうですね。命令はできませんが、お願いすることはできます。』
「そうか…これからもあおいちゃんを助けてやってもらえるかのう。」
『もちろんです。 でも、あおいちゃんはあおいちゃんで、ある程度は植物と意思を通わせられる…お話しできるようですよ。』
「それは、凄いのう。 …どうやってあおいちゃんはそんなことができるようになったのかのう?」
『…エヘッ』
巨大なケヤキさんは、イタズラっぽく微笑んだ。
<おまえはエッちゃんか>とおばあちゃんは心の中で突っ込みを入れた。
「ブエックション!」
「あら、クーボ先生、お風邪ですか? お大事に。」
「イヤイヤ、この狭間の世界で風邪はないじゃろ。だれかうわさしているのかのう。」
「それもそうですね。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ヘプチ!」
そのころ、現世であおいちゃんがかわいらしいくしゃみをした。




