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狭間の世界にて  作者: リオン/片桐リシン
20-アオイちゃんの物語 全7話
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20-アオイちゃんの物語 7 <クーボ先生のアドバイス>


 『あおいちゃん、話しがそれてしまったが、もう少しお話を続けても良いかな? 時間は大丈夫かな?』

 お日様はだんだんと上がって来ていた。でも、まだ早朝だ。

 「はい。大丈夫だと思います。」

 『うむ。我々にはあおいちゃんの悩みに答えを出すことができないのじゃが、アドバイスを一つだけさせてもらおう。』

 「アドバイス?」

 『そう。アフォバイスじゃ。 あおいちゃん。今の疑問の答えをいまはまだ求めようとしないことをアドバイスしよう。 正直言ってずるいのじゃが、そのあおいちゃんの疑問、つまり他の生き物を殺さずに生きる方法、について、まだあおいちゃんはその問題に取り組む準備ができていない。いまはその準備をしてはいかがかな? そして、今はその『仕事』をする準備期間と割り切って、力をためること、学ぶことをお勧めする。』

 「どのくらい、どうやって準備すれば良いんですか?」

 『まずは学校で世間の常識を学ぶことじゃ。そして、多くの経験を積むことじゃ。本を読むことも大事じゃな。名作や古典と言われる小説は,あおいちゃんに人生を疑似体験させてくれる。人の生きる意味については多くの哲学者碩学が著作を著している。それでも、まだ答えが無いということはそれにも増して準備が必用と言うことじゃ。幸いに、あおいちゃんは100年前のどんな科学者よりも多くの知識を得ることができる。200年前のどんな哲学者よりも深く考える機会が与えられている。』

 あおいちゃんは勉強が好きな方ではない。むしろ身体を動かす方が好きだ。げっそりとしてさらに問うた。

 「どのくらい時間がかかるのでしょうか?」

 『わからんのう。でも、ある学問分野で独り立ちするのは27才大学院の博士課程修了くらいはかかるの。産まれてから1万日は準備期間になるかの。』

 「準備で27才! 27年以上!」

あおいちゃんは絶句した。そして、辟易とした。

 『あおいちゃんの抱えた問題は、それほどに難しい問題、解明するに値するテーマだということじゃ。』

クーボ先生は言葉の端々に「アキラメロン」を混ぜ込んで、そう答えた。


 『あ〜、もしもし? あおいちゃん? 話しに割り込んでも良いかな?』

 「あ、はい。どなたですか?」

 『ミヤサワ君とよばれている者です。 憶えているかな? 前に狭間の世界でお会いしているのですが…』

 「あ、憶えています。緑のとんがり帽子のおじいさん…おじさんですよね。 私が死にかけていた時に、狭間の世界から現世に私が埋まっていることを伝えてくれたひとですよね。その節はお世話になりました。」

 『うん。おぼえていてくれたようだね。 僕はね、生前は化学者ばけがくしゃだったんだ。その立場で言わせてほしいのだけど。あおいちゃんの疑問は本来『哲学』という学問分野のものだったんだけど、その本質的な理解には、これからは『自然科学』特に、『生命科学』の知識が必用になるだろう。』

 「理科ですか? .あまり得意じゃないかな?」

 『うん。そんなに難しく考える必用は無いよ。今はまだ学校の勉強で準備を進めれば良い。その後に大学レベルの知識を獲得すれば良い。ただね、生命系科学の分野はそれこそ日進月歩で、今、どこまで勉強すれば良いかなんて,誰にも教えることができないんだ。まずはそのような科学の最前線に追いついてください。』

 なかなかに大変なことを言われているような気がする。

 「大丈夫でしょうか?」

 『大丈夫かどうかは君次第だな。でも、生命現象は換言すれば『生命活動とは外部からエネルギーを取り込んで、それで自分の中のエントロピーを低く維持すること』だから、あおいちゃんの知りたい『食べること』つまりエネルギーを取り込むことに意味を理解するためには、他の生命の命を奪うことの是非よりも,その意味の理解が必用だと思うよ。だから感情を抑えて、自然科学的に事象を観察し理解する能力を身につけなければならないよ。』 

 「うへぇ」

なんか、最初の最初で志をへし折られそうだ。そこへクーボ先生が割り込んで来た。

 『まあ、今は準備の時期じゃ。どのように問題に取り組むにせよ、まずは学校で得られる広範な知識を自分の者にすることと、何についても自分の頭で考える習慣を身につけることじゃ。

 「は〜い。」

あおいちゃんは思ったよりも大変だということを聞かされて、朝っぱらから疲れ果てた。

 でも、考えたら当たり前かもしれない。もし、簡単な課題なら、お話なら、大人達が既にある答えをあおいちゃんに教えてくれただろう。教えることができないということは,まだ誰も『正解』を持っていない、ということだ。


 ♫ ♫ ♫ ♫ ♫ 


 「おかあさん。朝ご飯を頂戴。」

 「何を食べる?」

 「今朝は何でも食べれそう。ハンバーグが食べたいかな?」

その返事を聞いて、お母さんは目を見張り、そして目に涙を溜めた。あおいちゃんに涙目を見せないようにして、努めて明るい声で答えた。

 「わかったわ。レトルトのハンバーグでも良い?」

 「うん。ありがとう。」


 あおいちゃんの拒食症危機はひとまず回避されたようである。


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