一つ目の願い事 前編
ベッドに寝転がりながら、ネックレスを眺めていた。
あの後、神様から「首につけとけ」と言われ、これを渡された。
三つの願い事か。
日常で過ごしているとすぐ思いつきそうなのに、いざ叶ええてやると言われると何も思い浮かばない。
願い事かぁ、願いごと、ねがいごと……
結局、その日は朝から色んなことがありすぎて、疲れてしまったのか、そのまま眠りについた。
次の日、いつものアラームで目が覚めた。
昨日のことを思い出していくと、全て夢なのではと思えてきた。
そもそも神様なんているわけないし、いたとしても見えるわけがない。
俺は遊ばれていたんだ。あの男に。
疑いが確信に変わって、ゆっくりとベッドから体を起こすと何かが手に当たった。
それを手に取り顔の前に持っていく。
「やっぱり、夢じゃないかぁ」
目の前にはあのネックレスがあった。
「おはよー」
台所では母さんがせっせと朝ごはんを作っていた。
「おはよう、早くご飯食べちゃいなさい」
味噌汁、ごはん、目玉焼き、納豆がテーブルに並べられていた。
「満、今日も夜六時からでいい?」
「ああ、うん。その時間でお願い」
味噌汁をズズッとすする。
「分かった。じゃあ、準備しとくから、早く帰ってきなさいよ」
「ありがとう」
俺は母さんに夜六時から一時間、ケーキの作り方を教わってる。将来、「pâtisserie Akasaka」を継ぐためだ。パティシエの専門学校に行った方がいいのではと母さんに勧められたが、結局、普通の高校生活を送っている。
時計に目をやると七時になっていた。あと三十分で出なければならない。俺は急いで残りのご飯を平らげた。