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14話★

 時は過ぎて、昼休み。櫻木さんとの出来事についての質問が終われば、後は他愛もない質問が続いただけだった。

 そして、昼休みになればもう質問がつきたのか、俺のところに質問をしにくるクラスメイトはいなかった。代わりに一時間目の後に助けてくれた彼がきた。


「よう、桂。ようやく、話ができそうだな」

「さっきはありがとう。えーっと……」

 名前が遼としか分からず言いよどんでしまう。

「ああ。俺は大道寺(だいどうじ)(りょう)って言うんだ。遼でいいぜ」

「ありがとう、遼。あの時は助かった。俺も昂輝って呼んでほしい」

「オッケー、昂輝。ま、いいってことよ。なにせあの櫻木さんとだ。みんながあんなに食い付くのは仕方ないさ」


「やーぱり、遼の嘘だったのね」

「「っっ⁈」」

 俺たちは声のした方へ振り向く。そこには、七海がいた。

 七海は、両手を腰にあてながら、はぁっと息をつく。

「遼が嘘ついているなっていうのはバレバレだったわよ。なんで彼女迎えに行っているのに携帯を持って来てないのよ? それじゃあ、ゆーちゃんからの連絡が受け取れないじゃない。生徒会の会議が続いている間、遼がずっと生徒会室の前でゆーちゃんを待っているとも思えないし」

「ハハハ……。七海には、やっぱバレてるよなぁってと思ったわ」

 遼は観念したようだ。彼は苦笑いを浮かべながら両手を上げる。

 傍から見ても二人の距離感は近い。どうやら親しい間柄のようだ。


「そうだ。桂君、これから私たち昼ご飯を食べに、学食に行こうと思うんだけど、一緒に行かない? 桂君のこと、もっと知りたいし」

「お、いいね。それなら友愛にも連絡するか」

 七海の提案に遼が賛同する。

「でも、いいのか? 俺なんかがお邪魔しちゃって……」

 遼と七海、そして友愛さんたちはよく一緒にご飯を食べているグループなのだろう。そんなところに部外者たる自分が入っていっていいのか気になった。

「ん? あ、いいの、いいの。ていうか、桂君がいてくれたほうがわたしの精神的に助かるわ。なにせ、遼は愛しの友愛ちゃんと目の前でイチャつくんだもの」

「あ、その友愛さんが遼の彼女なんだ……」

「そうそう、わたしたち、中学からの付き合いなんだけど、高校入ってちょっとしてから遼とゆーちゃんが付き合うようになってね。それで、わたしはいつも肩身の狭い思いをしているってわけ」

 七海は自分の肩を抱き、およよっとウソ泣きをする。

 そんな七海に遼は苦笑いした。


「七海にはいつも悪いなって思っているって。でも、俺と友愛をくっつけてくれたのも七海なんだぜ?」

「えっ、そうなのか?」

「まあそうなるわね。二人の様子を近くで見ていたわたしにとっては、二人がすごく焦れったかったし、ちょっと手助けしちゃった。二人が付き合ってくれたときは、学園のビックカップル誕生って銘打って新聞部としては盛り上がったものよ」

「七海のやつ、俺たちの仲人という立場を利用して、独占取材をしてきたんだぜ? その時はやっぱりこいつ、ちゃっかりしてんなって思ったわ」

「ま、いいじゃない、いいじゃない。少しぐらい役得があっても罰は当たんないわ。あ、それよりもそろそろ学食に向かわないと。昼休みが終わっちゃうわよ?」

「あ、たしかに」

 俺もさっさとさっきの授業道具を片付け立ち上がる。

「それじゃ、しゅっぱーつ!」


 この後、俺は学食で友愛さん―――牧原(まきはら)友愛(ゆうあ)さんっていうらしい―――と落ちあい、一緒にご飯を食べた。

 たしかに、遼は牧原さんと終始イチャついていた。遼が一方的に牧原さんにイチャつき、牧原さんはされるがままになっていたけど。なるほど、これは七海としては肩身の狭い思いをするわけだ。


 なにはともあれ、俺はこの学園で初めて友達と呼べる人たちができたのだった。


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