【繋がらない電話】
七年後、自分はナラという男と結婚していて、ハナという娘がいる。
「悪い夢よね……い"だだっ!!! 」
自分の頬を思いっ切り抓って現実ではない事を証明しようとしたが、「これは夢では無い」と、突き付けてくる様な痛みに襲われた。
己の望んでない状況である事を、認めざるを得ない様だ。
「はははっ……まじか…」
ーー如何しよう…。こんな話、誰にも信じてもらえないし……
頭では理解していたが、それでも、誰でもイイから、自分の身に起きてる事を誰かに話したかった。
信じてもらえない…それは、大前提に。でも話だけは聞いてくれる相手はいないか? そう考えた時に、マリの顔が脳裏を過ぎる。
電話のアプリを開き、連絡先を調べると、【マリ】の名前を見つけた。
七年後も自分達は友人関係を続けてるんだなぁ…と嬉しくなったが、感傷に浸ってる場合じゃないだろっ! とかぶりを振って、マリの名前をタップし、電話番号を発信させる。
ガチャッ
「あっ、マリ」
『お掛けになった電話番号は、現在使われておりません。ツーっ、ツーっ、ツーっ……』
「……………え……」
電話を切り、アプリを一旦閉じてから再度開き、連絡先から【マリ】は他に居るのかと探すも、該当者は一人だけ。
先程のアレは間違い電話を掛けてしまったのだろう…と思いながら発信するも、聞こえてくるは、「お掛けになった電話番号は……」の、無機質なアナウンス。
「……なん、で…? 」
ずっと友達でいられるのは難しい。
そんなの解ってる。
でも、それでも……悲しかった。
七年後の自分達は、なにがあったか分からないが、関係を絶っていた、という現実が…。
「こんな未来、知りたくなかった…」
ポツリと呟いて、マリ以外の連絡先を調べる。が、話せそうだなぁ…と思う相手が見つからない。
「…やば」
ふとスマホの残量を見ると、残り25%の文字。
ーー何処かで充電しないと…。スマホが使えなくなったら、家に帰れないぞ…
其処で、七年後の自分は現在、何処に住んでいるのだろう…と気になった。
ーー電話……掛けてイイのかな…?
【ナラ】という名前は珍しく、直ぐに見つかった。電話を掛けて、自然な流れで、家の場所は何処か聞き出せばイイ。
そう、頭では理解してるものの、中々発信ボタンをタップする事が出来ない。
「おっ…女は度胸!! おりゃああぁっっ!!! 」
覚悟を決め、発信ボタンをタップすると、何処かへと電話が繋がる画面へと切り替わり、発信音が聞こえてきた。
「やっ…やっぱ今のは無ーー」
『もしもし』
電話を切ろうと、「通話終了」のボタンをタップしようとしたその時、ガチャッと繋がる音とともに、不機嫌な声。それに、怖い…と思いつつも、現在の自分の住所は何処か恐る恐る尋ねると、電話越しから呆れたといった様子の溜息が聞こえてきた。
『〇〇…分かるか? 』
「! わっ…解る!! 」
『じゃあ、ーー…』
ナラから聞いた住所を、一字一句聞き逃さない様に、忘れない様に頭の中に叩き込んで、その後地図アプリでそれを検索し、ノアはなんとか現在住んでる我が家へと、一人で帰ってくる事が出来た。
【繋がらない電話〜ずっと、仲良しでいられると、思っていた…。〜】
後書き
マラソンで、序盤めちゃくちゃ勢いよく走って、終盤は結構な人数に抜かれ、ゴールした時にはビリから数えた方が早いタイプでした。
ペース配分が未だに苦手ですが、1話と2話だけは、続けて投稿したい芸人です(`・ω・´)❤️