我は神
「ぐふっ!ぐふぐふ!女!女!女!」
一人の男が何人もの女をはべらせ、日夜を問わず遊んでいる。
彼には魔王を倒し異世界を救うという使命があったというのにだ。
我は転生者の末路を見て絶望していた。
「愚か……」
我は肩から掛けた真っ白なヒマティオンをはためかせた。
がっかりだ。
天罰を与えようか迷ってしまう。
彼は、転生する時言っていた。
『必ずや魔王を打倒し、異世界に平和をもたらすことを約束しましょう!』
我はその心意気に深く感動し、複数のチート能力を与えてあげたのだ。
それなのに、このザマである。
「セックス!セックス!スローライフは楽しいなあ!ぐふぐふ!」
こんな奴のために我は力を貸し与えたのか。
我は深く後悔する。
新しい転生者を用意しようか。
我はトラックを手のひらに召喚した。
これを地球に投げ捨て、人が死ねばそいつは異世界に転生できるようになる。
我はトラックを指で摘み、誰を殺そうか思案した。
いや、しかし、本当に新しい転生者を用意して良いのだろうか。
トラックを地球に落とす前に思い直す。
地球から何人も転生させるわけにはいかないのだ。
そう、我は何度も転生者を召喚し、その度に失敗してきたのだ。
そうなんども転生させていたら、今度は地球の秩序が乱れてしまう。
というか、地球の秩序は乱れ始めている。
今までに何人もの転生者を送り出してきたものだから、地球に『異世界』という概念が伝わってしまった。
地球の書店を見れば転生者のエッセイが当たり前のように売られている。
そして、異世界に憧れる者たちが増え始めた。
今はまだいいだろう。
だが、そのうち地球人たちは異世界の存在を知りたがり始めるはずだ。
その時どうなる? 我は考えたくもない。
我はトラックを消し、今いる転生者に天啓を与えることにした。
一転生者よ。魔王討伐はどうした。
「ぐふぐふ。セックスは楽し…え!?か、神様!?なに!?」
転生者は女を退け、背筋を伸ばして立った。
「魔王討伐ですか!?ええ!!順調ですよ!!たぶん!!」
我は彼のステータスを確認する。
彼のステータスはレベル9999999だ。
転生させた日からまるで成長していない。
これは一体どういうことだ。
我が疑問を口にすると、彼は言った。
「ああ、それはですね!努力しなくてもどうにかなってるので、レベル上げとか辞めました!」
なんということだ。
我の力を与えた意味がないではないか。
我は怒りに任せて彼を怒鳴った。
一我は色欲に溺れさせるために転生させたのではない!
「ごめんなさい!!!でも僕だって頑張ってるんですよおおお!!!」
転生者が泣き出した。
「だいたい、元がニートなんだから仕方ないだろう!頑張ったってこの程度なんだよ!」
仕方ない? ふざけているのか。
我は呆れた。
もうこいつはダメかもしれない。
「てか、偉そうに人に命令するなら、自分で魔王を倒せばいいだろ!」
我は再び怒鳴ろうとした。
しかし言葉が出なかった。
そうなのだ。
確かにその通りなのである。
我が異世界に降臨して魔王を倒せば良いではないか。
なぜ気づかなかったんだろう。
よし、では異世界に降臨するとしよう。
一確かにその通りだ。我は異世界に顕現するとしよう。
「え!?じゃあ僕はセックスしてて良いんですか!?」
はぁ?何を言っているのだこやつわ。
お前のようなクズを異世界の地に残すワケがないだろう?
一天罰。
「!?!?!?」
転生者の回りに雷轟が降り注ぐ。
転生者は全身黒焦げになり、消し炭と化した。
ふぅ。
それじゃあ、異世界降臨、始めるとするか。




