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06 獣人たちとコーヒー

本日で、投稿開始から1週間となりました。ここまで読んでくださってありがとうございます。

ブックマークもうれしいですし、感想までいただけてびっくり! 感謝感激でございます。


今後の投稿ですが、毎週1回、金曜日18時頃の更新を目標に続けてまいりたいと思います。

あと、たまにそれ以外の日に、閑話の投稿もあるかもしれません。

大きな事件は殆ど起こりませんし、痛い話も怖い話もそんなにない予定です、多分。

のんびりではありますが、最後まで完走を目指しておりますので、よろしければしばしの間お付き合いくださいませ。

異世界珈琲店で、ほんのひと時、リラックスしていただけましたら幸いでございます。

 異世界珈琲店の開業から一週間ほどが経った。

 作業や接客などにもだいぶ慣れてきたので、少しばかり閉店を遅くしてみたところ、クエスト帰りなどに寄ってくれる冒険者たちが増えてきた。


 「よーうリョウ、久しぶり! サーラに聞いたよ、へぇーこれがコーヒーかぁ」

「やあロルフ! 一杯銅貨三枚だよ、ぜひ試してみてよ」

 陽気に声をかけてきたのは、こちらに来た初日に食堂で少し話をした人狼のロルフだ。

 幼馴染の人狼四人でパーティーを組んでいると言っていたが、今日も仲間とひと狩りしてきた帰りらしい。

 大剣持ちのロルフに、ガタイのいい双剣持ち、小柄な斥候に、杖を持った魔法使い、といったメンバーだ。

 買取の査定を待つ間に貰おうかーと上機嫌の四人に、フロアに並べた丸椅子をすすめ、俺はカウンターの中に入る。


   ◇   ◇   ◇


 淹れたてを四杯トレーに乗せて運ぶと、いい匂いだなーの声とともに四方から手が伸びる。

 手にしたカップを、覗き込んだり匂いを嗅いだり迷わず口に含んだり……美味い美味いと言いながらそれぞれに楽しんでいる一同に、ふと思いついて気になっていたことを訊いてみた。


 「サーラさんが普通に飲んでいたし、ギルマスも何も言わなかったから普通にすすめちゃったけど、獣人さんはコーヒーって飲んでも平気なものなの?」

 確か前の世界では、犬や猫にカフェインは禁忌だったはず。

 こちらの獣人を犬猫と同列に扱うのは失礼かと思ったけど、マズいようなら何とかしなくては、と心配だったのだ。


 「俺たち普通に酒も飲むし、タバコを吸うやつだっているからなぁ」

 全然平気じゃね? と双剣持ちが言うと、一同笑いながらうなずく。

「俺は全然平気だなー、でも、味が強いって感じるやつはいるかもしれないなぁ」

「特に苦みに弱いひとは、苦手に思うかもしれませんね」

 斥候と魔法使いが頷き合う。

 その辺は、人族と同様に考えても良さそうだ、ひと安心である。


 「そういうひとには、お湯で薄くしてあげればいいんじゃね?」

 なるほど、ロルフの案なら今すぐ簡単に対応できるな。

「俺の知ってる話だと、砂糖を入れたりミルクを入れたりする飲み方もあったんだよね」

 でも、こちらの世界で砂糖やミルクがあるのか、あってもうちの店で使うことが可能かどうか、そこなんだよなー。


 考えていたところに、ちょうどサーラさんが通りかかった。

「随分楽しそうに盛り上がってるじゃないのー、なになに?」

 興味津々で話の輪に加わるサーラさんに、先ほど出た話をざっくり説明し、砂糖やミルクが使えないだろうかと相談してみる。

「ん、分かった。ちょっと待ってて」

 言うやいなや、サーラさんは滑るような早歩きで何処かへ行ってしまった。


   ◇   ◇   ◇


 買取査定と精算が終わって四人が戻ってきたところに、ちょうどサーラさんも戻ってきた。

 手にはガラスの瓶と、二リットルくらい入ってそうな水筒型の革袋を持っている。

「こっちは蜂蜜よ、甘くしたいひとにはこれを入れてあげたらいいんじゃないかしら。そしてこっちは牛乳ね、この水筒は状態保存がかかってるから、一週間くらいは余裕でもつわよ。どちらも食堂の厨房に話をつけてきたから、無くなったらいつでも分けて貰えるわ」

 フンス! と鼻息荒く得意満面で胸を張る。

 さすがサーラさん、仕事が早いです。


 「良かったら皆さんで味見してみませんか? これは俺がおごりますんで」


 蜂蜜の瓶は口が適度に細いので、そのまま傾けて出して貰えばいいだろう。

 カウンターの中を探したら、カップと同じくらいの大きさのビーカーのようなものがあったので、牛乳はそれに小出しする。

 ついでにスプーンも何本か出し、六つのカップに注いだコーヒーと一緒にトレーに乗せてフロアに出る。

 みんなの手が一斉に伸びて、試飲タイムである。


 「甘くすると凄く飲みやすくなるな!」

「牛乳を入れたら、なんて言うか、まろやかになるんだなぁ」

 斥候と双剣持ちがカップを覗き込む。

「僕、熱いのが苦手だから、これ入れたらすぐに飲めていいかも」

「何も入れない方が香りは良いように感じますね」

 ロルフは猫舌だったのか、そして魔法使いはブラック派と。


 「どれも悪くない……それはそれ、これはこれ、って感じよねぇ」

 サーラさんがいい感じにまとめてくれた。

 忌憚のない意見がいただけて実にありがたい。

 俺も飲んでみたが、蜂蜜は風味がさほど強くないタイプなので、コーヒーの匂いと喧嘩することなく、ほぼ砂糖の感覚で使えそう。

 牛乳も、小出しにしたとき既に気付いていたが、俺の良く知っている牛乳とは比べ物にならないくらい濃厚なので、コーヒーが水っぽくなることもなさそうだ。


 本当に受け入れて貰えるんだろうかと、不安に思いながら始めた異世界珈琲店だったけど、ちゃんと喜んでいただけているらしいと実感できたのが大きな収穫である。


 良かった良かった……なんて言っていたら、一瞬フロアの空気がざわついた気がした。

 何だろう? と思ったところに、背後から何者かがいきなりどーんと勢いよく飛びついてくる。

「にいちゃーん!」

 小学校低学年くらいの男の子の声が、俺に話しかけているらしいが、当然こんなところに知り合いの子供なんているはずがない。

 恐る恐る振り返ってみると、そこには、黄金の瞳を爛々と輝かせた、黒くて大きな、猫がいた。


 いやこれは猫なんかじゃない、俺に飛びついて来たのは、成獣サイズの黒豹だった。

次回は、2021年11月19日金曜日18時頃の公開を予定しています。

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