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神のマニマニ   作者: 朝日ドライ
8/14

決戦ののろし

 一行が降り立ったのは薫子の屋敷ではなく、はたまた三好のアパートでもない廃墟のような場所だった。

 といっても、都内からそれほど離れているわけではなく、何かあればすぐに駆けつけられる場所ではあったのだが。

「ここは、我が近衛グループの機密研究所です。絶対安全、なんていう保証は出来かねますが、それでもしばらくの間は追っ手が来ることもないはずです」

 薫子の言うことには、そういうことらしかった。

 道中、現在マニマニの体は泰然の神という神様が入っているという説明を他の面々にはしていた。

 初めこそ驚いていたが、先ほどの騒動から割とすんなり受け入れられた。

 詳しくは後ほどと濁したが、どうやら薫子らもまた襲撃に見舞われたらしい。各々暗い顔をしていた。

 廃墟を奥まで進むと、本棚の影に鍵穴が空いており、なんとそこが機密研究所の入り口になっていた。

 ススやホコリだらけのフロアと違い、その中は実に清潔感あふれていて。というかむき出しのコンピュータ配線やらデジタルモニタがサイバー感をこれでもかとあふれさせている。

 やがて通されたのは、簡素な会議室だった。

「ごめんねミョンシー君。ここ、来客なんてないから、こんな部屋しか用意出来なかったんだ」

「いや、それよりもミョンシー君てあだ名なんなの? 辞めてくんない?」

「えー、かわいいじゃん」

 泰然は現場を離れてからずっと押し黙っていたのだが、ついにスイッチが切れたようで適当な椅子に腰掛けるとあっという間に眠ってしまった。

「ワシが次起きるときは、多分坊主……、マニマニの方に戻っとるじゃろうけん。説明やらなんやら、頼むわ」

 入眠直前にそう言っていたから、今はさしずめ入れ替わりタイムなのだろうなと考える三好。

「そんじゃあ、マニマニ君が起きるまでここを動くわけにも行かないし、情報の整理と、今後について話し合いましょう」

 えらくキビキビとした様子で薫子が仕切り始めた。

 思い返してみれば、大学の頃も何かピンチナ場面があるとこんな風にしっかりとした態度でチームを引っ張ってくれたなと感慨にふける。

 彼女は壁に備えられたホワイトボードに大きく『大作戦会議』と書くいて。

「それじゃあ、まずは私達の方から説明するね。丸内田、お願い」

 お嬢様に指名されて、それまで部屋の隅で起立していた給仕が前に進み出た。

「我々は、本日お嬢様主催の立食パーティーの準備をお屋敷で勧めておりました。ええ、以前三好様達もいらしたお屋敷です。午後一時頃、外部から要請していた料理人の到着が遅かったので様子を見るために私ともう一人の給仕とで外へ出たところ、数名の怪しげな男達に包囲され『近衛薫子の給仕だな』と声をかけられます。この時点で、お嬢様に何らかの攻撃もしくは悪質な行為が企てられている事を察知した我々は男達を撃退、急いで屋敷に戻ります。しかし、その時にはすでに屋敷内部にも不審者が忍び込んでいたようで。庭のヘリポートから脱出を図った際、『ガキ二人を出せ』という声が聞こえたため、実近で心当たりのあった三好様のGPSを辿り急行したところあのような自体に遭遇。そこから先は現場で会ったとおりでございます」

 さすが大企業の社長給仕、非常に良くまとまってわかりやすい状況説明だと三好は素直に感心した。

 任を完璧にこなした給仕に目配せをし、薫子が再び口を開いた。

「そういう感じ、何か質問ある?」

「一つ良いか? 俺のGPSってどういうことだ?」

「ああ、ウチGPS管理サービスも業務にあるから、それでのぞき見したってこと。ごめんね」

 とんでもない事をさらりと言った。

 三好は内心、職権乱用じゃないか! と怒っていたのだが、

「いや、緊急事態だったし、そういうのはしょうがないよ」

と笑って過ごしてしまった。

「それじゃあ、次はそっちの番ね。何があったの?」

 薫子に促されて、はてどこから話せば良いのか三好は悩んだ。悩んで、初めから話すことにした。

 キノコ狩りで空から少年が落ちてきたこと。

 彼は神様の使いで、他の神様の暴走を止めるために東京にやってきたこと。

 東京では武蔵神という神の力を使って、夢想病という存在しない病気を流行させている男がいること。

 その目的は、まだわからないこと。

 その神に支配された人々に襲われて絶体絶命のピンチだったところに、薫子らのヘリコプターが助けに来てくれたこと。

 包み隠さず、洗いざらいわかること全部を。

 初めこそ、三好を除くその場にいた全員が驚き戸惑っていたが、やがてため息を一つ吐き出した。

「そう、そんなことになってたのね。私の家にお金借りにきたのも、そのために。なんで始めにそう教えてくれなかったのよ」

「ごめん。こんなことになるなんて思わなかったから」

 マニマニに神が東京を壊滅しようとしていると聞かされたときはその危険度がまったく身に染みていなかった。

 少し面白そうなことが起こるかも知れないとわずかな期待すらしていなかったと言えば嘘になる。

 だが、あんなに大勢の人を操り自分達を殺そうと迫られた今、その恐怖は感じたくなくても感じさせられてしまっている。

 気がつかないでいるが、三好は先ほどからもう何度も自分の肩を抱いていた。

「ま、過ぎたことはしょうがないか。それで、ミョンシー君はその親玉らしき人物に会ったんでしょ。誰かわかる?」

 気を取り直して情報の整理を続ける。敵に勝つには、まずは何よりも情報を集めることこそが重要だからだ。

 顎に手をあてて記憶を探る。

「んー、どこかで見たような気はするんだけど、いかんせん思い出せなくてさ。こう、清潔感があって、がっしりしてて、前髪は二つに分けてて、顎髭があって」

「その情報じゃあ、ちょっとね」

 懸命に身振り手振りで自分の見た顔を伝えようと試みるも、あえなく失敗した。

「他に、なんか手がかりのようなものがあればいいんだけど……」

 手がかりという言葉に、一つ思い出す。

「そういえば、薫子達を襲った奴ら、こう、神社か寺の地図記号みたいなグロス持ってなかった?」

「あー、どう丸内田」

「そういえば、卍型のグロスを握っていたような気もします。……ええ、そうでした、確かに握ってました」

「ありがとう。で、ミョンシー君。それがどうしたの?」

「俺達を襲った奴らもそれを握ってたんだよ」

 卍の形をしたグロス。襲ってきた奴らの共通点があるのならば、そこから何か導き出せるかも知れない。

「……ミョンシー君、丸内田。その卍グロス? の特徴を、もっと詳しく教えてくれないかな? 何かわかるかも知れない」

薫子の提案に顔を見合わせた二人は、順にその特徴を語り出した。

「確か、卍の先の部分が丸くなってて、そう、そんな感じ」

「正確に言えば卍と言うよりもむしろアルファベットのXの方が近い感じがありました」

 二人の証言をすりあわせ、それを画としてボードに写していく。

 出来上がったイラストを見た薫子の頭には、一つのイメージが浮かび上がっていた。

「丸内田、待田製薬のホームページを検索してくれる?」

「待田製薬って、今日俺達が潜入してたとこじゃ。ああ、そっか。その社屋で会ってるんだから、社員の可能性が高いのか。でも、いちいち社員一人一人の写真をアップロードしてるか?」

「社員だったらしてないでしょうね。でも、重要な役割に就いてたら話は別。ミョンシー君、この顔に見覚えは」

 そういって示した画面には、一人の男の顔が写っていた。

「あ、コイツだ!」

 それは、三好が本社の中で出会った男に間違いなかった。

「やっぱりね。あの卍グロス、待田製薬の社印なの」

「コイツ、有名なの?」

「有名も何も、コイツが待田製薬の社長なのよ。待田征一。数年前社長に就任したばかりの若手。ま、私が言えたもんじゃないけど。コイツが首謀者なら、色々合点がいくわ」

 憎々しげに呟くあたり、相当な因縁がありそうだ。

 だが、それでもまだ疑問はつきない。

「敵の首謀者がコイツだとして、その狙いはなんだ? いったいなぜコイツは夢想病騒ぎなんて起こしたんだ」

「それは、簡単よ」

 一方、何らかの察しがついている薫子が三好の疑問に答える。

「これは関係者にしか明かされてないんだけど、待田製薬は近々夢想病のワクチン開発成功の記者会見を行う予定だったの。国からの承認も下りたって聞いたし。前代未聞の奇病に、競合他社多い中圧倒的スピードでてきめんに効く薬が出来たとなれば、会社の評判も鰻登り。一気に覇権を握れるって寸法かな」

「待田製薬は最近経営が悪化しているという噂もありましたし、会社の建て直しを図るにしてもあり得る手かと思われます」

「そうね。それにしてもうさんくさいと思ったのよ。ウチもまだ何にもつかめてない状態で一足飛びにワクチン開発なんて言うから、よっぽどの機密があるんだろうと思ったけどさ。そっか、自作自演ならそりゃできるわよね」

 椅子に背中を預けて脱力する。

 ふと三好は気がついた。

「もしかして、待田製薬に企業スパイって言うのも」

「そ、それを気にしてのこと。まあ、それどころじゃなくなっちゃったけどね」

 前代未聞の大事件を起こした首謀者と、その目的がおおよそ明らかになった。

「後は、具体的なところかな。敵さんの計画がどのくらい進んでるのか。戦力は。私達の勝機、もしくは安全を確保するにはどうすべきか」

 具体的な部分は、まださっぱりわかっていなかった。

 一同顔を曇らせる。

「敵の力、マニマニの神によると人を傀儡にする力らしいんだけど。具体的にはどうなんだろう」

「発動条件って事? 少なくとも見ただけとかではなさそう」

「なんでさ」

「だって考えてもみてよ。例えば見ただけで操れるのなら泰然さんはともかく、ミョンシー君や丸内田を操らない理由がない」

「それもそうか。でも、アーケード街ではあれだけ沢山の人数を操ってたぜ。複雑な条件だとそれも難しくないか?」

「うーん。例えば、人を操れるようになる条件って何があると思う?」

 人を操れる条件、つまり力の発動条件について。漫画やアニメだと、例えば特定の行動をした者とか、ある領域に入った者が支配下になったりするものだ。しかし、領域ならそれこそ三好が支配を免れた理由がわからないし、特定の行動、契約なんて最たる例だ、を条件にするのならば、あれだけの人数を操れる理由がない。

 意見がここに来てとんと出なくなってしまった。

カチコチと無機質な時計の音とマニマニの寝息だけがやけにハッキリと聞こえてくる。

 各々、呟くように思案を深めていく。

「呪文、グロスを持つ者?」

「グロスは皆が持ってたわけじゃなかった。それに、あのアーケード街で俺達を襲ってきたのは、普通の通行人だと思ってた人達もだし」

「その全員が実は敵の仕込みだったとか」

「一人ももれなく? それこそありえなくない?」

 ところで、浅い眠りの時、穴に落ちた夢を見ていたら体がビクッとなって起きてしまう現象がある。人間なら誰しも経験したことがあるだろう。

 マニマニの体がビクッと小さく動いたかと思うと、けたたましい物音を上げて飛び起きた。

「なんだ? 地震か? 敵襲か?」

 よだれを垂らして周囲を伺うマニマニ。寝ぼけているので視界が悪く状況が飲み込めていないようだった。

 三好が優しく微笑む。

「おはようマニマニ。今、薫子の隠れ家みたいなところに来てるんだよ。その、……よだれ、ほっぺについてるよ」

「おっと失礼」

 拭いながらも、今の状況を理解してきたようだ。

「なるほどな、こんなとこにいるって事は、事態に何らかの進展があったってことなんだろう。ああ、説明はいい。泰然の時も、まあちょっとは聞こえてるんだ。それに、ホワイトボードに上手くまとめられてる。ピンチなんだろ。それに、敵の力がわからないときたか」

 さすがのマニマニ。神を体に宿しているだけあってこの手のシチュエーションにはなれた表情だ。

「敵の神について、なんだ、オレの神はなんて言ってた?」

「えっと、確か武蔵神だって」

「ほう武蔵神。聞いたことある。昔よく悪さしてた神だとか。なるほどな、納得」

 神の面から見ても、人の面から見ても今回の事件は納得のいく出来事だったらしい。どうやら人の方も神の方も、評判はよろしくなさそうだった。

「寝起きのとこ悪いんだけどさ。武蔵神の力について何か知ってることはない?」

 今のところ、この面子の中で最も神事情に詳しいのはどうしてもマニマニだった。

 三好の願望をわかった様子で、しっかりとマニマニは頷く。

「知ってるぜ。武蔵神。あの神は色んな力があるが、その中でも一番凶悪なのは傀儡の力だ」

 傀儡。自分の意思を欠落させ、他人に意のままに操られる人形。

 それはあのアーケード街で二人を襲ってきた人達に、あるいは近衛邸で薫子らを襲った奴らを形容するにぴったりの言葉だった。

「傀儡は文字通り操る力。その力に魅せられたら最後、死ぬまで神の操り人形になってしまうという」

「発動条件、見たいなものはないのかしら?」

「ある。それは触ることだ。どこでも良い、操りたい対象の肉体に触り、神の力が宿った種を植え付けることだ。一度種を植え付けられれば、自らあらがう術はないが、裏を返せば触らなければ何も出来ないってわけ」

 なるほど、思い返してみれば三好もマニマニも敵に触られてはいない。

 しかし初めて会った時彼に手を差し伸べられていた。もしもあの手を取っていたら今頃はと思うと、三好は心底怖くなった。

「ミョンシー君によると、あなた達を襲った人の中には先ほどまで通行人だった人も含まれてたと言います」

「おおう、そりゃあまずい事態になっちまってるな」

「何がまずいんだよ」

「考えても見ろ。その場にいた全員が、一人も残らず敵の傀儡だったんだろ。あり得ると思うか。普通。関係のない第三者が来る可能性も大いにあり得る。というか、普通はその可能性を考慮して町中で堂々と襲うなんて作戦たてない」

「でも、じゃあどういうことさ」

「簡単だよ。もう手遅れな段階まで計画が進んでるってことじゃあないのか」

 言っていることが理解出来ずに、目を瞬かせる。

 マニマニは肩をすくめてかぶりを振ると、もう一度、子供に言い聞かせるように丁寧に説明をした。

「つまりだ。もう敵はこの都内中に種をばらまき終えていて。だから誰が来ようが握りつぶせる段階にまで計画が進んでいると言うことなんだよ」

 衝撃が走る。

 マニマニは続ける。

「ホワイトボードに目的が書いてあるだろう。アレをより正確に表すとするならば、この東京を餌場に、定期的にワクチンや新薬、そしてそれを上回る夢想病の発病を演出することによって、企業の安定を図ろうとしているんだ」

 製薬会社にとって一番恐ろしいのは薬が必要なくなることだ。世界では病が人の手に負えないほどに多く、そのためそんなことはしばらくはあり得ないが、それでも今更世界から根絶された病気の特効薬を開発したとしても、それを買う人物など皆無だろう。

 自分で病気を作り、自分で解決する薬を作る。その延々のループによって安定した利益を生み出そうというのが、真の目的だったのだ。

「許せない……。人の健康を、お金を、時間を、なんだと思ってるの」

 力強く机が叩かれた。真っ赤になった薫子の手は、その痛みからか、それともまた別の理由からか確かに震えている。

「なんとか、する方法はないの?」

 絞り出すように出た言葉。

「ある」

 マニマニの返事は。

「敵の目論見を防ぐ術が、たった一つだけな」

 全員の視線が注がれた。

 薫子が食い気味に叫んで机に乗り出した。

「教えてマニマニ君!」

「敵の目論見が判明したとして、では敵の植えた種は今どんな状態にあると思う?」

「どんな状態か? そんなのわかんない」

「考えろよ。いいか、敵の種はおそらく、現在人々の体の中で活性しつつも停止命令を受けているはずなんだ。そうでなければ都民全員がオレ達を襲ってくるはずだからな。敵がその状態の人を操ろうとすれば、おそらく停止命令を解除させてからになるだろう」

 その先が読めたらしい薫子が続きを話す。

「だからその前に活性状態にある種を不活性化させれば良いわけですね」

「その通りだ」

 よくわからないやりとりを目の前で展開されて困惑状態の三好。そんな彼を脇に話し合いはどんどん進んでいく。

「でも、そんなのどうやって?」

「オレの神の力を使う。オレの神は染妄という力を持っていてな。まあ、敵の傀儡と似ているんだが、こちらは触れる必要がなく、対象がそこに存在するとオレが感知できれば発動するんだ。やつほど繊細に制御は出来ないが、不活性化させるぐらいなら可能だろう」

「それをすれば、都民の人は安全なのですね」

「ああ。不活性化はオレの神の司令になるからな。やつが再び操ろうとするなら、もう一度種を植え付ける必要が」

「ちょっと待って!」

 二人の話をなんとか遮って割り込んだ。

「マニマニの力を使えば敵の目論見を止められるんだって?」

「ああ、そのはずだが」

「でも、さっきアーケードで襲われたときはじりじりと巻き返されてたよ。マニマニの作戦上手くいくの?」

「ど、どういうことだ?」

 アーケード街の戦いで、泰然は敵の命令下にある人を停止させることが出来ていた。しかしそれはあくまで一時的な話で、結局じりじりとではあるが、停止命令に背かれていたところを三好は見ている。

「武蔵神は、自分が成長したからだって言ってるけど。ねえ、本当にその作戦で上手くいくのかな」

「むむ。もしかしたら、出力のせいかもな」

 思い当たる節があるようで、マニマニは顔をしかめた。

「出力?」

「ああ、やつの命令と俺の命令が相反する者だった場合の話だ。その場合、より出力の高い命令に優先順位がついてしまうんだ」

「なら、その出力をあげないといけないわけか。どうすれば……」

「都内全域に届き、かつ高出力のアンテナのような物があればあるいはいけるかも知れないが、そんなもの」

 再び振り出しに戻ってしまったかと思ったその時、天啓が降りる。

「東京タワーは?」

 薫子が思いついた。

「東京タワー?」

「そう。かつて日本一だったテレビ電波塔。アレなら、高い出力で都内全域に電波を届けられる」

「し、しかし、電波が届いたからと言ってオレの力が使えるとは……」

「バカね。電話よ電話。電話を使うの」

「薫子、それどうやるの?」

「電話を一斉にかけて、都内全域につなぐ。そうして意識をこちらに向かせれば、力が使えるんじゃない?」

「おお、いい。マニマニいけるんじゃないか?」

「待ってくれ。仮に電話をかけられたとして、都内全域に届くほどの電話をかければその負荷は絶大だぞ。それに耐えられるサーバーは」

「あら、私を誰だと思ってるのかしら」

 マニマニの反論に、余裕綽々の視線で応えたのは薫子だった。

 つつましやかな胸を張って、腰に手を当て鼻を鳴らしている。

「世界に名高い近衛グループの現社長様よ。そのくらい、簡単に用意してやるわ」

「しかし、いいのか?」

「東京の危機に、手を貸さないわけないでしょう。当たり前よ」

「なんだかよくわからないけど、東京タワーに登ることが出来れば、オレ達の勝ちってことでいい?」

「簡単に言うとそうなる」

「よし」

 これで全てのピースは整った。

 拳を握って強く決意する。

「さっきは負け調子だったけど、今度はそうはいかないぞ」

「そうだな。次は、敵をぎゃふんと言わせる番だ」

「もろもろの準備、明日までには完了させられる。善は急げってね」

 吉報に部屋が揺れた。

「よし、決まりだ。明日、この東京をやつの魔の手から救う。オレが東京タワーにたどり着けるかどうかが決着の分かれ道だ。各自、作戦の詳細を伝える」

「おー!」

 決戦ののろしが、今静かに上がったのだった。


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