2−2章 袋のネズミ
非番の伊野は、高木課長に緊急性を要する任務の名目で招集される。てっきり、3課だけの任務かと思えば相手は元特殊部隊の軍人。8課の力を借り事態の鎮圧にあたる。
前時代的な雰囲気の廃棄区画は違法増築により最早地図が意味をなさない。さながら迷宮だ。
川西<8課>「大丈夫かい、あんちゃん」
苦笑いしつつ、伊野を見守る。
伊野<3課>「はっ、はっ、大丈夫です」
まだ30にもなっていない若者が疲れ果てる。
ぬかるんだ泥道、道を遮るダクト、邪魔なスーツ。
伊野「何でそんなに動けるんです?川西さん」
川西「歩き方ってもんがあるのさ、なにすぐ慣れる」
すり減った革靴がこれが事実だと告げる。
所変わり、高野3課長一行
笹部<8課>「此方、対象を捕捉。対象は、何やら打電しているようです。執行してもいいですか?」
高野課長<3課>「いや待て。包囲が完了していない」
冷静に応答する。
笹部「対象は、打電しています。つまりは、情報が他国に漏れているんですよ。いいんですか?」
焦り気味に若い8課員は忠告する。
高野課長「問題ない。漏れているのは陸軍の暗号コードブックだ」
笹部は驚愕して
笹部「はっ、、、何ですか。一大事じゃないですか。
何が大丈夫なんですか」
飯島<8課>「落ち着きなさい」
落ち着いた女性の声が場を制す。
高野課長「言葉が足りなかったな。既に本部に打電内容は傍受させている。当該暗号は破棄すれば実質的に損害はない」
「加えてだな、 相手にこの暗号を使わせれば、うまい具合に目論みが分かるって寸法さ」
数手先を読む高野課長の思考が開かれる。
笹部「了解です。監視を続行」
少し不満げに漏らす。
笹部は腰のホルスターから ガーダーを引き抜く。
ガーダー、大型拳銃に見えるこの武器は国防省中央の量子コンピュータに接続し、対象の脅威度を判定する。
脅威度が低ければトリガーを引いても作動しない。
カメラもついているので、報告書で楽できる。結構人気な武装だ。
高木課長「包囲完了.執行しろ」
冷徹な声が響く。
笹部「じゃあね、グッバイ」
ガーダーから射出される青い光線は犯人 飯野沙峰を撃ち抜く。神経パルスが中枢神経をはじめとする各神経系を止めるはずだった、、、、
むくりと起き上がる飯野は、拳銃を抜きこちらに発砲。
飯野「くそっ、対外情報局か」
窓から身を乗り出し落下する。
笹部「捕獲失敗。追跡に移行します」
緊迫した状況が声から伝わる。
高木課長「了解。このまま追跡して伊野<3課>まで持っていく」
腕時計型デバイスのコミュに伊野を加え
「此方は失敗だ。パラライズが効かない。犯人は君たちの方向に逃走を開始。すまないが対処を頼む」
伊野「了解。武装を実弾に変更して対処します」
手持ちのベレッタをコッキングしつつ言う。
「川西さん、武装実弾にお願いします」
川西「了解、嫌な感じしてきたねぇ、あんちゃん」
慣れた手付きでホルスターからコルトガバメントを取り出すと、コッキングを行う。
伊野がデバイスでマップを出すと逃走中の犯人の位置情報がリアルタイムで更新を始める。
伊野「犯人の待ち伏せを行います。ついてきてください」
全力でかけ始める伊野と川西、
ダクトを超え、塀を超え、縦横無尽に駆け回る。
川西「あんちゃん、カバーに回れ。
そして、犯人の言うことは全て飲め良いな」
経験則から来る、圧倒的な信頼感。
伊野「物によりますが、極力」
ぶっきらぼうに返す。
川西がハンドシグナルで送る
「 発 見 」
伊野も送り返す 「了解」
コルトガバメント<拳銃>を持った川西が無言で拳銃を構える。
川西「此方、対外情報局だ。貴様には複数件の重要容疑者として、捕縛命令が出ている。手を挙げ床に伏せろ」
圧倒的な凄みを放つ。
飯野「くそぅ」
大人しく従うと見せかけた、早撃ち。
身を隠している川西のカバーに入る。
射線で川西と飯野の間に区切りをつける。
突如、無線のcallが鳴る。
川西「俺とあんちゃんで、あいつを一箇所に固定する。良いな」
無言の了解と共に弾幕を張り始める。
車のエンジンルームを背後にした、飯野<犯人>は射線に阻まれ、動けない。
「ズドン!」伊野でも川西でも無い、まして飯野の銃声でも無い銃声が響く、、、と同時に飯野の左足に穴が開く
無線が誰なのか教えてくれた
「bear3<佐々木>執行完了」
読んでくれてありがとう!
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