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ダンジョンマスターに挑む魔術師と盗賊

 リザードマンにトドメを刺した後、俺とメシアはダンジョン内を探索していた。

 ウッドゴーレムやアイアンゴーレム、【槍技(そうぎ)】のスキルを持つリザードランサー、他にも多くの魔物を相手にしている。


「まさか能力値を盗む(ステータススティール)が、自分の能力値(ステータス)より低いのは盗めないなんてな……」


「最初にロックゴーレムを盗んだから……あんまり能力値ステータスは手に入らなかったね……」


「まあそれでもロックゴーレムとアイアンゴーレムから盗めたおかげで、HPとSTR、VITはかなり高くなってる。他の6つも、そこそこ盗めてるしな」


 色々と試してみて、判明した能力値を盗む(ステータススティール)の制限は2つ。

 1つは俺より低い能力値(ステータス)は盗めない点。

 ロックゴーレムから盗んだ後、リザードマンから4つしか盗めなかったのはそれが理由だった。


「でも、同名モンスターから盗めないのは痛いね……」


「ああ……最初の1体より能力値(ステータス)が強い個体を見つけても、盗めないのが勿体なく感じる」


 もう1つは同じ種類のモンスターからは能力値ステータスを盗めなくなる点。

 ロックゴーレムAから能力値(ステータス)を盗んだ後、別のロックゴーレムBからは盗めなくなってしまう。


「スキルの方は、同じの盗めるんだっけ……?」


「そうそう。同じのを盗んで、熟練度に出来るんだ。おかげで【剣技】とか【盾技】は、使ってないのに派生技が使える」


 スキルを盗む(スキルスティール)の方は、制限が無い。

 同名のモンスターから同名のスキルを盗める。

 今までの探索で手に入れたスキルは、【剣技】【盾技】【槍技】【炎魔法】の4つだ。

 この中で扱いやすそうなのは、【剣技】と【盾技】だろう。

 片手で使える剣と盾は、前衛として戦いたい今の俺にピッタリだ。


「でも、剣と盾を実際に使うのはもう少し先だな……」


「あれ……リザードマンから、盗んでなかった……?」


「俺の能力値ステータスに耐えられないんだよ。もう暫くは素手で戦う事になる」


「ローブは素手でも強い……ワタシも居るし、大丈夫……!」


 杖を両手で握りしめ、少し微笑むメシア。

 頭を掻いて視線を逸らし、ついでに目の前の現実に目を向けた。

 俺とメシアが2人で座っているのは、石造りの大扉がある小部屋。

 恐らく、これは……


「なあメシア、ここはもしかしなくてもダンジョンマスターの部屋だよな?」


 【盗む】の派生技の確認を終え、メシアが最後に行きたい場所があると言ってきた。

 そうして【転移魔法】で連れて来られたのが、ダンジョンマスターの部屋の手前だった……という状況である


「うん……折角だから、ゴーレムファクトリー……2人で攻略しちゃおうと思って……!」


 メシアからの予想外の提案に、俺は目を丸くして呆けてしまった。

 そんな俺の様子が面白いのか、メシアは楽しそうにクスリと笑う。

 確かに【盗む】が戦闘向きに強化された今の俺なら、ダンジョンマスターとの戦闘でも役に立てるかもしれない。

 でも、メシアは戦闘職の存在なんて邪魔だと言っていた……俺が中途半端に戦えるようになっても、逆に邪魔になってしまうんじゃないか?


「そりゃあ攻略できるならしたいけど……メシアは昨日攻略したんだし、退屈だろ?」


「全然大丈夫……ワタシはローブと一緒なら、楽しい……だから攻略、しよ?」


 そう言って小首を傾げて聞いてくるメシア、その可愛い仕草に俺は顔が熱くなってくる。

 幼馴染のこんな可愛い聞き方ズルい……断れるわけが無い。


「俺だって冒険者だ、ダンジョンマスターと戦ってみたい……メシア、一緒に戦ってくれるか?」


「勿論……! ワタシとローブなら、この程度のダンジョン……超よゆー……!」


 そう言って杖を高く振り上げ、無表情だけど楽しそうにしているメシア。

 この程度のダンジョンって、一応Aランクで難易度高い筈なんだけど……まあ、メシアだしな。


「それじゃ急だけど、パーティー組んで初めてのダンジョンマスター戦と行くか!」


「おー……!」


「それじゃあ作戦会議だな。メシア、魔力はまだ大丈夫か?」


「うん……まだ一割も使ってないよ……」


 そう言って余裕そうにピースするメシア。

 俺の記憶が正しければ、メシアはかなりの魔法を使っていたと思うんだけどな……

 流石は1000万人に1人の逸材、MPの量が桁違いだ。


「聞いて……ここのダンジョンマスターは、核を体内に内蔵したゴーレム……ワタシが倒したのは、アイアンゴーレムをもっと大きくしたのだった……姿は変わってるけど、核を内蔵したゴーレムなのは……変わらないと思う……」


「核はレアアイテムだし、直接触らないと【盗む】じゃ厳しい。他のゴーレムと違って、核を盗んではい終わりとはいかないか」


「逆に言えば……ダンジョンマスターの体を削って、核に触れば……【盗む】は通じる筈」


「成程な……となると俺は幾らステータスが高くなっても、素手の『盗賊』だからな。囮として時間を稼ぐから、攻撃はメシアに任せても良いか?」


「盗めるように手加減するから……逆に時間がかかる……大丈夫?」


「【盗む】にはまだ、面白い派生技があるんだ。だから囮は俺に任せて、思う存分手加減に集中してほしい」


「分かった……任せて……!」


 メシアが提案に頷いたのを確認し、ダンジョンマスターの部屋に通じる大扉に手をかける。

 重たい扉をゆっくりと開き、広い円形の部屋を見渡した。


 正面を見ても、右を見ても、左を見ても、ダンジョンマスターが居ない……となればっ!


「上かっ!?」

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