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魔術師の役に立つ盗賊

 俺とメシアがパーティーを組んだ翌日。

 メシアが早速行きたいダンジョンがあると言うので、街で準備をして向かった。

 ダンジョンの名前はゴーレムファクトリー。

 洞窟タイプのダンジョンで、名前の通り魔力で動く様々なゴーレムが出てくるダンジョンだ。


「ここがゴーレムファクトリー……」


「へぇ、初めて来たな」


 俺達は入り口である石の扉の前で立ち止まる。

 ゴーレムファクトリーを攻略する上で、適正な冒険者ランクはAランク。

 俺はソロだとFランクだから……正直来るべきじゃない。

 とは言えメシアは普通のSランクじゃないし、俺みたいな足手まといが増えた所で問題は無いだろう。


「じゃあ、早速……」


「待ってくれ、メシア。【索敵】範囲最大」


 早速入ろうとするメシアを引き止めて、『盗賊』スキルの1つ【索敵】を発動する。

 自分を中心に線がぐるりと回り、線に触れた生き物や宝の位置が分かるというスキルだ。

 だけど、この反応は……


「どうだった……?」


「何か初めての反応があった……生きてないのに、動いてる。多分、ゴーレム……だよな?」


「それがゴーレム……! 普通の職業が出来る魔力探知では……ゴーレムのような命無い敵や、【気配遮断】を使う魔物を、見破れない」


「そんな敵が居るのか……まあ、入り口の近くに敵は居なかった。引き止めて悪い」


「ううん、索敵は大事……ありがとう」


 石の扉を開き、ダンジョンの内部に潜入する。

 中は当然薄暗いので、持ってきていたランタンにメシアの【炎魔法】で火を点けてもらった。

 通路は広いし、天井は高い……多分、大型の魔物も居る。


「ローブ、固くなりすぎ……実はここ、もう1人で制覇しているダンジョン……」


「えっ、そうなのか? 確かに動いていないゴーレムとか、罠が全く無い通路があるな……」


「そんな事まで分かるの……?」


「【索敵】と【罠解除】の熟練度を上げると、【索敵】発動時に罠の位置も分かるようになるんだ。つまり罠が無い通路は誰かが通って発動し、新しいダンジョンマスターが設置し直してる途中って事だろ?」


 ダンジョンの最奥には、ダンジョンマスターという特別な魔物が存在している。

 その魔物がダンジョン内部の魔物や罠の配置を決めているのだ。

 ダンジョンマスターが倒されても、翌日には新たなダンジョンマスターが現れる。

 つまり罠が少ない通路があるのなら、そのダンジョンは誰かに攻略された直後と推測出来るわけだ。


「ここは、ワタシが昨日攻略したの……だから、ダンジョンマスターじゃなくて……攻略後も残っている――」


「魔物の素材か? 言ってくれれば【索敵】で判別も出来るぞ」


「なんて優秀な索敵、聞いた事ないよ……! じゃあ、ゴーレムも判別できる?」


「ああ、気配の感じが小、中、大って分かれてる。メシアなら心当たりがあるんじゃないか?」


「うん、小はウッドゴーレム……中はロックゴーレム……大はアイアンゴーレム……用が有るのはアイアンゴーレム」


「一番大きな気配だな、最短ルートで案内する。途中で罠が有る通路も通るだろうけど、スキルで解除するから信じてついてきてくれ」


「勿論……じゃあ、お願い」



 広く高い通路を全て塞ぐような黒鉄の巨人、アイアンゴーレム。

 見るだけで強敵と分かるその巨体が、膝をついた体勢で見事に凍り付いていた。

 ゴーレムはよっぽどの事情が無い限り、どんな冒険者でも戦う事を避ける。

 素材を落とさないし、そもそも倒す事が難しい……

 そんなゴーレムをこんな風に容易く無力化出来るのは、恐らくメシアくらいなものだろう


「凄いな、コレ……メシアがやったのか?」


「うん……倒すとなると、ちょっとだけ面倒だから……【氷魔法】で、やっちゃった」


 この氷が動かないゴーレムの居る原因か……倒すのが面倒って事は、倒す事も出来るんだろうな。

 メシアがアイアンゴーレムの包まれた氷に、杖の先を近付ける。

 小さな炎が灯されると、アイアンゴーレムが封じられた氷が少しずつ溶け始める。

 上半身が氷から出てくると目に黄色い光が灯り、氷から抜け出そうともがき始めた。


「はい、ローブ……【盗む】使って……」


「……氷をぶち破ってこないよな?」


「ワタシとゴーレム……どっちが速いと思う……?」


「信じるよ。俺は何を盗めば良い? メシアのおかげで欲しいアイテムが出るまで挑戦出来そうだ」


 自信満々なメシアを信じ、もがき続けるアイアンゴーレムの正面に立つ。

 【盗む】は成功率がそこまで高くないし、狙ったアイテムが手に入るとは限らない。

 だけどメシアがこうやって動きを封じてくれるのなら、狙った物を盗めるまで幾らでも挑戦する事が出来る。


「ゴーレムの核って盗める……? ゴーレムの心臓部分……ダンジョン内の魔力を取り込む為……むき出しの部分なんだけど……」


 メシアに言われてアイアンゴーレムを見てみると、確かに赤い輝きを放つ球体が胸のド真ん中に付いている。

 名前からしてレアアイテムだよな……数回で上手く盗めると良いんだけど……


「まあ、やってみるよ。行くぜ、【盗む】っ!」


 スキル発動と同時に、アイアンゴーレムの体に右手を触れさせる。

 次の瞬間には俺の右手に赤い輝きを放つ球体の宝石、もしかして1発で成功した……?


 ▼アイアンゴーレムから ゴーレムの核・大 を盗んだ


「……動かなくなった?」


 核を盗んだからか、アイアンゴーレムはもがく事を止めた。

 黄色い目の光を失い、静かに項垂(うなだ)れている。


「凄い……! ゴーレムの核は……かなり熟練度を上げた【盗む】じゃないと……取れないって本に書いてあった……流石、ローブ……!」


「そ、そうかな? メシアが動きを封じてくれたから、楽に盗めたよ」


「そう言ってもらえると、嬉しい……!」


 メシアとお互いを褒め合っていると、俺の体に変化が訪れる。

 体が白く光り輝き、光が弾けると共に頭の中に声が響く。


 ▼【盗む】の熟練度が 一定値に到達しました

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