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女騎士のご褒美を受ける盗賊

「もうお婿に行けない……!」


「メシア殿ならば貰ってくれると思うがな?」


 俺は結局シーリアス王女に服を脱がされ、一緒に水浴びをしている。

 水浴び場の縁に座り込み、俺は何も見ないように顔を手で覆った。

 俺の背後では楽しそうに水浴びをする、シーリアス王女の声が聞こえてくる。

 普通王女様って、結婚するまで肌は見せないとかじゃないの!?


「あのぉ……やっぱり、俺は先に出た方が……っ!?」


「そう嫌がらないでくれ、ローブ殿……これは自分なりの、お詫びなのだ」


「シ、シーリアス王女!? なんで俺に抱き着いて……!」


 背中に伝わる柔らかい感触、首に腕を回されて耳元で囁かれる。

 俺は今、どう考えても裸のシーリアス王女に抱き締められていた。

 よ、鎧で隠れていたけど大きな物をお持ちで……ってそんな事考えている場合じゃない!

 これがシーリアス王女の、お詫び……!?


「自分はローブ殿をぞんざいに扱ったというのに、命を懸けて自分を助けてくれた。【盗む】の事も隠しておきたかっただろうに、聞いただけで話してくれて……」


「デーモンの攻撃からメシアを庇ってくれたんですから、助けるのは当然です。それに【盗む】の事だって、いつかはシーリアス王女の耳に届いていた事でしょうし……」


「君はそうやって、自分を許してくれるっ! 自分は君が冒険者の男だという理由で、内面を見ずに嫌悪したというのに……どうして君は、そう優しくしてくれるのだ……!」


 背後からシーリアス王女の嗚咽が聞こえてきた。

 どうして俺が優しくできるのか、答えは最初から出ている。

 俺の首に回されたシーリアス王女の手に、俺は自分の手を重ねた。


「俺達、ちょっとだけ似ているんですよ」


「それは、どういう……?」


「俺とシーリアス王女は自分の大切な人の為に戦えて、ソルマのせいで嫌な目に遭って……いざって時には、命を懸けて他人を助けられる。だから俺は、シーリアス王女になんとなく優しいんだと思います」


「ローブ殿……そんな言い方、少しズルいぞ……」


 シーリアス王女の腕に、少しだけ力が入る。

 どうやら上手く元気付ける事が出来たらしい。


「『盗賊』は戦闘を避けたり、罠や鍵を無視したりとズルいものなんですよ」


「フフッ、そうか。君は本当にズルいよ……人生で最初に会う冒険者が、ローブ殿だったなら良かったというのに……ああ、ローブ殿」


「なんです?」


「もしも君が自分に優しくしてくれるのであれば……」


 シーリアス王女は小さく深呼吸し、決心したような声で続けた。


「ソルマから、自分を盗んでほしいよ……」


「シーリアス王女、それは……」


「なんてな、冗談さ。まず君にはメシア殿が――」


「随分と……面白い状況だね……?」


 シーリアス王女の言葉を遮ったのは、この場に居る筈の無い人の声だった。

 続いて翼を羽ばたかせる大きな音、上を見上げればブラックドラゴンが降りてきていた。

 もしかしなくてもこのブラックドラゴン……ハーティ、だよな?

 となると、今の声はメシア……!?


「おおっ、メシア殿っ! 迎えに来てくれたのだなっ!」


 シーリアス王女が俺の首から腕を離し、頭上のハーティに向けて大きく腕を振る。

 俺は冷静に状況を判断しなければならない。

 俺とシーリアス王女は2人で水浴びをしていた、つまり2人とも裸になっている。

 そして俺はシーリアス王女に後ろから抱き着かれていた……ああ、この状況は。


「あの、メシアさん? その、この状況は……」


「言い訳は後で聞く……ねえ、ローブ聞いて欲しい……」


「はい……!」


「ワタシ、凄く心配していたの……デーモンを片付けて、ハーティに急いで追ってもらって……でも、見つからなかった……本当はもっと探したかったけど、王様に報告に戻って……兵士さんと、必死に探したの……」


 ハーティから降りて、俺を見下ろしてくるメシア。

 その瞳に光は宿っておらず、俺の事をジッと見つめていた。


「すいません……!」


「やっと見つけたと思ったら……シーリアス王女と、楽しそうに水浴びしてる状況……最初は仲が悪かったのに、とても仲良くなってたね……」


「メ、メシア殿……これはどちらかと言えば自分が悪いのであって――」


「シーリアス王女は黙ってて……!」


「申し訳ないっ!」


 シーリアス王女が庇おうとしてくれたけど、メシアの圧力に耐え切れずに降参した。

 一瞬だけ逸れたメシアのプレッシャーが、再び俺に襲い掛かる。


「一緒に水浴びなんて、ズルい……! ローブは今度、ワタシとお風呂に入ってね……? じゃないと、許してあげないから……!」


「……本当に悪かったよ、メシア」


 やっと怖い表情をやめて、柔らかく微笑んでくれるメシア。

 そんなメシアに釣られて、俺も少しだけ口角が上がる。


「じゃあ、ローブ……ちょっとだけ、ハーティと離れていて……」


「分かった、服も着たいしな。ちょっと着替えたいから、2人とも目を塞いでくれるか」


 俺は水浴び場から出て、ハーティの炎で全身を乾かしてから着替える。

 さて、メシアの指示通りにさっさと離れるか。


「それじゃあ、シーリアス王女……少しだけ、お話しよ……?」


「あ、ああ……!」

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