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疲労させられた盗賊

 ベイマー森林を攻略し始め、世界樹にかなり近付いてきた。

 当然の事だがダンジョンは奥に行けば行く程魔物は強くなり、罠の質も向上する。

 多くのダンジョンマスターは、そのように魔物や罠を配置するものだ。

 だが、ベイマー森林はそうじゃない。


「ローブ、大丈夫……?」


「【索敵】範囲最大……チッ、やっぱりだ。【罠解除】高速解除、良し解除できた。ああ、メシア……普通のダンジョンと違って攻略中に罠や魔物の配置が変わっているけど、何とか対応出来てるよ」


 魔物や罠の配置を変更は、ダンジョンマスターが魔力を消費して行う。

 だからこそ冒険者との戦いを控えるダンジョンマスターは、基本的に攻略中に変更する事はしない。

 だがこのベイマー森林は違う、頻繁に魔物や罠の配置が変わる。

 その理由はダンジョンマスターの間にそびえ立つ、今回の目標である世界樹のせいだった。


「あの世界樹、近付いて分かったけど……凄い魔力を、蓄えてる。その魔力を、ダンジョンマスターが吸収してるんだ……」


「ああ。だからベイマー森林は、魔物や罠が幾らでも用意出来るって事だ。あの世界樹の根本に辿り着くまで、少しも気は抜けないぞ……!」


「ローブ、無理をしないで……ここからは、ワタシとハーティに任せて……少し休むと良い」


「そんな休んでる暇なんて……いや、そうだな。2人とも、10分くらい休んでも良いか?」


 『盗賊』の【索敵】と【罠解除】は、支援スキルという事で使い続けても負担は少ない。

 だが負担が無いわけじゃない。

 使い続ければ【索敵】は頭痛がしてくるし、【罠解除】は腕が痺れてくる。

 パーティーに『僧侶』が居れば気にしなくても良いのだけど、居ないのだから少し休んで治るのを待つしかない。


「ローブ、交代……ハーティの背中で、休んでて」


「悪い、先導できなくなるなんて盗賊失格だな……」


「そんな事無いよ……もうダンジョンを、半分くらい進んでる……ワタシ、半分も休ませてもらってる……充分だよ? ハーティも、居るんだしね……!」


「ハーティ、なるべくメシアを手伝ってあげてくれ。俺の事は気にしなくて良いから、思う存分暴れてほしい」


 メシアが降りられるように頭を下げたハーティが、了解と短く鳴いた。

 俺はメシアと交代でハーティの背中に乗り、息を吐きながら目を閉じる。

 もう無茶はしないって約束したからな、しっかり休んでおかないと。

 あの時頬に触れた雫を、もう出させないように……


「あっ、メシア。そこの道に落とし穴があるかも、杖で叩いて確認してみてほしい」


「【索敵】使ったの……? 休んでてって、言ったでしょ……?」


「違う違う、使ってないよ。何となくそっちに罠がある気がしたんだ」


「本当かなぁ……?」


 メシアは疑いながら、俺の指した道を杖で軽く叩いた。

 地面が一気に崩れ、ハーティですら落ちてしまいそうな大きな穴が開く。

 予想通り、正面に落とし穴が仕掛けられていた。


「やっぱりか、俺の勘ってのも捨てたもんじゃないな」


「ローブ、凄い……! ワタシだけだったら、引っかかって【転移魔法】使ってたよ……!」


「そんな罠如きに【転移魔法】なんて伝説級の魔法を使わないでくれ……」


 でもまさか、勘で罠の位置を当てられるようになっていたなんてな。

 『盗賊』として罠を解除し続けたから、何となく分かるようになっている。

 ダンジョンマスターが攻略中でも魔物や罠を追加してきて、【索敵】を使い続けるのキツイこの状況……罠の場所が勘で分かるのは、かなり役に立つ筈だ。


「それじゃ、改めて出発……ん? ハーティ、どうしたの……?」


 落とし穴を避けて進もうとするメシアを、ハーティが服の裾を口にくわえて引き止める。

 ハーティは何か伝えるように鳴きながら、道の先を頭で示した後に小さく首を振った。

 詳しい事は分からないけど、この道は駄目だって意思は伝わってくる。


「もしかして、この先に……魔物が居る?」


 メシアの問いかけに、ハーティは正解だと頷きながら鳴く。

 そしてスンスンと鼻を鳴らした後、斜め右の方を頭で示した。


「まさかハーティ、匂いで魔物の位置が分かるのか!」


 俺の言葉にハーティはその通りだと、嬉しそうに鳴き声をあげる。

 そうか、外のダンジョンならハーティが魔物の位置を教えてくれるのか。

 だとすれば【索敵】は罠や宝箱の位置を把握する為だけに使える。


「ローブとハーティ、凄い頼りになる……ワタシも、出来る事を頑張らないとね……!」


 そう言って再び杖を地面に落とすと、周囲の樹が一斉に燃え上がった。

 悲鳴を上げ、のた打ち回る炎上した樹……まさかメシアが燃やしたのは、トレント系の魔物?

 流石にハーティでも、嗅覚だけで擬態したトレントを見破るのは難しかったか。


「ハーティ、落ち込むなよ。今のは【索敵】じゃないと、普通見破れないからな? むしろ分かってたメシアが凄いんだぞ」


 倒れていくトレントを見て、ハーティが悲しそうに少しだけ鳴いた。

 いや、これはメシアが凄すぎる……なんでトレントの擬態を見破れるんだよ。

 俺の【索敵】必要ないんじゃ……いや周囲の魔物に気付くのと、遠くの魔物に気付けるのは大分違う筈だ。


「そうだよ、ハーティ……ワタシは戦闘しか、得意じゃないの……ローブのおかげで、余計な戦闘が減らせる……ハーティのおかげで、ワタシやローブが休める……出来る事を、やれれば充分だからね……」


 メシアが優しく微笑みながら、ハーティの事を励ましていた。

 俺に出来る事をやる為に、今は少しでも休まないと。

 俺達の力を合わせれば、絶対に攻略出来る筈だ……!

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