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魔術師の家に住む事になった盗賊

 無事にサウザンド・ブラックドラゴンから髭を2本受け取った俺達は、ブラックドラゴンであるハーティに乗せてもらって王国へと帰っている。

 なんとあのサウザンド・ブラックドラゴンは、ハーティの祖父だったらしい。

 俺達がサウザンドドラゴンを探しているのを聞いて、祖父に何か譲ってあげられるなら譲ってあげてくれと頼んでいたそうだ。

 何故俺達がハーティとサウザンド・ブラックドラゴンの関係を理解したのか、その理由は……


「まさかメシアが、ハーティの鳴き声を何となく翻訳できるとは思わなかったよ」


「そう……? 言いたい事、ちゃんと伝わるよ……そうやって感じた言葉を、ハーティに聞き直せば良いだけ……ローブも、出来るようになる」


「確かにハーティと意思疎通出来れば、出来る事も増えるだろうしな。その辺りはこれからゆっくりと慣れていくとするよ」


「うん……ハーティはもう、ワタシ達の仲間……外のダンジョンの時は、一緒に冒険しようね……?」


 メシアが背中を優しく撫でながら聞くと、ハーティは嬉しそうに鳴き声をあげた。

 多分、喜んで! って言ったんだろう。

 とにかくハーティのおかげで、サウザンドドラゴンの髭が簡単に手に入った。

 今日はご褒美に何か好きそうな食べ物を買ってあげよう、多分高級なお肉とかで良いだろう。


「さて王国に魔物を使役する手続きしてこなきゃな。時間がかかるだろうし、今日はメシアと酒場に行けそうにない。アムルンさんにもごめんって言っておいてくれ」


「むぅ、残念……そう言えばローブ、ハーティは何処で暮らすの……?」


「俺は今も安い宿屋を借りてるからなぁ……ハーティには悪いけど、小屋は借りずにその辺りの森か洞窟で過ごしてもらおうかなって」


 おっちゃんが支払ってくれたゴーレムの核・大の報酬で、金に余裕が無いわけじゃない。

 でも借りた小屋で窮屈に暮らすよりも、森とかで伸び伸びと過ごして貰った方がハーティも良いだろう。

 ダンジョンに付いてきて欲しい時に、声をかけて手伝ってもらえば良い。


「確か私有地でなら、魔物が居ても良いんだよね……?」


「ん? ああ、確かそうだったな。でもハーティが過ごせるような私有地って……大きな庭付きの屋敷とかだろ? そんな貴族の家みたいな大きな屋敷なんて、Sランクの冒険者でもなきゃ手に入らな……あっ」


 そうSランクの冒険者なら、手に入れていてもおかしくないんだ。

 そして隣に居るメシアは、都合の良い事に天才的な実力を持つSランクの冒険者。

 そう言えば俺とメシアって、酒場で集合して酒場で解散するから……住んでる場所知らないぞ。


「じゃあハーティには、ワタシの屋敷の庭に居てもらう……というかローブも、ワタシの家に住めば良い」


「なっ!? 何で俺まで誘うんだよ!? ハーティだけ住まわせてくれればそれで良いんだ」


「本当は、パーティーに誘った日から住んでもらうつもりだったけど……ローブとパーティーになれたのが嬉しくて、忘れていた……」


「俺は別に、今の宿でも……」


「宿だってタダじゃない、安い宿なら疲れも溜まる……パーティーなんだし、気にせずに使えば良い……ローブはワタシの事、嫌いなの……? だから、ワタシの家に来たくない……?」


 そう言いながら、メシアの目が潤み始める。

 そりゃあ今の宿はベッドは固くて臭いし、壁が薄くて隣の部屋のいびきとか聞こえてきた。

 虫やネズミは直ぐに出てくるし、部屋にコソ泥が侵入してくる事もある。

 本音を言えば、メシアの誘いは凄く魅力的だ。


「分かったよ、俺が悪かった。メシアの事は嫌ってないから……情けないけど、メシアの屋敷に俺も住まわせてほしい」


「うん、全然おっけー……!」


 目に溜まっていた涙がスッと引き、メシアはニヤリと笑いながら許可を出す。

 ウソ泣きだったなんて、すっかり騙されてしまったな……!

 まあメシアが俺を心配してくれたからこその提案だし、ここまでしてくれたのは正直ちょっと嬉しい。


「広い庭と、紫の屋根が目印だから……じゃあ先に帰ってるね?」


「紫の屋根だな。ハーティの使役申請が終わったら、直ぐに向かうよ。空から探せば直ぐに見つかるだろうし」


「うん、待ってるから……!」


 そう言ってメシアは【転移魔法】で、ハーティの背中から姿を消した。

 俺達はゆっくりと王国に戻り、街の入り口で降りる。

 ハーティの口を鎖で縛り、門番に事情を説明して王国の中に入った。

 真っ直ぐと城に進んで数十分程でハーティの使役許可が下りる。


「これでハーティと街で暮らせるな、これからよろしく頼む」


 城から出てハーティに声をかけると、甘えたような鳴き声を出しながら頭を擦り付けてきた。

 俺が泊まっていた宿屋から荷物を回収し、ハーティの背中に乗って上空からメシアの屋敷を探す。

 広い庭と紫の屋根、特徴と一致している建物は直ぐに見つかったのでハーティに向かってもらったのだが……


「デカいな、今日からここに住むのか……」


 ハーティから降り、改めて屋敷を見て……俺はその大きさに呆れてしまう。

 多分、本当に貴族の屋敷だったんだろうな。

 なんか、やっぱ断れば良かったかも……


「ローブ、待ってたよ……!」


「あっ、ああ……世話になるよ、メシア」


 玄関からメシアが出てきて、屋敷を間違えていたという僅かな可能性も打ち砕かれる。

 まあでも、メシアとハーティが嬉しそうだからこれで良いか。

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