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1つ目の素材を手に入れた盗賊

 メタリックスライムに気付かれないギリギリの距離まで近付く。

 メシアと顔を見合わせ、静かにうなずき合った。

 そして次の瞬間、俺はメタリックスライムの方へ、全速力で駆け出す。


「逃がさない……!」


 突然襲い掛かってきた俺を見て、メタリックスライムはビクリと体を震わせた。

 メタリックスライムは物凄い勢いで背後に逃げようとするが、地面が競り上がり巨大な壁を形成する。

 そのまま左右にも壁が出来上がり、メタリックスライムは3方向の逃げ道を封じられた。

 残りの道は俺達が居る正面と、もう1つ……


「上も、駄目……!」


 体を真上に伸ばし、壁の上を突破しようとするメタリックスライム。

 しかしメシアが素早く天井を塞ぎ、最後に俺達の背後にも壁が出来上がった。

 おっちゃんに聞いていた事だが、メタリックスライムは臆病な上に足が速いので逃げられやすい。

 なのでメシアの土魔法で壁を作り、逃げられない状況に持ち込んだ。


「やってやる、【盗む】敵意を盗む(ヘイトスティール)!」


 右手をメタリックスライムに伸ばし、見えない敵意を自分に手繰り寄せる。

 メシアと俺へ均等に向けられた敵意が1つになって、こちらに向いた筈だ。

 メタリックスライムが体を伸ばし、俺を薙ぎ払おうと素早く振るってくる。

 充分に受け止められると判断し、両腕を交差させて防御の姿勢を取ったのだが……


「ローブ、危ない……!」


 後ろからメシアの声が聞こえ、目の前から急に暴風が発生して吹き飛ばされる。

 メタリックスライムの一撃が前髪に触れ、数本がパラりと散っていった。

 コイツ、金属の体を武器に変形させて攻撃してくる……!

 メシアが助けてくれなかったら、俺は今頃……いいや、今は切り替えて集中しろ。


「メシア、とにかく熱だ! 最大火力でドロドロに溶かして、動きを封じちまおう!」


「分かった……!」


 メタリックスライムを回り込むように移動し、メシアの射線を開ける。

 俺の動きに対応し、グネグネと体を(うごめ)かすメタリックスライム。

 頭めがけて超高速で突き出された一撃を、見切って紙一重で避ける。

 そして俺はその伸びきった体の一部分を掴み、派生技を宣言した。


能力値を盗む(ステータススティール)、その素早さをいただくぞ!」


 ▼メタリックスライムの MPとVITとAGIとINTとMND がローブに加算された


「もういっちょ! スキルを盗む(スキルスティール)!」


 ▼メタリックスライムから 【逃走】 【物理耐性】 【属性耐性】 【状態異常耐性】 を盗んだ


「ローブ、行くよ……!」


「ああっ、思いっきり頼む!」


 メシアの準備が完了し、俺はメタリックスライムからバックステップで大きく距離を取る。

 動きの速さに関するAGIを盗まれたメタリックスライムは、伸ばした体をもたもたと引き寄せようとしていた。

 次の瞬間、メタリックスライムが一気に青い炎に呑み込まれる。

 メシアの【炎魔法】、凄く綺麗だ……って見入ってる場合じゃない。


「良し、メシア! 俺の右腕を凍らせてくれ!」


「えっ……いや、分かったよ……!」


 メシアの杖が俺に向けられると、右腕が急速に凍り付いていく。

 青い炎を受けても、メタリックスライムは倒しきれていなかった。

 しかし楕円(だえん)だった体は崩れかけ、地面にへばりついている。

 俺はそんなメタリックスライムの体に、凍り付いた右腕を躊躇なく突っ込んだ。


「うっ、ぐぅ……!」


「ローブ、何をしているの……!?」


 右腕に纏わり付かせた氷が、一気に音を立てて溶けていく。

 焼かれていく痛みに顔を歪めながら、俺はメタリックスライムの中身をかき回した。

 重い泥の中にブヨブヨとした何かに触れ、ソレをしっかりと掴む。


「【盗む】接触優先ッ!」


 ▼メタリックスライムから メタリックスライムの核 を盗んだ


 叫びながら腕を一気に引き抜くと、黒い球体を手に持っていた。

 核を抜き取られたメタリックスライムは完全に崩れ落ち、完全な液体となって地面に広がっていく。

 額に脂汗が(にじ)み、今にも倒れそうになるのを何とか踏み止まった。


「ローブ……ッ!」


 メシアが直ぐに駆け寄り、俺の右腕を【氷魔法】の応用で冷やしていく。

 戦闘が終わった安心感からか、気合で抑え込んでいた眩暈(めまい)や気持ち悪さが一気に襲い掛かってきた。


「メシア、悪い……」


「ローブ? ローブッ……!」


 力が抜けて膝から崩れ落ち、視界が暗くなっていく。

 幾ら早く終わらせる為とはいえ、熱したメタリックスライムに腕を突っ込むのはやり過ぎだったかな。

 メシアの呼びかける声を聴きながら、俺の意識が遠退とおのいていく。

 完全に意識が途切れる直前、俺の頬に何か雫が当たった気がした。

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