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火山に来た魔術師と盗賊

 おっちゃんの言っていた希少な素材を集める為に、メルボール火山という名前の山を訪れていた。

 ここで出会える液体金属のモンスター、メタリックスライム。

 ソイツの核を入手すれば、直ぐに帰ってきて良いらしい。

 という事で、早速火山を登り始めたんだが……


「暑いっ! 前のパーティーと来た火山は、ここまで酷い暑さじゃなかったぞ!?」


 別の火山に行った時は、暑さを緩和する魔法薬を飲めば充分に活動出来た。

 勿論今回も魔法薬を飲んでいるが、全く効力を感じない。

 暑いと集中力が削られ、咄嗟の判断力が鈍ってしまう。


「ごめん、ローブ……また、休憩……」


「仕方ないだろ、気にすんなよ。【索敵】範囲最大……良し、周囲に魔物の気配は無さそうだ。少し休めると思うぞ」


「うん、ありがとう……ハァ、ハァ……キツい……」


 この尋常ではない暑さの中、メシアは杖を突いて何とか歩いていた。

 『盗賊』で軽装な俺と違い、『魔術師』らしい暑苦しそうな恰好をしているメシア。

 【氷魔法】の応用で周囲を冷やし、何とか呼吸を整えている。

 火山に居ても涼しく感じられるような状況を作り出せるのは流石だが、この暑さの緩和はかなり魔力を消費する筈。

 だからメシアは、【氷魔法】を休憩の時にしか使わないんだろうな。

 周囲の安全を【索敵】で確認し、俺達はその場に座り込む。


「ごめ、んね……ワタシが、足引っ張ってる……」


「良いんだよ、メシアは凄いけど何でも出来るってわけじゃない。せめて背負ってやれればとか思ったけど、逆効果だろうしな……」


「むぅ……それは、残念……」


「こうやっていつまでも、無駄な魔力消費してもらうわけにはいかないし……せめて、メシアの暑さを肩代わり出来ればなぁ」


「アハハ……そんな、都合の良い方法……あるわけないよ……」


「……いや、あるかもしれない」


 【盗む】の派生技の1つ、敵意を盗む(ヘイトスティール)は味方に向けられた敵意を強制的に自分に向ける。

 それって言い換えれば、俺が肩代わりしているって事になるんじゃないか?

 そう考えると、メシアの暑さを肩代わり出来る派生技と言うと……アレだな。


「メシア、手を出してくれ」


「うん……」


「【盗む】被害を盗む(ダメージスティール)


 メシアが伸ばした手に自分の手を合わせ、派生技を宣言する。

 これは本来、味方が受けた痛みや傷を自分に移すという変わった派生技だ。

 そして俺の予想通り、メシアの感じていたであろう暑さが俺に襲い掛かってくる。

 メシアの【氷魔法】で冷やした範囲に居るのに、大量の大きな汗が流れ出した。


「ローブ、凄い汗……! 何をしたの……?」


「ハァ、メシアの感じている暑さを、俺が肩代わりしたんだ……冗談で言ったつもりだけど、本当に出来たみたいだな……ハァ、ハァ……」


「確かに、凄い楽になったけど……ローブが、辛いんじゃ……?」


「それで、良いんだよ。能力値(ステータス)が高くなったから、勘違いしそうになるけど……ハァ、俺の仕事は、パーティーの冒険を楽にさせる事だ。だから……メシアが楽に探索出来れば、それで良い」


 能力値(ステータス)はかなり増えた、スキルはこれからも増えていく。

 出来る事が多くなるからこそ、自分の求められた役割を揺らがせてはいけない。

 俺は『盗賊』で、パーティーの危険を減らすのが仕事なんだ。


「ローブ……」


「それに……メシアが無事なら、いつでも【転移魔法】で撤退できる。その判断は、【転移魔法】を使うメシアの方が良いだろ……?」


「分かった……ごめんね、ローブ……」


「大丈夫だ、メタリックスライムの核を手に入れるまで……肩代わりしてみせる」


 とは言ってみたけれど、既に頭がボーっとしてきた。

 気を抜けば体がフラフラ揺れそうだし、吐き気も感じる。

 でも、まだ大丈夫……何とか動けそうだ。


「それじゃあ、もう少し休んで……探しに行こう……!」


「分かった、それじゃあもう一度。【索敵】範囲最大」


 再び【索敵】を発動し、俺を中心に線がぐるりと回る。

 生き物や宝物が遠くで線に触れていく中、1体の魔物が俺達の近くで引っかかった。

 スライム系の反応……これはもしかしなくても!


「メシア、近くにメタリックスライムが居るぞ……今すぐ行こう」


 そう言ってメタリックスライムの居る場所に向かう為に、急いで立ち上がろうとして……


「っ!?」


 目が眩み、倒れそうになってしまう。

 それでも何とか堪えて、ゆっくりと立ち上がった。

 そんな危なっかしい俺を、メシアは不安そうに見上げている。


「ローブ、無理しないで……ゆっくり行こう……?」


「悪いな」


 メシアとゆっくり、メタリックスライムの反応があった方へ歩きだす。

 暫く歩いていくと、遠くに銀色の輝きが見えてきた。

 金属の見た目なのに、グネグネと動いて形が無い……アレがメタリックスライムか。

 普通のスライムは半透明で核が見えるのに、メタリックスライムは核が見えない。


「ローブ……任せて……ワタシが、倒す……!」


「出来る事があるなら手伝う、頑張ろうぜ……!」


「うん……!」


 メシアが静かに杖を構え、俺は小さく息を整えた。

 メタリックスライムの核、絶対に手に入れてみせる!

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