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しょうもない日々  作者: おとーむ
1/3

1.明鏡止水

ぽちゃん・・・ぽちゃん・・・。



少しほこりっぽい、薄暗い部屋で私は目覚めた。


スマホを確認すると、朝の7時前だった。


目覚めたばかりの私の意識はぼんやりとしていて、起きあがるにはまだ時間が必要だった。


幸い、スマホのアラームが鳴るには、まだ少し時間がある。



ぽちゃん・・・ぽちゃん・・・。



風呂場の方から水滴の音が聞こえる。昨日風呂を出る時、蛇口をしっかり閉めていなかったのだろうか。


規則的なリズムで聞こえるその音を聞いていると、朧気な意識が、また夢の世界へと旅立ってしまうのではないかと思える。


流石に二度寝はまずい。


そう思ったが、起き上がろうにも体が言うことを聞かない。


体を起き上がらせるには、もっと意識がはっきりしないといけないようだ。



ぽちゃん・・・ぽちゃん・・・。



気だるげな意識の中で水滴の音を聞いていると、私はある言葉を思い出していた。



・・・・・・




明鏡止水。




私がその言葉を知ったのは、アニメ「機動武道伝Gガンダム」である。


主人公・ドモンが師匠との戦いの中で、生と死の狭間で会得した奥義のようなものである。


それまで劣勢だったドモンが明鏡止水を発動した途端に師匠をぼこぼこにするのだ。


ドモンを応援する視聴者がカタルシスを味わう瞬間だ。


その明鏡止水が発動する際の描写が、水の一滴ひとしずくが、ぽちゃん・・・と水面に落ちるのだ。


アニメを見た当時は、自分も明鏡止水に憧れて、水溜りに水滴が落ちるたびに「あ、明鏡止水だ」などと思っていたりした。


そんな私も、水の一滴ひとしずくを経験する機会があった。



ある日、私は腹痛でトイレに駆け込んだ。


ズボンとパンツを下ろし、便座に座った時には、腹痛の中ながら、「お漏らし」という最悪の状況を回避できたことに安堵した。


あとは出すものを出すだけである。


「いっちょぶっ放すか」と力むが、しかしなかなか出ない。


「ふん・・・!」と踏ん張り続けたが、変化はない。


どうやら、固い便が栓をしているようだ。


だが、出口が通行止めになっているからといって、「はい、わかりました」ということにはならず、相変わらず腹痛は続いている。


出さなければ終わらないのだ。


私は目一杯に出口を広げ、塞いでいるものが出口を通りぬけるイメージと共に、徐々に力を加えていった。


その時である。



ぽちゃん・・・。



一滴(ひとしずく)が、便器の水面に落ちた。


真っ赤な一滴(ひとしずく)だった。


血のように赤い。というか、血だった。


あまりの力に、穴が割けたのだった。


が、その時、穴を塞いでいた便が動いた。


動かざること山のごとし。と言わんばかりの便が動いたのだ。


この機を逃すわけにはいかない、とばかりに私は最後の力を振り絞った・・・。



・・・機動武道伝Gガンダムでは、明鏡止水を会得後、最終回ではドモンがレイン(ヒロイン)と共に、石破ラブラブ天驚拳(合体必殺技)を放ち、ラスボスを撃破してヒートエンド(試合終了的なもの)した。



そして、私はというと、コーモン(肛門)レイン(血の雨)と共に、石破ブリブリ天驚拳(怒涛の下痢便)を放ち、ラスボス(固い便)を撃破してヒートエンド(尻がヒリヒリ)した。



全てが終わった後の私は、(主に尻が)満身創痍の状態ではあったが、その心は、水を流した後の便器の水面のごとく澄み渡っていた。


これが私の明鏡止水である。




・・・・・・



♪~♪。


私の意識は、7時にセットされていたスマホのアラームによって戻された。


もう起きねばならない。


私は風呂場の蛇口を閉めるために、体を起こすのだった。

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