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1 聖女判定おかしいんじゃない?

 私は人と違っている。

 小さいときから、そう思っていた。


 お父さんは朝早くから出かける冴えないサラリーマン。

 お母さんはスーパーのレジ打ち係のおばさん。

 そして私、メガネをかけた根暗な高校二年生。


 だけど、それは仮の姿だと思っていた。

 お父さんもお母さんも私には言わないけど、私は本当の子じゃない。

 ある雪の日に、私は拾われた。

 綺麗な布に包まれ、籠の中に入っていたに違いない。



 私は眼鏡をかけて地味を装っているけど、本当は特別な女の子。


 いつか、誰かが迎えにくるはずなの。





「おい!」

「何?」


 いつものように筋肉だるまが、私を呼び止めた。


「そこは聖女様の聖域だ。お前が入ったらだめだ」

「なによ、清さんだっていいって言ってたでしょ?」

「キヨシさん?またその呼び方か。聖女様と呼べ」



 二週間前。

 そう、私は確かに迎えにきてもらった。

 いや、正確に言うなら、この世界に召喚してもらった。

 神の信託により、別の世界から呼ばれる聖女。 

それは私のはずだった。


 だけど聖女として召喚されたのは、二人。

 そして、私は違うと言われた。

 

 なんで?

 理由は先代の聖女に彼女がよく似て美しかったってこと。

 それだけ。

 

 それだけなのよ。


 そんなのあり?

 そんなバカな理由で聖女を決めていいの?


 色々文句をつけたけど、決定は覆らず、私は聖女じゃないと言われた。

 ケチをつけたお咎めもなく、とりあえず、誤って連れてきてしまったからとかで、丁重な扱いはされている。

 問題は、この男が張り付いてること。

 監視役として、常にこの男が私に張り付いている。


 この男。

 中性的に美しいとか、そういうタイプじゃない。

 単細胞、肉体労働のむちむち派で、目つきも悪い。

 

 聖女を守る騎士達とは大違いだ。

 

 一応彼も騎士らしいけどね。



「あのさあ。なんで、私が聖女じゃないって決めつけるの?選ばれた理由が先代に似て美しいからとか。差別じゃん。あの子がなんか力あるの?見せた?そりゃ、私も何も見せてないわよ。でも顔だけで決めるのおかしくない?」

「またその話か?お前、バカだろ?先代聖女のあのお美しい顔によく似たスズ様だ。

スズ様が聖女様に決まっているだろうが。往生際が悪すぎる。というか、無謀だ。死にたいのか」

「死にたくないわよ。あーむかつく。わかってるわよ。っていうか、お美しい顔って。リキは先代聖女のことが好きなんだね」

「す、好き!なんてことを言うんだ。お前は」

「お前、お前って。馴れ馴れしい。私が聖女だったら、無礼者とか言って、謝らせてやるのに」

「聖女だったらって。まったく。本当に往生際が悪い。だったらお前っていうのはやめるよ。ユキ」


 名を呼ばれた。


「どうした?」


 くうう。

 筋肉だるまに名前を呼ばれてどきっとしてしまった。

 不覚。


「おお?ユキ。素直だな」

 

 また呼ばれた。

 私は真っ赤になった顔を見られたくなくて、足早に部屋に戻ることにした。



  ☆

 

 私、仲田なかたゆきと、聖女に選ばれたあの子、きよしすずがこの世界に召喚されたのは、二週間前。


 学校から家に戻る途中、学年一の美少女の清さんに名を呼ばれた。そしてドンと衝撃があって、この世界へ。

 よくあるトラックに轢かれ転生、あ、転生じゃないか。転移なんだけど、死んでないから多分トラックには轢かれてないかな。

 どういう状態でこの世界に来たかは、清さんもわからないって言ってたし、私たちを呼んだ老人たちもわからないって言っていた。

 「間違って」呼ばれた私はお荷物みたいで、私を返す方法を模索しているらしいけど。


 正直、聖女になりたかった。

 いや、聖女だと思った。

 だって、私は特別な存在のはずだった。

 元の世界では地味だったし、馴染めなかった。

だけど清さんみたいに美人じゃない。だから、私が聖女なんて絶対にありえないと誰もかれもが思っているみたいだ。

 だけど、清さんは聖女になりたくないって、元の世界に戻りたいって言っている。だったら、私が聖女になったほうがいいと思うの。

 私は元の世界に未練なんてまったくないのに。

 

 ああ、なんで私が聖女じゃないんだろう。

 


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