98. セルフジャッジメント
前回のあらすじ!
愛の試練を突破したラスターさん!
さてお次は~?
そして続いてやって参りましたのは、以前ウリたんがお世話になった病院ですね。試練も気付けばもう残り3つですよ!
「キャンサーさん、たのもー!」
「お、来たね。それじゃあ始めようか」
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試練空間
ラスターは星空の下の草原に立っていた。見たことのある景色、忘れられない、忘れられるはずがない、忘れてはいけない景色。
「うひょー、満天の星!」
「……風の匂いまで、あの時のままだ」
「えっ?」
遠目に見えるのは、兄妹らしき二人の少年少女。ラスターは彼らを、誰よりもよく知っている。
「ここは、君の心に最も深い傷を残した人間が存在する景色」
背後からの声に振り返ると、白衣を着た男がそこにいた。
「……あなたは?」
「裁きの神・ジャッザー。試練の内容はこう、“君が最も憎む人間を、君自身で裁け”」
最も憎む者。当然、妹を奪い、世界を恐怖に陥れた魔王は憎い、憎いが、それ以上にこの時のラスターは──
「……あの少年を、裁けと?」
何もできず、まんまと魔王の罠に嵌った自分が、未だに許せずにいた。裁きの神は厳かにうなずいた。
「君が納得して出した答えなら、どのような量刑でも、合格を与えよう。……じっくり考えたまえ」
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シザークラフト医院
「ラスター君はきっと、まだ自分を許せずにいる……」
シザー先生は言いました。これはきっと、聖剣事件の話ですね。
「近頃はチギリちゃんのお蔭で少し前向きになってきたけど」
「私ですか? えへへ、それほどでも……」
そんなことを言われたら照れますね。シザー先生は少し目を伏せました。
「……後悔してるんだ、償いなんて言ってしまったこと」
償い? ああ、ラスターさんが償う方法は戦い続けること云々って言ったことですね。でもそれでラスターさんは勇者続けることになったんですし。
「勇者はラスター君しかいないと思っていた。……だから彼の責任感に付け込むようなことを……」
「そうですかね?」
確かにラスターさんは責任感が強いですけど、やらなきゃいけないから無理矢理やってるかと言われたら、そうではない気がします。
「サジータさんが言ってましたよ、世のため人のためならラッさんは立ち止まるってことを知らない……って」
「彼女がそんなことを?」
「はい。だから多分、シザー先生が言わなくても、ラッさんは戦うことをやめなかったと思います」
ラスターさんの無鉄砲が筋金入りなのは、お父さんのお話からも確認済みですし。
「ラッさんは、目の前で人が苦しんでるのに何もできない方が嫌だと思います。だからきっと、シザー先生が言ってくれて安心したんじゃないですか? 戦ってくれ、って」
戦ってくれ、って言ったんですっけ? まあ、細かい話はこの際どっちでもいいです。
「ですので、シザー先生も自分のこと許してあげて下さいね!」
「…………良い子だね、君は」
シザー先生は穏やかに微笑みました。
「戦うことは彼の望み、か……そうだといいな。こっちも支え甲斐がある」
「きっとそうですよ!」
「うん。……彼も、許せるといいね」
「ん?」
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試練空間
ラスターは悩んでいた。過去の自分への量刑、容易く決断できるはずはない。スコッピは心配そうに見つめていた。
「エグい試練だなぁ……折れんなよ、ラスター……」
彼の罪、妹一人のために世界を切り捨てたこと、平和を願う人々に思いが詰まった剣を折ったこと。それを償うにはどうすればいい?
「……一つしか知らない」
ラスターは決断した。裁きの神のほうに向き直る。
「結論は出たかい?」
「はい。俺は──」
大きく息を吸い込み、裁きの神をまっすぐに見つめる。
「彼を、許します」
「……理由を聞こうか?」
裁きの神も、厳しい瞳でラスターを見つめ返す。
「彼の罪の償い方は、一つしかない」
「ではなぜそれを罰にしない?」
「彼にとっては、罰にならないから」
償う方法は戦い続けることしか、戦って世界を守り続けることしかないのだ。辞めることは、逃げでしかない。
「世界のために戦い続けることは、彼の望みだから。だから許します、勇者として戦い続けることを」
「本当に望んでいるのかい? 茨の道だよ?」
「世界のどこかで誰かが苦しんでいるのに、自分だけがのうのうと生きている方が、俺は嫌です。俺に救える苦しみなら、なおさら」
裁きの神はラスターの言葉を反芻する。勇者の高潔な言葉に、彼は思わず笑みがこぼれた。
「……いいね、合格だよ」
ラスターは自分を許したことで、晴れやかな気持ちになった。贖罪ではなく希望として──ラスターに新たな道が開けた。
裁きの試練、突破!(10/12)
続く!




