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93. 友情アップデート

前回のあらすじ!

奇跡の試練を突破したラスターさん!

さてお次は~?

さあ、次の試練です、どんどん行きましょう! ……と、言いたいところなんですが、私、次のところにはあまり行きたくないんです。


悪い人ではないですよ? ないんですけど、やはり初対面の時のトラウマが少し。


 「よーし、着いたよー」


ああ、着いてしまいました。海の見える丘にそびえたつ立派な邸宅。あの人の、家です。


 「ラスターくん~、ようこそいらっしゃいました~」


ピスケスさんです。あのピスケスさんです、小さい女の子が大好きなことでおなじみのあの。


 「準備万端ですよ~頑張ってくださいね~」


ラスターさん、こっちはこっちで不安ですよ。



────────────



試練空間


 「来ましたね~私は進化の神・ツリーズです」


ラスターはその女神に顔をしかめた。十二神がいくら彼女らの祖先とはいえ、喋り方まで似すぎではないだろうか、と。


 「それでは、進化の試練、行ってみましょ~」

 「ラスター、そんな顔しないの! ……ぅえぇっ!?」


ラスターは、驚くなかれ、ラスターは魚の姿になっていた。


 「何だこれ!? み、水……!」

 「ひー! そこに海があるぞ!」


ラスターはピチピチ跳ねながら海へ飛び込む。ツリーズはニコニコしながら様子を見ている。


 「これからあなたには、脊椎動物の進化を追体験してもらいます~ただ生きていればいいだけですから楽チンですね~」

 「ホントですか!? ホントに楽ですか、それ!?」



────────────



ピスケス邸


 「ピスケスさん……」

 「どうしましたか~?」


ピスケスさんの隣にはやはり、メイド服の女の子が控えています。相変わらず侍らせているようですね。ていうかあの子半径1m以内にいますけど、電流は大丈夫なんでしょうか。


 「電流(のろい)の方は……?」

 「え~? まだ残ってますよ~?」


ですよね、私から不自然に距離を取っていますし。しかしワケを尋ねても、笑って誤魔化すばかりで、核心的なことは何も教えてくれません。


 「まあ、いいですけど……」


ピスケスさんにもラスターさんのお話を聞いてみましょう。そういえば、ピスケスさんは、ラスターさんが勇者を続けることに唯一反対したんですよね。そのあたりも詳しく聞いてみたいです。


 「深い理由ですか? 特には~十二神官として客観的に? 判断したまでです~」


そ、そんな……ピスケスさんにもラスターさんへの熱い思いがあると思ったのに、単なる機械的な判断だったなんて……


と、思っていると、私の隣に座っていたボマードさんが耳打ちしてくれました


 「ピスケスさんはああ言っていますが本当は……」

 「ちょっと~、やめて下さい!」


ピスケスさんがボマードさんの口を塞ぎに来たその時、(幼女)の半径1m、電流の発動条件を満たしました。


 「うぅ~……がくっ」

 「ピスケスさん!?」

 「あーあ、倒れちゃいました……」


倒れたピスケスさんは、メイドの女の子が引き摺って連れて行きました。どうしてあれは平気なのでしょうか?


 「だ、大丈夫なのでしょうか……」

 「ピスケスさんは慣れてますから。それより、さっきの続きを聞かせて下さい!」


ピスケスさんからは本音を引き出せそうもないので、もう観念して、ボマードさんから伝聞することにします。心開いてくれてないんですかね……


 「ラスター殿が勇者を続けることに反対した……と言うのは事実ですが、ラスター殿の元々の申し出は何であったか、思い返してみてください」

 「元々の? ……あっ!」


そうでした、ラスターさんは聖剣を折ってしまった責任を取るために勇者をやめようとしたんでした!


 「ということは、ピスケスさんはラッさんの意思を尊重して?」

 「それもあるでしょうが、会議の場ではこうも(おっしゃ)っていました」


 『どうして優しい彼がこんなに傷つけられるんですか? 勇者だから? こんな大事な時に私情を挟むのは、十二神官として失格かもしれません。でも言わせてください。……友達が傷つくのを、これ以上見たくないです』


 「……ピスケスさんは、涙ぐんでおられました」


語尾が伸びていないです! それに、「客観的な判断」がどうとか言っていたのに、思いっ切り私情を挟んでいますし、そして何より、ラスターさんのことを「友達」と言いました!


 「ピスケスさんは、ラッさんがこれ以上苦しまなくていいように……」

 「……はい。しかしラスター殿をおいて代わりはいない……辛くとも、歩んでもらうしかなかったのです」


確かに、勇者になっていなければ、ラスターさんは今頃家族で幸せに暮らしていたのかもしれません。ですがやはり、ラスターさん以外の人が勇者なんて考えられません。


 「そしてラスター殿は……むしろピスケスさんの言葉に傷ついておりました」

 「えっ? うーん……まあ、そうですか」


ラスターさん、あれでいて繊細な一面ありますからね、優しくされた方が余計に傷つくのは、なんか分かる気がします。


 『俺が弱いばかりに、友人にあんな顔をさせてしまいました……』


言いそう! そこからどうやって勇者を続けることに?


 『……責任の取り方は一つしかない。やめることではなく、君がもっと強くなることだ』


 「シザークラフト殿のその言葉もあって、ラスター殿は勇者を続けることを決意なされました」


シザー先生もつらい役回りです。そうやって責任感の塊でハチャメチャに強い、今のラスターさんが出来上がっていったわけですね。


 「それで……ピスケスさんは納得したんですか?」

 「それは本人に聞いてみないことには……」



────────────



試練空間


 「そ~れ、人類の進化~」

 「おぉ、ラスターに戻ったぁ!」


長い長い、進化の試練が終わった。魚類から両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類への進化を経験したラスターは「生命の底力」というものを痛感した。


 「……“ただ生きる”って、すげぇことなんだな」

 「そうですよ~でも、だからこそ進化してきたのかもしれませんね。合格ですよ」

 「“進化”……か」



進化の試練、突破!(5/12)


続く!


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