86. デイライトの子は陽光となる
前回のあらすじ!
父アリエスさんと向き合う覚悟を決めたウールさん。
しかしそんなときに、モコさんがワイバーンにさらわれて……タイミング!!
大変なことになりました! 早くモコさんを助けないと! この辺で一番高いところ、あの見晴らしの良い丘へ!
「ラッさん、あそこ! 飛んで逃げてます!」
姿が小さくなっています。ですがラスターさんなら、竜影術でちゃちゃっと飛べば楽勝で追いつきます!
「ラッさん? 何ボーっとしてるんですか? 早く!」
「ラスターさん! 早くモコを助けてくれよ!」
どうしてしまったんでしょう? いつもなら間髪入れずに飛び出していくのに。
「ラスター殿……」
「待ちな」
説得しようとするボマードさんを、アリエスさんが制します。アリエスさんはラスターさんの考えが分かっているのですか?
「ウール、それはお前の頼みか?」
「え? そうだよ、早くモコを……」
「それじゃあ、お前は誰だ?」
今更何を聞いているんでしょう。アリエスさんの息子さんのウールさんじゃないですか。
ウールさんは、ラスターさんの両眼をしっかり見据えて答えました。
「僕はウール=デイライトだ! 十二神官アリエス=デイライトの跡を継ぐ男だ!」
答えを聞いたラスターさんは、口角を少し上げました。アリエスさんに至っては目頭を押さえています。
「……ま、そいつの頼みなら、聞いてやるよ。ドラゴン!」
竜装したラスターさん、ワイバーンを追いかけて飛び立ちます! なるほど、ウールさんの本気の思いが聞けるのを待っていたんですね!
「粋ですねぇ、ラッさん! いけ、いっけー!」
小さくてよく見えませんが、ワイバーンさんが空中でじたばたしているようです。ラスターさんの攻撃をよけようとするも、かわしきれずにもがいている、ってところですかね。
「かっけぇなぁ、大人って」
「……? ウールさんも大人じゃないですか」
「なれるといいな……」
そうこうしている内に、ラスターさんがモコさんを抱えて帰ってきました。やっぱり強いですねぇ……
「ほら、頼みは聞いてやったぞ」
「モコ!」
丘の上に降ろされたモコさん。ウールさんが半泣きになりながら駆け寄ります。
「怪我は?」
「……ないよ」
「何でこんな所に……危ないだろ」
モコさんは気まずそうに目を逸らします。
「描こうと思ってさ、ここの景色。君、好きでしょ?」
「あ、うん……」
「最近元気なかったし。ま、結果的に心配かけちゃって……」
ウールさん! モコさんを力強く抱きしめました。そこにはもう、自信をなくして膝を抱えていたウールさんの姿はありません。
「ホントにありがとう……大好きなんだ、この街も、モコのことも……」
「あ、えぇえっ!? ちょっと、からかわないでよ……」
これにはさすがのモコさんも赤面です。いいですよね、弟みたいに扱ってた年下男子に迫られて困惑するお姉さん。
「おいおい、我が息子ながらいい男だなぁ! 君もそう思うだろ!」
「あ、はぁ……そうですな」
アリエスさんのテンションがさっきからとんでもないことになってますね。本気で息子さんを大事に思ってるの、何となく伝わりました。
「あ、親父、話なんだけど……僕、もう逃げないよ。親父の後継者にふさわしい、器のデカい男に、絶対なってみせる」
「……そうか。お前の思い、しかと受け取ったぜ」
ウールさんは少しはにかんだ後、アリエスさんと固い握手を交わしました。これで親子も仲直りです。
「ウール。お前には、5人の母さんがいるよな」
「うん……血が繋がってるのは一人だけど」
「そして14人の弟と妹がいる」
「ああ、可愛い兄弟だ……」
「そしてお前が愛するこの街の人達」
「うん、それが好きでここの景色を……」
「全部がお前を支えてくれる。お前が支えるばっかりじゃないんだ」
顔の良い親子二人が、町の姿を見降ろします。モコさんはハッとした顔で筆を取り出しました。
「これよ、これよ! 今なら最高のウールが描けそう! 今すぐアトリエに戻らないと!」
「ちょっ、モコ!? 待ってよ! あ、ラスターさんもありがとー!」
二人とも行っちゃいました。いい感じの雰囲気が台無しになった気はしますが、これはこれで良きですね。
「……ちったぁ父親らしくできたかな」
「何言ってんだ、ずっとだろ」
「ラスター、お前……」
アリエスさんが、ラスターさんに飛びついて頭を撫で繰り回します。
「良いヤツだなぁ! そうか、励ましてくれるのか!」
「違うわ! 思ったこと言っただけだっての!」
そっちの方が嬉しいと思うんですけど。ラスターさんは相変わらずツンデレ屋さんですね。そして私も、アリエスさんに言わなくてはならないことがあります。
「アリエスさん。先程はご無礼を」
「ん? 何の話だ?」
気にも留めていないようです。しかし私が幼女といえど、通さねばならぬ筋があるのです。
「正直、奥さんが5人いるっていうのは……まだ嫌です。ラッさんが同じ事をしたら、私はラッさんを殴ってしまうかもしれません」
「しねぇわ」
アリエスさんはただ優しく私の言葉に耳を傾けています。まったく、包容力の高いお方です。
「ですがそれは私の価値観。アリエスさんのご家族はそれで幸せなわけです……よね?」
「まあ、そうしてきた自負はあるよ」
一点の曇りもない瞳です。そう言われたら、それにウールさんとのことも見てました、信じるしかないです。
「だったら押し付けるべきじゃないですよね。自分と違うからって、間違いと決めつけるのは傲慢です!」
「……かもな」
分かったんです。アリエスさんは、ご家族にとって「太陽」なんだって。それもまた、一つの愛の形なんです。
「家族の形はいろいろです!」
「ああ、その通りだな」
アリエスさんも私の出した答えに満足して下さったようです。そうですよ、家族の形はいろいろ……
「あぁーっ! そうですよ!」
「な、なんだ!?」
人の悩みに首を突っ込んでいたら、いつの間にか自分の悩みも解決してしまいました! ウールさん、アリエスさんありがとう!
続く!




