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83. 街の子は皆デイライトの子

前回のあらすじ!

ラスターさんが王様の息子だったなんて……秘密を守れるか不安で仕方ないチギリちゃんです。

そんな中、久しぶりの遠征です! うっかりしませんように!

どうも、チギリちゃんです。私は今、「デイライト・シティ」というところに来ています。十二神官のアリエスさんが首長を務める街ですよ。


今回は、私とラスターさん、ボマードさん、ウリたん、いつものメンバーで久しぶりにお出かけです。


騎士団の護衛を取り付けられましたからね、ラスターさんも安心して家を空けられるというものですよ。


それで今日はですね、この街の上空でワイバーンの目撃情報があったそうなんですよ。とても凶暴な性格で、時には人を襲うこともあるんだとか。怖いですね。


それでラスターさんが討伐に駆り出されたというわけですよ。え、私? 私はですね……


 「私は街の方を散策してきます」

 「珍しいな……迷子になるなよ」

 「ウリたんも一緒なので大丈夫です」

 「大人しすぎて気持ち悪いぞ……」

 「どこか具合でも悪いのですか?」


大人二人が失礼なのは置いといて、こんな感じで、ラスターさん達がアリエスさんに会いに行っている間、私とウリたんは別行動をとらせていただくことにしたのです。


 『ラスター様は、私の生き別れた弟だったの!』


お姫様の衝撃の告白が頭から離れません。多分というか絶対、ラスターさんといたら、どこかでポロっと言ってしまいそうなんですよ。


 「ウリた~ん、私どうすればいいですか?」

 「ぶひ?」


大体からして、どうして隠す必要があるんでしょうか。捨て子ならともかく、不幸な事故で生き別れたわけですし、ラスターさんだって肉親のこと知りたいはずです。


 「ねえ、ウリたん、そう思いませんか?」

 「ぶひ?」


ウリたんには分からないですよね。せっかく初めての街なのに、もっとウキウキ気分で散策したかったですよ。


 「はぁ……難しいですねぇ……」

 「お嬢ちゃん、元気がないね。リンゴでも食べなさい」

 「あっ、どうも」


果物屋さんにリンゴを貰ってしまいました。


 「あら、大丈夫? このお花、プレゼントするわ」

 「あっ、どうも」


ヒマワリを貰ってしまいました。


 「どうした、しょぼくれて! 今朝とれた新鮮な魚でも持ってきな!」

 「あっ、どうも……」


今度は青魚まるまる一匹です。


 「これ持って行きなさい」

 「はぁ……」


 「これでも食べて元気出して」

 「どうも……」


 「これ、君にあげるわ」

 「すみません……」


……………………


 「色々もらってしまいました……」

 「ぶひ……」


皆さん親切です、後から請求されたりしないですよね? でもなんか、あったかいです。


 「『街を歩く子は皆デイライトの子どもである』」


知らないおじさん、見るからに自分の街のことを旅人に解説するのが好きそうなおじさんです!


 「この街に古くからあるコトワザだよ。デイライト・シティは、みんなで助け合う、特に子どもは大切にするのさ」

 「ほえー、優しい街です!」


それってすごく素敵じゃないですか。てことは、私かなり気を遣われてました? 心配をかけてしまいました。


 「その通り、優しい町なんだが、このコトワザには語源があって……」

 「僕の前でそのコトワザの話すんなよ」


何ですか、あのお兄さん? 急にそれだけ言って立ち去っていきましたよ? どういう事情か知りませんが、このコトワザが嫌いみたいです。素敵だと思いますけどねぇ。


 「誰ですか、あの人?」

 「あー、あの人はアリエスさんの息子でな」

 「息子さんが? まあ親子は色々ありますよね……」

 「……嬢ちゃんいくつだ? 長男だからなぁ、思うところがあるんだろうな」


ということは、この優しい街の跡を継ぐお方! そんな方がどうして? うーん、気になりますね!


 「私ちょっと追いかけてきます! ありがとうございましたー!」

 「ぶっひ!」(それでこそ嬢ちゃんだぜ!)



────────────



 「あ、長男さん!」

 「ん? 君は……」


ウリたんの鼻レーダーで足跡をたどると、見晴らしの良い丘の上でたそがれていました、アリエスさんの長男さん。


 「さっきは突っかかって悪かったな」

 「いえいえ、私は気にしてませんよ!」


気にしてはいませんが、気にはなったので追いかけてきたわけですが。どうしてあんなことを言っていたのか。


 「私はチギリです。えーと……」

 「僕はウールだ」

 「ウールさん、さっき言ってたことって?」


尋ねると、ウールさんは少し困った様子で笑いました。


 「人に聞かせるような話じゃないよ」

 「でも気になりますよぉ」

 「……おっ、茶色い羊じゃん。縁起がいいな」


私を無視してウリたんに話しかけています。それにウリたんはもこもこ可愛いですが羊ではありませんよ。


 「無視しないでください! それからウリたんはイノシシです!」

 「おっ、そうなのか。でも茶色い羊は昔から神の使いだって言われてるんだぜ」

 「へー、そうなんですか! って、話逸らさないでくださいよ!」


意地でも話さないつもりですね……これはじっくりコトコト心の扉を開いていくしかなさそうです。


 「ここだ、町一番の絶景スポットさ」

 「確かに良い見晴らしだ。ワイバーンが出てもすぐ見つけられそうだ」

 「色気のねぇヤツ」


おや、背後から聞き覚えのある声がします。ラスターさんの声……多分ボマードさんも一緒にいるはずです。


 「ラッさん! ボマードさん!」

 「お前も来てたのか」

 「アリエスさんに案内してもらっていたところです」


アリエスさんも一緒だったんですね。そうだ、お父さんにお話を聞いてもらえば何か分かるかも……


 「おぉ、ウール! いつの間にその子と仲良く……」

 「チッ……何で居んだよ」


あれ? なんだか険悪ムードです。


親子って、色々ありますよね? 続く!


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