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70. 優しい父は一般人

前回のあらすじ!

十二神官アリエス=デイライトさん降霊術でギガリスさんにお話を伺った私達!

ラスターさんの大切な人が狙われちゃうかも!? すぐにリリスさんの護衛を……

ラスターさんのお父さんも登場ですってー!?

 私たちはひとまずワープゲートで王都まで戻って、ラスターさん達と合流することにしました。アリエスさんはそのまま地元へ帰りました。


 「ラスターの父のダード=パンピープルです。いつも息子がお世話になっております」

 「いえいえ、こちらこそです! 私はラッさんの娘のチギリです!」


ラスターさんのお父さんがどんな人かと思いましたが意外と普通っぽい感じです。少し困った表情に見えますが、突然連れてこられたらそれはね……


 「ラスター、いつの間に娘を……ていうか結婚したのか……?」

 「このバカが勝手に言ってるだけだよ」

 「あー、バカって言ったぁ!」


ラスターさんてば失礼なんですから。ですがお父さんの……いえ、おじいちゃんとお呼びするべきでしょうか、緊張もほぐれたようです。


 「はは、そうか……楽しい子じゃないか」

 「おじいちゃんって呼んでもいいですか?」

 「調子に乗るなよ」


ラスターさんの鋭い一声が刺してきます。もっと心に余裕を持ってほしいものですねぇ。それはそうと、ダードさんはどこで寝泊まりするんでしょう? やっぱりラスターさんの部屋?


 「でもボマードさんも同じ部屋で泊まってましたよね?」

 「ラスター殿、よろしければ私は実家の方に……」

 「いや、大丈夫だ。俺もしばらく宿の方は空けるから」


ラスターさん、家もないのに一体どこに行くつもりですか……車中泊ならぬドラ中泊でもするつもりでしょうか?


 「ラッさんはどうするんですか?」

 「……知り合いに頼んでみるよ。ダードさんも来てくれるか?」

 「俺もか? まあいいけど」



────────────



知り合いに頼むと言っていましたが、一体誰のところに? お父さんも連れて行って……


 「ボマードさんはどう思いますか?」

 「ラスター殿が心を開く相手はそう多くありません……」

 「それでは心当たりが?」

 「しかし……ラスター殿はチギリさんには教えたくなかったのではないかと……」

 「私には……?」


この期に及んでまだ私に隠し事とは。それなりに心を開いてくれていると思っていたんですけどねぇ……いや? 違いますね、ラスターさんが必ず怒ることが一つありました。


 「こうしちゃいられません! 私、覗いてきます!」



 「……余計なことを言ってしまったでしょうか……」

 「ぶーひ」(ダンナは悪くねぇよ)



────────────



 「“マジカル☆ケミカル”ラスター、ここかい? 知り合いのお家っていうのは?」

 「知り合いっていうか、まあ……ダードさんには紹介した方がいいかと思って……」


ラスターは少し照れ臭そうにしながら扉をたたく。迎え入れる女性はラスターを見てパッと顔を輝かせた。


 「あ、ラスターくん! えっと、どうしたの? あっ、えっ、あっ、そ、そちらは?」


リリスは人見知りを発揮させながらダードの方に目をやる。何となく事情を察した父はニヤケながらラスターさんを見つめた。


 「俺の……俺を育ててくれた人? かな……」

 「えっと……つまりお義父さん?」

 「……まあ、そんな感じかな」


ラスターは歯切れ悪く父を紹介した。ダードは複雑そうな表情である。


 「ラスター、もう父さんとは呼んでくれないのかい?」

 「いや、父さんが悪いわけじゃなくて俺の気持ちの……あ……」

 「……まあいいさ。この子に会わせたかったんだろう? 早く紹介してくれ」


ラスターは父に対して何か思うところがあるようで、少し気まずい空気が流れた。父はそんな空気を誤魔化すかのように優しく微笑んで見せる。


 「彼女は……リリス=マジカルさん。あー、その、なんていうか……」

 「リリスさんというのか、ラスターの恋人は」

 「何で知ってるんだよ!?」

 「見たら分かるとも。……聞いたことある名前だな」


恥ずかしがるラスターさんをよそに父は何か思い出そうとしている。


 「……ああ、この子か! 王都で仲良くしてくれた魔法屋の娘さんってのは!」


思い出した。ラスターが帰省した時にでも話を聞いていたのでしょう。ラスターはにわかに緊張感を漂わせた。


 「笑顔の素敵な女の子だって言ってたよ。そうか、君がね……」

 「えっ!?」

 「ぅおい! 何バラしてんだ!?」


ラスターさんとリリスさんはそろって真っ赤になりました。やっぱりラスターさんはリリスさんのこと大好きじゃないですか!


 「……またこのパターンかよ。出て来いチギリ」


向かいの服屋さんに隠れて見ていた私の方をラスターさんが振り返りました。興奮して少し擬態が甘くなってしまいましたからね……


 「本当にお前は……」

 「いーじゃないですかー、私もラッさんの子どもの頃のお話聞きたいですー!」

 「そんなに邪険にしなくてもいいじゃないかラスター」

 「う、うん、チギリちゃんも上がっていきなよ、一緒にお話しよ?」

 「あんまり甘やかさないでくれよ……」


むっ、これは娘の教育方針の違いによる対立ですか? ケンカは可愛くないですが、私のためを思ってのことなら、まあそれはそれで……


 「ラッさん、入らないんですか?」

 「ん? ああ、いや、ここの向かいにあんな店あったかな、って……」


さっきまで私が隠れてた服屋さんのことでしょうか? 前からずっと服屋さんだったと思いますけど。


 「ずっとあの店だよ? うん、そうだったはず……」


長年ここで暮らしているリリスさんがそういうのなら間違いないですね。お向かいさんが引っ越したりしてたら気付かないわけないですもんね。


 「そうか? 言われてみれば……そうだったかも」

 「しっかりしてくださいよ、ラッさーん」

 「ラスター、疲れてるのか? 休めてないのか?」

 「ちょっと勘違いしてただけだよ」


ならいいですけどねぇ、優しいお父さんに心配かけちゃダメですよ。


 「勘違い……だよな」



────────────



 「勇者サマ、来たわよ。ホントにあの子と付き合ってたのねぇ。……うん、多分父親でしょ? なんかちっこいのも連れてるけど。……ああ、噂の魔法使いちゃんね。」


その日の夜、CLOSEDになった向かいの店の奥で、店主の女が金貨のようなものに向かってブツブツつぶやいていた。


 「チャンス? 二人同時に? どんだけ単細胞なのよ。“来るなら来やがれ。返り討ちにしてやる”ってことでしょ? ……うん、どっかの単細胞生物が二回も返り討ちにされたからね、舐められてもしょうがないわよ」


詳細は不明だが、通話越しに単細胞生物をなじっているようだ。女は物憂げにため息をつく。


 「……勇者? ずっと見張ってるんだけどねぇ……一向に寝る気配がないっていうか……まあいいじゃない、こっちもじっくり準備させてもらおうじゃないの。あんたもちょっとは役に立ちなさいよ、やられっぱなしなんだから。勇者サマに良い夢(・・・)見せてあげましょ♡」


女は不敵に微笑みながら寝室を覗き見る。もともとの住人が、この上ないほど幸せそうな顔でぐっすり眠っていた。



続く!


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