54. 天才少女の勘違い
前回のあらすじ!
ジェイミーさんと一緒に飛び立った私たちですが、ジェイミーさんの様子が少しおかしくて……?
そして何となく気まずい雰囲気のまま、私たちはデンクマール村へと飛び立ちました。ドラゴンちゃんの鱗は個室ですが(7話を確認です)、声は普通に響くので会話はできてしまいます。
「あ、あの……先日ご一緒だった口の悪い方は……」
「シルちゃんは、もういませんよ……」
「あ、す、すみません……」
いけません、こんな言い方をしたらシルちゃんが死んだみたいになってしまいます。ただでさえ泣いて心配させてしまったのにこれ以上心配をかけるわけには。
「でも大丈夫です、シルちゃんもきっと帰ってきますから」
「還って……あの……何と声を掛ければいいのか……」
夜も遅いので眠くなってきました。ジェイミーさんの心配も解けたようなので、一眠りさせていただきます。
「それではおやすみなさい」
「え……はい、おやすみなさい」
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何がいけなかったのだろう? やはり第一印象だろうか?
それは当然だ、財力を振りかざしてサンドウィッチをぶんどっていった鼻持ちならぬ金持ちだと思われているはずだ。
ジェイミーは思い悩んでいた。どうすればチギリとお友達になれるのか……
「ち、違うんですの、ジェイニーに心配かけたくないからであって決して寂しいとかそういうことではないんです」
「ジェイミーさん、いかがなさいました?」
「何でもありません、独り言ですわ!」
「着くまで寝てていいからな」
「お気遣いありがとうございます!」
お節介なおじさん達に感謝しながら、頭の中でチギリと仲良くなるための方策を巡らせる。
とはいえ食い物の恨みは相当根が深いようである。ジェイミーも、チギリが自分と顔を合わせてから露骨に表情が暗くなっていることに気が付いていた。
「大切な御友人との最後の思い出を汚した嫌な女ですものね……」
ジェイミーは、これはもはやサンドウィッチがどうこうなどという問題ではない、自分は取り返しのつかないことをしてしまったと思った。実際はそんなに大したことではないが。
「とにかくまずは私の贖罪ですわ! 一生かけても償わねばなりません」
ジェイミーは無駄に重い覚悟を胸に秘め、眠りについたのであった。
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そして翌朝
「チギリ、ジェイミー、着いたぞ」
眠りこけている間にデンクマール村についてしまったようです。ジェイミーさんはぐっすり眠れたでしょうか。お金持ちのジェイミーさんにはドラゴンちゃんの中は少し狭かったのではと思います。
「ジェイミーさん、昨日は眠れましたか?」
「え、ええ、お気遣いありがとうございますわ」
「狭くなかったです? ほら、ジェイミーさんリッチウーメンだから……」
「……! ごめんなさい、お金持ちでごめんなさい……」
何を怯えているのかさっぱりです。何か怖い夢でも見たのでしょうか。十二神官といえど私と変わらない子どもですからね。
「大丈夫です? 手でも握りましょうか?」
「け、結構ですわ」
フラれてしまいました。気を取り直してデンクマール村に降り立ちます。
村と言っても、今回お会いする十二神官のゴードンさんのお家が崖の上にポツンと一軒建っているだけなのです。
「こんな広い村におうち一軒だけですか」
「この辺一帯はゴードン殿の土地ですからな」
へき地で安かったんで買い上げちゃったそうなんです。そこら中に咲いている黄色いお花さんもゴードンさんのご趣味だそうで。
「へぇ~、そうなんですかぁ~お花畑の中の一軒家って素敵ですね」
「チギリさんはお花が好きなんですのね……」
ジェイミーさんがブツブツ言いながらメモを取っています。本当にどうしたんでしょうか。いえ、もしかしたら私が見くびっていただけでジェイミーさんもかなりの変人なのかもしれません。
「ジェイミーさん、何メモってるんです?」
「何でもありませんわ! さあ、行きましょう!」
まだ心を開いてくれてないみたいですね。気を取り直してゴードンさんのお家にお邪魔しましょう。
「邪魔するぜ……ゴードンさん?」
ラスターさんが玄関の呼び鈴を鳴らしますが反応がありません。お留守でしょうか?
「……倒れてんじゃねーだろうなあの爺さん」
「鍵は開いているようですが」
「……入ってみるか」
ということで突入です! ラスターさんとボマードさんが不穏なことを言っていましたけど、無事だといいのですが。
「勝手に入るぞー……」
「きゃー!」
玄関前の廊下に人が倒れていました! そしてその頭には何故が大量のそうめんが……
「よく見ろありゃ髪の毛だ」
「あ、ホントです!」
白くてつるつるしてるのでそうめんかと思っちゃいましたよ。それはともかく、人が倒れてますよ! ボマードさんが慌てて抱き起します。
「ゴードン殿、聞こえますか?」
ボマードさんが呼び掛けると、シワだらけの口元がかすかに動きました。
「は……腹が……」
「腹痛ですか?」
「減った……」
続く!




