47. 試練への道と不屈の恋
前回のあらすじ!
イロン村のスティングホ-ルドさんのおうちにやってきた私達。
その目的とは、スコッピさんに十二神官どきどきスタンプラリーの申し込みをすることでした!
しかし……はてはて……
「ダメ、許可できません」
「そ、そんな……」
ラスターさんは“神々の試練”というものに挑戦することに決めたそうです。しかしスコッピさんはその依頼を無下に断りました。顔の前でバッテンマークを作っています。どうして~?
「せめて理由を教えてもらえるか?」
「いや~、何と言うか~、ホントは良くないんだけどさ、気分が? 最近ちょっとダメなの。こんな状態じゃ神様にお願いできない。ホントごめん、ラスターは悪くないんだけど」
スコッピさんは目を泳がせながら高速で言い訳をまくしたてました。なんか怪しいです!
「何かお悩みでもあるんです?」
「そんな人に言うようなことじゃないから、ホントに下らない話」
……あるんですね。詰め寄ると大きくため息をつきました。
「チギリちゃんだっけ? 君、今いくつ?」
「へ? 11歳ですけど?」
「わっか。ラスターは?」
「……18だけど、何だよ」
「かー。ボマードくんは」
「15ですが……」
「ねっ?」
スコッピさんは「これ以上言わせるな」と言わんばかりに私たちを見渡しました。ですがチギリちゃんにはさっぱり言いたいことが分かりません。
「私もう25だよ」
「……はぁ」
「父さんも早く孫の顔が見たいって言ってるわけ」
話が読めてきました! これはもしかして私の得意分野かもしれません!
「別に今すぐとは言わないけどさ~、そろそろいい人と結ばれて安心したいわけ」
「キタコレ!」
そういうことならチギリちゃんにお任せ……わお、ラスターさんの目が冷たい!
「そんな理由かよ、下らねぇ……」
「あっ、ラスター殿……」
ボマードさんの制止は間に合いませんでした。あーあ、言っちゃいましたね。
「何さその言い方……もういい!」
スコッピさんは工房の奥へ引っ込んでしまいました。そして入れ替わるようにスティングホールドさんが出てきました。
「ラスターよ、スコッピの奴どうしたんだ?」
「すみません、なんか怒らせちゃったみたいで……」
「そりゃそーですよー」
「あれはいけませんぞラスター殿」
ラスターさんはまだ自覚がないみたいです。切実なお悩みなのにあんな言い方されたら、それは嫌な気持ちになります。
「なあ……あいつなんで怒ったんだ?」
「ラスター殿、確かに十二神官は勇者を支え導くためにあります。姉上も日頃からそう言っておりました。しかしいつしかそれを当然と思ってしまっていたのではありませんか?」
ボマードさんは優しく諭します。さっきの年齢確認がなければボマードさんの方が年下だと忘れてしまいそうです。
「は? 俺はそんなつもり……」
「少し言い方がきつかったですな。ですが、己と同じ“使命に殉ずる心”を無意識にスコッピさんに、十二神官達にも求めてしまっていた、だから私的な事情で協力を拒む彼女に苛立ってしまった……違いますか?」
そこでラスターさんはようやく申し訳なさそうな表情になりました。
「そう、かも……」
「よく分からんがうちの娘がワガママ言ったみたいだな」
そう言われればそうなんですけどね! スティホルさんは呆れたように呟きました。
「あいつも近頃『好きな男が冷たい』とか言ってイラついてたからな。それでお前に当たっちまったのかも……」
「その話詳しく!」
この私が、聞き逃すはずがありませんでした。
────────────
スコッピさんは部屋にこもっているだろうと教えてくれました。ラスターさんが遠慮がちに扉を叩きます。
「スコッピさん、さっきは、そのー……」
「帰って」
冷や水でしめるようにぴしゃりと。取り付く島もありません。こうなったら一か八かです。
「ラッさん、代わって下さい」
「おい、大丈夫かよ……」
私の予想が正しければ、これで機嫌を直してくれるはずです。大丈夫、最近こういう展開少なかったですがチギリちゃんセンサーは健在です。
「オリオンさんとのこと、協力します」
「君、良い人ね。入ってどうぞ」
扉が、開きました。
────────────
「それじゃあ、スコッピさんはオリオンさんが好き……で、いいんだよな?」
「皆まで言うな恥ずかしい!」
頬を染めてラスターさんの肩をバシバシ叩きます。例の甘甘フェイスです。なるほど、オリオンさんの事考えるとあの顔になるんですね。
「最近なーんか避けられてるっていうかー、昔は仲良かったのに……」
「最近っていつぐらいからです?」
「うーん、ここ5年ぐらい?」
「最近……?」
「二十歳過ぎたら時の流れ速いって聞くけど本当だったんだねー」
“最近”の定義に疑問がありますが、とにかくそういうことらしいです。5年も不満を溜め込んでいたわけです、それはイライラもします。
「しかし自分の師匠の娘だぞ? そんな無下に扱うか? 考えすぎじゃ……」
「いーや、絶対避けられてる! だって……」
ねえねえ、オリオン
おっと! 師匠に試作品見てもらわないと!
オリオン、ちょっといい?
……! 師匠の技術はー、やっぱりこうした方がいいのかー、いやー、集中しすぎて何も聞こえないなー
オリオーン!
ああ、奥様! 食事の支度なら僕が! ええ、休んでてください。あー、忙し忙し!
「ずっとこの調子だもの!」
「思ったより露骨だな」
オリオンさんってばどうしてそんな酷いことするんでしょうねぇ。これじゃあスコッピさんの心がボドボドになってしまいますよ。
「1日20回は呼び掛けるようにしてるんだけどそれでもなかなか……」
「不屈!」
ですねスコッピさん……オリオンさんの方も無視するネタが尽きてそうです。
「最低限の会話はしてくれるんだけどさ、私はもっとこう楽しくっていうか、色気のある会話がしたいわけさ」
乙女心ですねぇ。久しぶりにテンション上がってきましたよ。
「スコッピさん! 私に任せて下さい! 絶対にお二人をくっつけてあげます!」
「チギリちゃん……ホントに良い子だね、初対面の私のためにそこまで親身になって……」
「いいんですよ。私は人の幸せを応援するのが一番好きなんです」
「冷やかしてるだけだろ」
ラスターさんが何か言ってますが、この際そんなことはどうでもいいのです。恋愛大好き、カップル大好きチギリちゃんの独擅場ですよ!
「よ~し、久々に頑張っちゃいますよー!」
「大丈夫かよ……」
続く!




