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40. 怪盗少女を待つ人は

前回のあらすじ!

ピスケスさんとアムールお姉さんの企みによって、前世の記憶を思い出した私!

しかしそれはとても人に話せるような物ではありませんでした……(※恥ずかしくて)

まあ死んでしまったものは仕方ないです、切り替えていきましょう! 決意を新たにするチギリちゃんでありました。

 「ラッさんまだ帰ってないんです?」


 宿屋さんに帰った私とシルちゃん。しかしご主人の言うことにはラッさんはまだ戻っていないとのこと。


 「あ、ひょっとしてリリスさんの!」

 「遅いからやめとこうよー」

 「うむむ……それもそうですね……」


大人しくウリたんと遊んで寝ることにいたしましょう。また興奮しすぎて死んでしまったら嫌ですからね。


しかし部屋に戻るとウリたんは既に眠りについていました。相変わらずモフモフです。


 「とはいえさっき寝たのであまり眠くないですね」

 「チギリちゃん、どんな夢見てたの?」

 「そ、それは絶対に言えません!」


あんな理由で生まれ変わってきたなんて知られたら末代までの恥です! いや、むしろ私は既に末代? 転生先で子孫を残した場合はどういう扱いになるのでしょうか?


 「シルちゃんは子孫繁栄についてどうお考えですか?」

 「……急に何?」


露骨に訝しがられました。純粋に疑問に思っただけなのに……


そしてもう一つ、思い出したことがあります。


 「ウリたんは茶色い毛並みがぷーちゃんそっくりです! よーしよしよし」

 「むきゅ?」(な、なにごと? ぷーちゃんって!?)


起こしてしまいました。少しはしゃぎ過ぎてしまったようです。きっとぷーちゃんの魂がウリたんと出会わせてくれたんですよね。


 「おやすみなさい、ウリたん」

 「ぶひっ!」(また明日な!)


ウリたんのモフモフボディに触れていたら私も眠くなってきました。良いんです今日は、色々あったけど全部忘れて……



シルコはチギリの寝顔を見て口を尖らせた。


 「結局話してくれなかったなー……友達なのに隠しごとなんて……」


そう呟き、そして何かを思い出したように叫んだ。


 「……私もしてるじゃん!」



────────────



 「シル子ちゃん、最近連絡ないけど大丈夫なのかね?」


 ここは魔王城。ディヒターが心配そうに漏らしたが誰も興味を示さない。


 「あれ? 聞こえなかったかな? ねえ、サラメーヤ?」

 「……うるさーい、興味キョーミナイカラ」

 「わぁお、冷徹ゥ!」


ディヒターが大袈裟に身をのけぞらせると、サラメーヤはわざとらしくため息をついた。


 「逆に聞くケド、一線超えたこともないようなお子ちゃまがなんかの役に立つ思って?」

 「一線て。確かに一人も殺したことないのはどうかと思ったけどねぇ」

 「そゆこと。てかさ、あの気持ち悪い氷像いつまで置いとくの? 見るだけでサブイボ立ってくるんだけど」


部屋の隅に追いやられた氷漬けのリッキーを指しながら言った。その傍らにはクロウリーが彼を守るように座り込んでいる。


 「ねえ君、そんな警戒しなくてもブチ砕いたりしないわよ」

 「……信用できるか」

 「つれないわねぇ。私たち一応仲間じゃない?」

 「勘違いするな。俺は先生に従ってるだけだ」


しかめ面のサラメーヤがディヒターにこっそり手招きした。彼が顔を寄せると二人は小声で話し始めた。


 「あの子リッキーの正体知らないのかしら?」

 「みたいだねぇ。あの様子だと言っても信じないだろうけど」

 「ねー完全に妄信しちゃってるわね」

 「まあ、それでもいいんじゃない? 彼、便利だし」


あのように素っ気ない態度のクロウリーであるが、彼の空間魔法の便利さ故に、仲間たちからそこそこ気に入られていた──それこそシルフィー以上に。もはやこの魔王城にシルフィーの居場所はない。


 「クロウリー、親睦を深めるために私とちょっと遊ばない?」

 「急にそんなこと……何企んでる?」

 「な~んにも? 私とイイコトしましょ?」


サラメーヤの色香にクロウリーは思わず赤面した。彼は異性に耐性がなかった。


 「もう新しい標的見つけてるよー。女性って怖いねぇ」


ディヒターはわざとらしく身震いさせながら、部屋の入り口に突っ立っているギガに近づいていった。


 「ギガちゃんはああなっちゃダメだよ。純粋なままでいてね?」

 「ん? うん?」

 「おい、聞こえてるわよ」


やはりここにもうシルフィーの居場所は、ない(再確認)。



────────────



 「シルフィー=アランドロン? こいつ確かあの時のコソドロ……」


 ラスターは行方不明者のリストを眺めて首をかしげた。自分が先日ひっ捕らえた泥棒の名前が記載されていることが不思議だったのだ。


 「それ古い情報ですね、リストがまだ更新されてないので……」


メッセンジャーが補足した。ラスターが捕まえるまで彼女が行方不明扱いとなっていたことをそこで初めて知った。


 「……で、どうしてこいつはそんなことに?」

 「7年前にゴーフー村で一家惨殺事件があったでしょう? そこの娘なんですよ」


誰も聞いていないのに息を潜めて答えるメッセンジャー。ラスターは身を乗り出した。


 「いや、だったら何で行方不明扱いになるんだよ」

 「それがですね、被害者の顔の皮膚が全部剥ぎ取られてて、身元を特定できなかったんですよ。それで行方不明で処理するしかなかったという……」


ラスターは思わず口元を抑えて吐息を漏らした。実に凄惨な事件である。


 「犯人は?」

 「……見つかってません」

 「そうか……死んだはずの娘、脱走から数週間後の魔王の宣戦布告……シルフィー=アランドロンはとんでもない爆弾を隠し持ってそうだな……」


結論は奇跡的に正しい。しかし彼の推理過程から察するに、シルフィーのことを相当買い被りっているようだ。


彼女は残念ながら単なる……



────────────



 「どうしよう……お姉様に連絡した方がいいのかしら……」


 おや、シルちゃんまだ起きていたんですか。それはそうとお姉様って誰のことでしょう。


 「シルちゃん?」

 「うっひゃぁあああ!? チギリたゃん起きてたの!?」


驚きすぎです。まあ急に目を覚ましてしまったのは申し訳なかったですが。


 「ちょっと目が覚めちゃっただけです。それじゃあおやすみなさ~い」

 「あ、う、うん……えーい、私も寝る!」


ただ寝るだけなのに、どうしてそんな一大決心みたいな言い方をするんでしょう。気になりますけど、シルちゃんが話してくれるまで待ちましょう。おやすみなさい。


続く


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