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29. オシノチギリは我慢できない・その2

前回のあらすじ!

私は自分の使命を思い出しました。なので、まず手始めにリリスさんとラスターさんをくっつけたいと思います! まずは作戦会議ですよ!


────────────


 私が彼に初めて会ったのは10年前の5カ月と15日前でした。そんな細かく覚えてるんですか? うわ、ちょっと引く……


……気持ち悪くてごめん。いえいえ、気にせず続けて下さい! シルちゃん! 余計なこと言わないでください!


彼は父親に無理やり連れてこられた様子でした。お父さんと私のおばあちゃんが話している間、退屈そうにお店の中をうろついていましたから。


 「そうだ、婆さん。あんたの孫、こいつと年近くなかったか?」

 「おお、そうさね」


その会話を聞いて戦慄しました。私はその当時からすでに人見知りでしたから。あー、大人ってすぐそういうことしますからねー。そうなの! だから私こっそり逃げようと思って……


 「リリス! 逃げないよ!」

 「ひっ! はい!」


でも私のおばあちゃん厳しくて……多分私の人見知りが心配だったんだろうけど……だから逃げられなかったの。悲しいですねぇ……


それで結局ラスターくんと話すことになったんだけど……


 「り、りり、リリスです……」

 「俺はラスター。よろしく」


その後しばらく沈黙が続いて……え!?まだ最初の挨拶しかしてないじゃないですか! だって私、話すの苦手だもん……ラスターくんも乗り気じゃなかったし……


 「そ、そうだ! うちの店、魔道具作り体験やってるの! えと……魔力もちょびっとあれば作れるから……」

 「悪い、俺魔力が一切ないんだ」


勇気を振り絞って口を開きましたがこの有様でした。私は何て酷いことを言ってしまったのだろうと……いやいや、リリスさん悪くないですよ! そうね、ちょっとデリカシーに欠けるんじゃない? シルちゃん!


私はもう気まずくて泣きそうになっていました。出来れば早く帰ってくれと、一人にしてくださいと、そう思っていました。


 「魔力なくても使えるのはないのか?」


彼がそう聞いてきました。救われた気分でした。普通の世間話は苦手だけど、魔道具の話ならそれなりにできるから。水を得た魚ですね!


それで私は、彼にいくつかの魔道具を紹介しました。彼が楽しそうに聞いてくれるので、私の緊張もいつの間にか解けていました。


 「あ、ごめん、私調子に乗って話し過ぎ……」

 「楽しそうじゃん。その顔の方がいいぜ」


微笑みながらそう言ってくれました。何だか分からないけど、もっとこの子とお話したいと思いました。こんな気持ち初めてでした。


 「ね、ねえ、また……会える?」

 「うん、あいつよくここ来るみたいだし」

 「あいつじゃなくてお父さんな!」

 「はいはい、お父さん。じゃ、またな」


「またな」って、そう言ってくれたのが嬉しくて、だけど切なくて、遠くなっていく背中にずっと小さく手を振っていました……


 「ちょっとちょっと、一旦ストップ」

 「シルコちゃん、どうしたの?」

 「……チギリが気絶してる」

 「キャー! すごい鼻血……」


────────────


 「ふんふん! 話は大体わかりました」


 少し興奮しすぎてしまったようです。見苦しいところをお見せしました! 鼻にティッシュを詰めてると話しにくいですね!


 「それで惚れたの? チョロ過ぎない?」

 「えー? 素敵じゃないですかー!」


シルちゃんがさっきからチョイチョイ厳しいです! それだけリリスさんのことを真剣に考えてくれてるんですね……私嬉しいです。


 「チョロくてごめんなさい……コミュ障でごめんなさい……」

 「あ、ごめん、私もそこまで言うつもりは……」


しかしリリスさんはお豆腐メンタルです。もしフラれることがあったら大変なことになってしまいそうです。


 「ラッさんの気持ちを確かめないとですね!」

 「でもあいつが素直に吐くかしら?」


それはそうです……ラスターさんは基本的にツンデレ気質ですからね……本心がどっちだとしても素っ気ない反応をするに決まってます。


 「ラッさんのお父さん? 何か聞いたりしてないですかね……」

 「父親にそんな話しないっしょ」


そういうものなんですか? うちはお姉ちゃんしかいなかったのでその辺はよく分からないです。


 「リリスさん、当たって砕けろよ! 玉砕、玉砕!」

 「アタッテクダケロ……ギョクサイセイシン……」

 「変な教育しないでください!」


リリスさんが目を回し始めました。マズいです、リリスさんのコミュ力が尽き始めています! 今日は長いこと話してましたからね……


 「リリスさん、また来ますから!」

 「ばいばーい、せいぜいがんばってねー」

 「あうぅ……ごめんね、ありがとう……」


一旦退却です! ラスターさんにも探りを入れつつ慎重に動かなくては!


 「シルちゃん、ラッさんのパパに会いに行きましょう!」

 「えー、行っても無駄じゃない?」

 「あ、私が会ってみたいだけです」

 「そう……」


指笛を鳴らしてウリたんを呼びます。王都の西隣の村で隠居してるって聞きました。ウリたんに乗っていけば、夕飯までには帰れます!


 「すっご! それどうやって鳴らすの?」

 「まず指の形はですね……」

 「ぶぅ……」(無視しないで……)


────────────


 そしてやって来ました、ここにラスターさんのお父さんが……お話の通りだと気さくな方だそうですが。


 「シルちゃん、ノックして下さい」

 「ええ? イヤだよ! チギリちゃんがやって!」

 「ぶひぶひ」(嬢ちゃんが叩くのが筋と違うんかい?)


そうですね、私が言い出しっぺですものね……だけどちょっと怖いです。


 「コンコン。すみません、ラスターさんのお父さんですか?」

 「言いながら叩くタイプね」


そして出てきました! この人がラスターさんのパパ……少し様子が、っていうか見た目がおかしいですね。怪しさ全開です。


 「私がそうだが……ん? どうしたね? 私の顔に何か付いてるか?」

 「付いてるっていうか被ってますよね!?」


ラスターさんのお父さんを名乗るその男性、頭に甲冑をすっぽりかぶっています。顔は全く見えていません。


 「しかし父と言っても育ての父というかね……ラスターが王都で修行している間父親代わりを……」

 「話が入ってこないですよ! 一旦それ取ってください!」

 「それはできない」


一蹴……!


 「うえ~ん、シルちゃんからも何とか言ってくださいよ~」

 「あんたどこかで……」

 「昔騎士団長をしていたからね。君が我々の世話になるような悪いことをしていれば、会っているかもしれない」

 「はい、気のせいでした!」


シルちゃんはどうして冷や汗をかいてるんでしょう? この人の話を総合すると、騎士団長だったこの人がラスターさんに稽古を付けてあげていた、その時に父親のように面倒を見ていた、ということですね。


 「それで……その兜は外さないんですか?」

 「首から上がないんでね。それよりこの子は気持ちいいねぇ」


意地でも外さないつもりですね! そしてウリたんがまた懐柔されてます! 膝の上で気持ちよさそうです!


 「ぶきゅうふ……」(大丈夫だ嬢ちゃん、こいつは悪い人じゃない)

 「ピスケスさんのこと忘れたんですか! いや、悪い人ではなかったですけど……」


でもずっと兜で顔を隠している人がいることについて近隣住民の皆さんはどう思ってるんでしょう。絶対不安がってますよ!


 「ゴルドさん、野菜のおすそわけです」

 「ああ、どうも、いつもすみません」

 「いえいえ、お互い様ですよ」


真っ当な地域交流をしている……!


 「後でお礼に何か持って行かないとな……猪肉でいいかな」

 「ぶひ!?」

 「ウリたんを食べようとしないでください!」

 「冗談だ。それより私に用件があったのではないか?」


掴みどころのない人です! 負けた気分ですが早く用事を済ませないと夕飯までに帰れません!


 「リリスさんのこと知ってますか?」

 「ああ、魔法屋の孫娘か。ラスターからよく聞いている」


よく聞いている!!


 「あ、あの……ど、どんなふふふ風に……」

 「あんた目が怖いよ」

 「うん、何かほっとけないんだって。昔の話だけどね」


これは……勝ち申した……? いけます、いけますよリリスさん!


 「あの子がどうかしたのかい?」

 「実はラッさんのお嫁さんを探してまして……」


事情を説明しました。顔は見えませんが肩が震えています。何かおかしなこと言いましたかね?


 「そうか、そうか、ラスターの嫁をね……育ての親としてよろしく頼むよ」


声が震えています。きっと息子がもうそんな歳になったのかと感涙しているのでしょう。


 「チギリちゃん、手土産に一ついいことを教えてあげよう。ラスターの秘密を」

 「……何と!」


育ての父・ゴルドが語るラスターの秘密とは!? 続く!


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