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19. オシノチギリは騙されない

前回のあらすじ!

王様とお話していた私の前に現れたのは十二神官の一人・ピスケス=カドローアさん!

えっ? 「私の」チギリちゃん? それってどういう意味ですか!?

────────────


 「元気にしてましたか~? 私の可愛いチギリちゃん」


 えっ、私の……? それは一体どういう意味でしょうか……はっ! まさかのこの人が!


 「ママ……」

 「は~い、ママですよ~」


抱き着こうとする私に対して、両手を広げて受け入れ態勢を見せています。やはりこの人が私のママ……はっ! よく考えたら私のお母さんがこの世界にいるはずありませんでした! お母さんじゃないならどうして「私の」なんて言うんですか! 紛らわしいです! 騙されるところでした!


 「おのれ! あなたは一体何者なんですか!」

 「ぶひぅ……?」(何でキレてんだ……?)

 「うふふ、あなたのご主人様ですよ~」


ご主人様……? はっ! さてはこの人……


 「ただの危ない人ですね! お巡りさーん! ここにロリコンお姉さんが……」

 「あらあら失礼しちゃいます~あなたをこの世界に召喚したのは私なのに~」

 「えっ」


なんと! こんな形で出会えるとは、私を呼び出した人! ん? この人が私を召喚したということは全部大体この人のせい……


 「ラスターくんの好みに合わせたつもりだったんですけど~うふふ、どこで間違えちゃったのかしら~」

 「何を思って私のような子どもを連れてきたんですか……」

 「あらあら~こっちの世界はお気に召さなかったかしら?」


ピスケスさんは笑顔を一切崩さずに尋ねてきました。それは……確かに最初はちょっと戸惑いましたけど……思ってたファンタジー世界とはちょっと違いましたけど……


 「ぶひ?」(嬢ちゃん?)


皆さん優しくしてくれるし、ウリたんは温かいので、まあ、良い所です。


 「……よかったわ~」

 「いや、それよりですよ! ご主人様ってどういうことですか!」


しんみりして流されるところでした! このお姉さんが召喚した幼女を下僕扱いするヤバい人なのではないかという疑惑は消えてませんよ!


 「当然じゃないですか~チギリちゃんは私に召喚されたんですから私の眷属となるのは~」

 「けんぞ……難しい言葉で誤魔化そうとしてもそうはいきませんよ!」

 「召喚されたからには召喚者に従うのがこの世界のルールです♡」


ルールですか……しかしこの場には王様という証人がいるのですから、ピスケスさんが適当こいても通用しないんですからね!


振り向くと王様は無言でうなずきました。そんなバカな……!


 「その証拠に、ほら、私が念じるだけでどこにでも移動させられますし~」

 「のぉわぁ!」

 「ぶひ!?」(何で俺まで⁉)


ピスケスさんが軽く指を振ると、いつの間にか王様の頭の上に乗せられていました。王様は突然のことに倒れてしまっています。


 「きゃぁああ! ごめんなさい!」

 「ぶひ……」(何で俺まで……)

 「カドローア氏……何でワシの頭上に……」


ピスケスさんは楽しそうにお上品な笑い声を立てています。しかし私は本当にこのお姉さんのけんナントカにされてしまったようです……! どうしてウリたんが巻き添えを食らっているのか知りませんが!


 「だけど私も責任感じてるんですよ~? こんな小さい子を一人で知らない土地に放り出しちゃって~」


だったら最初から呼ばなければよかったのでは……と言いたくなるのはグッとこらえました。この人は怒らせたらマズい気がします。


 「だから責任をとろうと思いまして~チギリちゃん、私と家族になりませんか?」


えっ、これはプロポーズですか? いやいや、そうではなくて! つまりこの人が新しいママ? いやいや、そうではなくて! 初対面の人にいきなりそんなこと言われても困りますよ……体よく断りましょう。


 「いいではありませんか! カドローア氏の人となりは私が保証しますぞ!」


何で王様もちょっと乗り気なんですか! せめて中立でいて下さいよ! それにいきなりご主人様自称してくる人の人となり保証されても信用できないですよ! 怖いです!


待てよ、この世界はファンタジーのくせしていちいち堅苦しい手続きが必要……そこを利用すれば!


 「あ、そうだ! 私、ほら、この世界の“こせき”持ってないので、家族になる手続きとか、あれ、できないですよ?」

 「問題ないですよ~この世界ではただお互いに家族と認めさえすればいいんです~」

 「どうして手続きいらないんですか! ここまで来たら最後まで貫いて下さいよ!」

 「えぇ……」


もうダメです……逃げられない……私は一生この人をご主人様と呼んでいかなければならないんです……


膝から崩れ落ちる私の前に丸い影が現れました。ウリたんです。


 「ぶひゅるぃ……」(嬢ちゃんが困ってんじゃねえか、その辺にしときな)

 「ウリたん……」


ウリたんは短い脚を一生懸命前後に動かしながらピスケスさんに歩み寄っていきます。私を守ってくれるのですか……?


 「ぶひぶひ、ぶっきゅるいひ」(どきな。俺達はラスターの兄貴のところに帰らせてもらう)

 「あらあら~可愛いイノシシちゃんですこと~」

 「ぶひぅぶ……ぶほ~」(何をする離しやが……おお、母なる大地よ……)


険しい顔で歩み寄ったウリたんでしたが、ピスケスさんに撫でられてとろけ切った表情をしています。即落ちじゃないですか! ウリたんのバカ!


 「どうしますか~?」

 「ぶひゅぅ……」(嬢ちゃんもこっちに来なよ……)

 「うわーん! ウリたんが裏切ったー!」


四面そ歌です。このままではピスケスさんの思い通りになってしまいます。でもそれもいいかもしれません。いざって時に家族がいた方が何かと安心です。ウリたんも気持ちよさそうだし。


 「わ、私は……」

 「うん~?」


──思い出すんだ、君の使命を!


……⁉ この声は……?


──私はハイパーエージェント


本当に誰ですか⁉ ま、まあ、とにかく、そうでした、思い出しました、私の使命を! 誰だか分かりませんがありがとうございます!


 「あなたと一緒には行けません」

 「え~どうして~?」

 「私には使命があるからです。ラッさ……ラスターさんのお嫁さんを見つけるという使命が!」

 「それ私と家族になったらできなくなることなの~?」

 「うっ!」


そういえば全く支障ない気がします! これ完全に断れる流れだったじゃないですか! やっぱり知らない人のアドバイスじゃダメでした!


 「いいのよ~? ラスターくんのお手伝い続けても~私はただあなたの帰る家になるって言いたいだけなの~」


よくよく考えればすごく魅力的な提案な気がしてきました。ピスケスさんもよく見れば悪い人じゃなさそうだし、もういいですかね……


 「ピスケェス!! テメェ何してやがんだ!!」


私が頷こうとしたまさにその時、勢いよくドアが開いてラスターさんが怒鳴りこんできました。すごく怒ってます、どうかしたんでしょうか?


 「あらあらラスターくん~どうしたんですか~?」

 「どうしたじゃねぇよ、ここで何してた⁉」

 「チギリちゃんに私の家族になってもらおうと思って~」


ラスターさんは「やっぱりか」と額を抑えました。どういうことですか?


 「ドクターからお前を王宮で見た、って聞いたから嫌な予感がしたんだよ……チギリ、絶対首を縦に振るなよ! 契約成立しちまうぞ!」

 「あ、はい……何なんですか、一体?」

 「その女は甘い言葉で少女を誘って慰み者にしてる変態なんだよ! ついていったら食われちまうぞ!」


なぐさみもの? よく意味は分かりませんが食べられるのは困ります!


 「もうちょっとだったのに~ラスターくんの意地悪~」

 「意地悪~じゃねぇよ、この変態召喚士が!」

 「人聞きが悪いですよ~色とりどりのロリメイドを愛でているだけじゃないですか~それにちゃんと同意も得ていますよ~? そうだ~ラスターくんも仲間に入れてあげましょうか~? 私どっちもイケるクチなので~」

 「入るかぁ!!」


真偽は測りかねますがピスケスさんの言葉選びが変態っぽいのは間違いないようです。危なかった……!


 「助かりました! ラッさん、ありがとうございます!」

 「……知らない奴についていっちゃダメだろ」


ごもっともです。小学校でも耳にタコができるぐらい言われてきたことです。やっぱり先生の教えは正しかったのですね……


 「国王陛下、お騒がせしました。……もう帰るわ」

 「そうか……どうだ、もう少しゆっくり……」

 「いや、いい。チギリ、ウリたん、帰るぞ」

 「あっ、はーい!」

 「ぶひゅ……」(あ、もうちょっとだけ……)


今日は怖い目に遭いました。今後はあのような変態さんにたぶらかされないように気を付けなければ!


 「それにしてもお城の中が騒がしいですね」

 「……何か起こったか」


何人かの衛兵さんが慌ただしく走っているのを見かけました。ラスターさんの言う通り何か事件でも起きたんですかね? ラスターさんが衛兵さんの一人を捕まえて事情を聞きました。


 「実は囚人が一人脱走しまして」

 「脱獄か……どんな奴だ?」

 「似顔絵があります」


そう言いながら一枚の紙を取り出してきました。あっ、この人……


 「窃盗の常習犯、シルフィー・アランドロン! 見かけたら、連絡……いえ、捕まえて下さって構いません!」


この間私の部屋に空き巣に入った人! とことんダメな人だ……


続く!

──ラスター達が去った後の王室


 「それでは私も失礼します~」


ピスケスは一礼して退出しようとする。しかし王が彼女を引き留めた。


 「お待ちなさい。あなたには聞かなければいけないことがある」

 「うふふ、あらあら~」


ピスケスの笑顔に冷や汗が垂れた。


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