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18. オシノチギリは物知りたい

前回のあらすじ!

ヴェジー村の地下に眠る巨大スライムを、独り言の勇者ラスターさんが見事に討伐しました!

────────────


 「地中にスライムね……なるほど、なるほど」


 王都に戻った私たちは、ヴェジー村での一件をシザー先生に報告しに来ました。シザー先生は話を聞きながらしきりに頷いています。


 「しかし彼らの目的は何だったんだろうね? ラスターくん、君はどう読む?」

 「……あのまま体内で成長していれば、村人の体は食い破られてただろうな」


体を⁉ 恐ろしいことです。内側から食べられるって……ただウネウネしているだけの生き物じゃなかったんですね。


 「しかし捕食が目的ならどうしてそんな回りくどいことをしたのかな」

 「そりゃあ、勘付かれないように……ん?」

 「そう、前提として、彼らは知性を持っていない」


何だか難しいお話をしているみたいですが、シザー先生は生徒に言い聞かせるように丁寧に説明してくれています。


 「ポイントは二つだ。まず裏で彼らを操っているものがいた。そして、彼もしくは彼女もしくは()()には別の目的があった……こんなところだろうね」

 「別の目的? なんだよそれは?」

 「仮説ならいくらでも立てられる。例えば、スライムを村人に擬態させて魔物が運営する村のモデルケースにする……とか」


ひぇっ……よくそんなこと考えますね……てことは、その裏にいる人を見つけないとまた同じようなことが起こるのでは?


 「一度破られた手をまた使うとは考えにくいけどね。だけどもし、スライムを潜り込ませた時点で相手の目的が達成されているとしたら……」

 「どういうことだ?」

 「これ以上は仮説というより妄想だな。この話はこの辺で打ち切ろう。調査団の方でも討議してみるよ」


思わせぶりな言い方ですね。謎は深まるばかりです!


 「そうだ、チギリちゃん、陛下が君のことを随分心配していたよ。一度顔を出してあげたらどうかな?」

 「王様がですか? でも私一人じゃお城に入れませんよ……」

 「私から話しておいたから入れてもらえるはずだよ。行っておいで」


そういうことならお言葉に甘えましょう! 人に心配をかけるのはよくないことですしね!


 「わーい! 行ってきまーす!」

 「それじゃあ俺もこの辺で……」

 「ラスターくぅん、君は少し診察受けていきなさい。また無茶したんだろ?」


ラスターさんは先生に引き留められました。私とウリたんの二人旅です。


 「……先生は獣医では?」

 「彼は獣みたいなものだから」

 「おい」


────────────


 「久しぶりに来ました……!」

 「ぶひゅぅぅぅぅぅ……」(ここが王宮……ションベンちびっちまいそうだぜ!)


 そういえばウリたんは中に入るのは初めてでしたね。荘厳な雰囲気に圧倒されてガタガタ震えています。取りあえず受付に行きましょう。


 「私魔法使いのチギリです。こっちはイノシシのウリたん」

 「ぶぃっ!」(よろしくな!)

 「伺っております~4階一番奥の部屋へどうぞ~」


フワフワした喋り方の受付のお姉さんに案内され、王様の待つ玉座へ! 4階はちょっと遠いですね……と思っていると、体が浮き上がる感触と同時に私とウリたんは玉座の間に移動していました。


 「お呼び立てして申し訳ない。元気にしておられましたか?」

 「あっ、王様!」

 「ぶひるひ?」(この爺ちゃんが? 思ったより威厳ないな)


ウリたんが何か失礼なことを言っている気がします。


 「それにしても……突然現れたが一体どのような……」

 「私にもよく分からないです! 受付のお姉さんと話してたら急に……」

 「受付? そんなものを設置した覚えはないが……」


王様は目を丸くしています。何それ怖い……おかしなこともあるものです。


 「まあ、よいでしょう。この世界には慣れましたかな?」


いいんですか? お城に不審人物入っちゃってますけど……

この世界に関してはぼちぼちって感じです。時々裏切られますけど新しいことがいっぱいでワクワクドキドキです! 時々裏切られますけど!


 「そうですか、それはよかった。ラスターのこともよろしく頼む」

 「はい! ラッさんは愛されてますねぇ」

 「と、言うと?」

 「会う人みんなが言ってくれるんです! ラスターのことよろしく、って!」


そう言うと王様は嬉しそうにニッコリ微笑みました。ラスターさんはこんなに愛されてるのに自分は誰も愛さないなんて公平性に欠けると思います!


 「事情が事情じゃ、仕方のないこと……それにラスターは立派に勇者としての務めを果たしてくれておる」

 「ふーん、そういうものですか……ま、そこは私に任せて下さいよ! ラッさんの愛を取り戻してあげますよ!」

 「ほっほっほ、頼もしいのぉ。それよりせっかくの機会じゃし、何か聞きたいことはないかね?」


聞きたいことですか……そう聞かれるとなかなか思いつきませんねぇ……


 「ぶひぶひ?」(ラスターの兄貴は大事に守ってきた宝剣を叩き折っちまったんだよな? 勇者の地位に居座ることに反対する奴もいたんじゃないのか?)


ウリたんが凄く核心をつく質問をしている気がします……! ですがウリたん、王様にはウリたんの言葉は通じませんよ……


 「そうですな……確かにそういう声もありました」

 「分かるんですか!?」

 「民の声に耳を傾けるのが為政者の役目じゃ」


だとしてもですよ……流石王様です、なんでも無理が通る。


 「ラスター自身も厳しい処分を望んでおった。しかし、まあ端的に言うと、後釜がいなかった。結局そういう理由もあって、大臣と十二神官の合議でも一人を除いて全員がラスターの続投に賛成した」


消極的な理由です。ウリたんは難しい顔で「なるほど、なるほど」と頷いています。後釜ですか……そういえば勇者って誰が決めてるんですかね?


 「500年に一度、魔王の復活が近づくと十二神官が集まって儀式を行うのじゃ。それによって、勇者となるべきものが指名される」

 「なるほど、それで勇者が決まるわけで……」

 「そしてその後対象者の自宅に書類が送付される」


またこのパターンですか。もう分かってますよーだ。


 「そして彼の者に勇者として戦う意思があらば、書類に必要事項を記入し王宮まで持参してもらう!」

 「そんな言い方しても事務作業感はぬぐえませんよ!」

 「その後、大臣と王が承認印を書類に押し、神殿に奉納する。これで正式に勇者と認められるわけじゃ」

 「最後だけ神殿なんですね……」


いいんです、この世界の手続きが事務的なのは分かってますから、いいんです……


 「どうかしましたかな……?」

 「ぶきゅるぅい」(少女は傷つくたび大人になっていくのさ……)


あれ? そういえば一人だけラスターさんが勇者でいることに反対してた人がいたって言ってましたね。それって誰なんでしょう?


 「ああ、それはのぉ……」


王様が言おうとした瞬間、玉座の間の重たいドアがごごぉーと開きました。


 「あら~すみません~お話し中でしたか~?」

 「あ、受付のお姉さん!」


入ってきたのはさっきの受付の喋り方フワフワお姉さんでした。ちゃんと実在していたじゃないですか……!


 「……彼女じゃよ」

 「え? 何がですか? ……あ!」


ラスターさんの続投に反対したという人ですか! ということは、まさかこのお姉さんが……! 目の前にいるこの女性が……!


 「彼女は受付嬢ではない……十二神官の一人・ピスケス=カドローア氏じゃ」

 「どうも~」


受付のお姉さん改めピスケスさんは微笑みながら私に手を振っています。シザー先生と言い、どうして十二神官の人は正体を隠して私の前に現れるんですか?


 「元気にしてましたか~? 私の可愛いチギリちゃん」

 「えっ」


私のってどういう意味ですか!? 続く!


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