17. 勇者は銀の龍と舞う
前回のあらすじ!
何とヴェジー村の地下には巨大なスライムが埋まっていたのです! ラッさんVS巨大スライム開幕です!
────────────
ラスターさんの天地返しにより、村の地面はラスターさんが立っている足場を除いてスライムさんで埋め尽くされています。これでは近づくことができません。
そしてその辺に打ち捨てられていたスライムさん達が巨大スライムさんと一つになっていきます……ちっこいスライムは全部あれの破片だったということですか……恐ろしいです!
「皆さん! 安全なところへ!」
「ふぎゅる!」(こっちだ!)
ボマードさんとウリたんが住民の皆さんを避難させてくれています。私はここからラスターさんの援護です! 近づけずとも魔力は届くはずです!
「何だこれは……? 何か分からんが力が湧いてくる……」
魔法でラスターさんの身体能力を強化してあげたのですが、私がやったと気づいていないようです。そういえば魔力感じないんでしたね……
「覚悟しろよ、ネバネバ野郎ォ!」
ラスターさんはスライムに啖呵を切って切りかかりました。ちなみにスライムは基本的に知性を持たないそうです。
そしてラスターさんの一閃がスライムの体をすっぱりと切り裂きました! これは大ダメージですよ!
「何!? 手応えが……」
切断面がうねうね言いながらくっついていきます。そんなことは全く意に介していないかのように、体の一部を触手状にしてラスターさんに襲い掛かります!
「なるほど、斬撃は効かないってことかよ! これは厄介だな……」
ざんげきが効かない!? 剣で触手を捌いていますが、それでは一時しのぎにしかなりません! 何かできることは……そうだ、こんな時こそ魔法の力で!
「ふぁいやー!」
火の弾を放ちますが、少し煙が出たぐらいで聞いている様子がありません。他に攻撃に使えそうな魔法は持ってないですよ……
「あの炎……チギリか……素直に逃げてりゃいいものを……」
ご心配ありがとうございます。でも切れない相手はラスターさんじゃ倒せないですよ……
「煙……焦げてる、のか……? いや、違うな……そういうことか!」
ラスターさんはブツブツと独り言をつぶやいています。ラスターさん、もしかして……
「来い、ドラゴン!」
ラスターさんが空に向かって叫ぶと、ごんちゃんの大きな影が太陽を覆いました。せっかく名前つけたのに……
しかしどうするつもりでしょうか。ごんちゃんは争いを好まないと図鑑に書いてありましたが……
「少々無茶するが……頼むぜ!」
「ガオン!」
ごんちゃんは一つ吠えると、ラスターさんの剣にガブリと噛みつきました。そしてそのままゆっくり引き抜きました……何してるんですか?
「……竜装投影」
ラスターさんがつぶやくと、ごんちゃんは再び天高く飛び、ラスターさんの体を影で覆います。すると何ということでしょう、ラスターさんの体は、ごんちゃんの鱗と同じ模様の銀色の鎧に包まれ、背中から銀色の翼が生えてきました。変身ヒーローみたいです。
「……あれは竜影術」
「ボマードさん!? 知っているのですか!?」
住民の皆さんを避難させてボマードさんが戻ってきたようです。
「剣を通じて竜の力を身にまとう秘術……術者は人の体でありながら、ドラゴンの力をその身に宿すことができる……ラスター殿含め世界で二人しか使えない究極の剣技です!」
「おお……凄そう……!」
そんな隠し玉を持っていたとは! これならいけそうな気がしますよ! ……いけるんですか?
ラスターさんは少し体を浮かせた後、体をひねりながらスライムの中に突っ込んでいきました。ちょっと何やってるんですか!?
「ラッさん、食べられちゃいますよ!」
「きっと何か考えがあるはずです。見守りましょう」
剣を前に突き出してさながらドリルのようにスライムの体内を縦横無尽に掘り進んでいますが、あんなことをしても効かないのでは……
「さっきのチギリの攻撃を見て気付いたよ、あの煙はお前の体が蒸発した物。つまりお前の体は液体に近い性質を持っている……」
スライムの体内にいるので聞き取りづらいですが何か言ってます。ラスターさん……やっぱり……
「ボマードさん……」
「ええ、やはりラスター殿はスライムを“斬って”いません」
そうなんですか? 私全然気づきませんでした。
「物体が触れ合うと摩擦が生まれる……そしてそのエネルギーが大きくなるほど……発生する熱も多くなる……!」
ラスターさんはスライムの体内を掘り進めます。スライムが心なしか、少し小さくなっているような?
「俺がお前の体内を高速で掘り進めば……俺とお前の、剣とお前の摩擦で大量の熱が発生する! そしてその熱が、お前の体を融かすのさ!」
やっぱり思った通りです! ボマードさんを見上げると、大きくうなずきました。
「ラッさん戦闘中の独り言が多いです!」
「……お気づきになりましたか」
「そろそろ昇天してもらうぜぇ!!」
そして独り言の多いラスターさんはスライム体内から飛び出してきました。スライムの全身から白い煙が噴き出ています。
「THEエンドだ」
ラスターさんが剣を鞘に納めるのとほぼ同時に、巨大スライムは完全に蒸発して昇天しました。いやぁ、独り言が多かった。
「ラッさん、やりましたね!」
「何だそんなところにいたのか」
これにて一件落着ですね! これで村の人たちも安心してお野菜を育てられますよ。
「ぶっひるん」(終わったみたいだから村人連れ帰ってきたぜ)
「ウリたん、ナイスタイミングですよ! よーしよしよし……」
しかし村長さんは、村の様子を見て膝から崩れ落ちました。
「ああ……私の村が……」
あ、地面に大穴開いちゃってましたね……その後は村の穴を埋め立てる作業で大変でした。ですがこれで本当に一件落着です!
「あ、そうだ。ラッさん、あんまり動きながら喋ると舌噛みますよ」
「……? 何の話だ?」
まさかの無意識! 続く!
リュウソウ……トウエイ……?




